上 下
90 / 115

学園で公爵令嬢に絡まれました

しおりを挟む
「エイミー、私がこんな立派な馬車に乗るなんておかしいと思うのだけど」
学園に向けて動き出した超豪華な馬車の中で私がエイミーに言うと

「何をおっしゃるのです。アオイ様は聖女として陛下が認められたのです。この馬車をアオイ様が使われるのは当然です」
エイミーは全く動じずに言ってくれた。

「でも、近衛の方が、それも副騎士団長が私の護衛について頂けるなんておかしくない?」
「今まで護衛が付かなかった方がおかしかったのです。もともとアオイ様の癒し魔術は素晴らしいものがありました。どう見ても聖女だったのです。アリストンの奴らに誘拐されそうにって、陛下も慌てられたのだと思います」
「でも、どう考えても皇女殿下よりも厚遇されているんだけど……」
絶対にまた皇女殿下に嫌味言われるのは確定だ。私は頭が痛くなってきたんだけど……

「何を言っておられるのですか。アオイ様は聖女だと皇帝陛下が認定されたのです。聖女様は元々皇帝陛下と同格なのです。それから考えると護衛の数が少ないくらいです」
「えっ?」
私はエイミーの言葉にギョッとしてしまった。
皇帝陛下と同格って……それって絶対におかしいと思うんだけど……
それに私は聖女じゃないと思うんだけど。私は聖女じゃないってアリストン王国を追い出されたのに……

どうしよう。私が聖女じゃないって判って追い出されたら?

私がだんだん不安になってきた。

「大丈夫ですよ。あれだけすごい癒し魔術の担い手のアオイ様が聖女じゃないなんてあり得ませんから。それにアオイ様をアリストンの奴らが誘拐しようとしたことからして、アオイ様が聖女様なのは確実です。今、アリストンにいる性悪女が偽聖女だと今頃気付いたに違いありません」
エイミーは自信を持って言ってくれるんだけど……私は全然自信がなかった。まあ、凛が性悪女だというのは認めるけれど……

そうこうするうちに馬車は学園の馬車のたまり場についたのだが、なんと馬車は一等地の皇族方が使われる場所に止まったんだけど……

「すごい。あれは近衛の副騎士団長のラッセル様よ」
「誰を護衛してこられたのかしら」
皆の声が聞こえる。皆の注目が集まった。

この注目の中を降りろって言うの?
私はかちんこちんに固まったんだけど。

皇女殿下や皇子殿下の取り巻きたちが慌てて駆けてくる。
いや、ちょっと、降りるの私なんだけど……
罵倒される未来しか見えない中、ラッセル様が扉をあけられたんだけど……

「さっ、アオイ様」
私は差し出された手を取るしかなかった。

「「「えっ」」」
みんな絶句していた。

「嘘!」
「なんであの地味女が、ラッセル様のエスコートで降りてくるの?」
ざわざわ外野が煩い中、私は学園の入り口までラッセル様と近衛騎士たちに囲まれて歩いたのだ。

「ではアオイ様。また、学園が終わる頃にお迎えにあがりますのでよろしくお願いします」
「いえ、あの、副騎士団長にエスコートされるのは畏れ多いんですけど」
「私がだめですと、殿下か近衛騎士団長がエスコートすることになりますが」
「えっ、いや、それはもっとダメですよね」
私は慌てた。殿下って、クリフならやりかねない。そんな事されたらまたアマンダに絡まれるの確実だ。近衛騎士団長はまだお会いしたことは無いが、皇后様とラッセル様の御父上だ。そんな人には絶対に私の護衛などさせられない。
私は引きつった笑いを浮かべるしかなかった。

「アオイ」
そこにポーラらが迎えに来てくれた。

「ポーラ」
私はほっとした。

「ではよろしくお願いします」
ラッセル様はポーラに軽く頭を下げて帰って行かれた。

「凄いじゃない。アオイ。近衛副騎士団長に護衛されてくるなんて」
「もう、何か良く判らなくて」
ポーラの言葉に私が言うと、

「まあ、聖女様に認定されるんだから仕方がないんじゃない」
ポーラが当然のごとく言ってくれるんだけど……私は聖女じゃないと思うんだけど。

「いや、おじいさまの古傷まで治せたんだから絶対にあなたは聖女様よ」
ポーラが断定してくれたんだけど、私には全然自信がなかった。

私は皆の好奇の視線を浴びながら教室に向かったのだ。

クラスでは好奇の視線を浴びせてくる貴族の子弟連中はいたが、他は皆、普通通りに接してくれた。
まあ私の周りに、エイブとボビーという騎士志望の巨体がいるので、何も言えないというのもあったかもしれないが。
でも、それで終わるはずは無かったのだ。



休み時間だ。

「お前が、アオイか」
たしかウィンスロー伯爵令息だったと思われた男がいきなり現れたのだ。
それもこいつ、あろう事かポーラに話しかけているんだけど。

「違うわよ」
あっさりとポーラは否定したのだ。
「誰がアオイが知りもしないで声かけてくるなんて馬鹿なの?」
そのうえ、馬鹿にし始めたんだけど。

「な、何だと、無礼者」
伯爵令息は息まいたが、
「何かいう事があるのか」
その横からエイブが現れると

「やはい、これはバレーの蛮族」
何かとても指令な事を言ってくれるんだけど。

「何か言ったか?」
ギロリとエイブが睨みつけめると、

「ウィンスロー様。アオイはその後ろの黒髪ですよ」
言わなくてもいいのに、クラスの男爵令息が教えてくれた。

「ああ? とても貧相な女だな」
ウィンスロー伯爵令息はエイブを無視して私を見た。
こいつ、燃やしても良い? 私はとてもムカついた。 爆裂魔術が使えたら絶対にそのまま燃やしていた。

「喜べ、女、このウィンスロー伯爵令息様が貧相な貴様を婚約者にしてやろうとわざわざ足を運んでここまできてやっ」
この言葉前にも聞いたことがあるような……私が怒りのあまり殴りつけようとした時だ。

「どきなさい。邪魔よ」
そこへ後ろからいきなりまた、アマンダが現れたのだ。その後ろには取り巻き令嬢たちを10名くらい引き連れていた。

私の前にいた伯爵令息はアマンダに弾き飛ばされて地面に激突していた。

「ちょっと、アオイ、どういう事なの! 私のクリフ様をあなたが誘って休みの間旅に出ていたって本当なの?」
また、ややこしい奴が来た。私はうんざりしたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[R18] 引きこもり令嬢が先生になりました。

あみにあ
恋愛
外出するのも、貴族の付き合いも苦手。 でも魔道具の研究は大好きなんだ。 だから屋敷出ず、引きこもる毎日。 母の小言はうるさいけれど、何度も聞いていれば慣れてくる。 だけどそんな私を見かねて、ある日友人に無理矢理に連れていかれた夜会。 明け方に目覚めると、私の隣には知らない男が寝息を立てていた。 なぜだかわからない、夜会での記憶はとても曖昧で……。 動揺し慌てふためく中、私はその場から逃げ出した。 王の婚約者である姉に縋り付き、抱かれた事実を両親にばれぬよう画策してもらうと、私はまた部屋へ引きこもったんだ。 トラブルにも巻き込まれることなく穏やかに過ごしていたある日、引きこもる私にしびれを切らした母から、ある選択を迫られた。 「教師になるか婚約者を作るか、選びなさい」 そして教師を選んだ彼女は家を出て働く事になった。 でもその学園は男子学園で……。 引きこもりな令嬢が恋に抗い奮闘するお話です。 表紙イラスト:玉子様(@tamagokikaku(Twitter)》 (玉子様に表紙を描いて頂きました、美しいイラストをありがとうございます!) ※107話で完結。 ※共通のお話から、複数のルートに分かれます。 ※無理矢理な性的描写がございますので、苦手な方はご注意下さい。 ※R18にはタイトルへ※印を付けております。

滅国の麗人に愛の花を~二人の王子の物語

藤雪花(ふじゆきはな)
BL
~強国の若き王子がその国を滅ぼすことを決意したのは、お忍びで出会って恋した美しい奴隷の娘のため。 だが、その奴隷の娘は滅ぼそうと決意したその国の王子の仮の姿だった~ ラブラド国王子のラズは、同じくお忍びで偵察に来ていた強国ボリビア国の第一王子シディとお祭りで出会い、お互い誰かわからないまま、恋をする。 ラズには、愛するものに欲望を感じると、体に花の紋様が浮き出るという、伝説のラブラド王家の血族である。 ラズの美しくも妖しく咲かせる体の花を見ることができるのは、愛する人だけ。 お忍びで、奴隷に扮するラズが身に付けた『奴隷の印』を見て、シディは、ラブラド国を征服し、奴隷を解放することを決意するのであった。 ★第1部 二人の王子編 ★第2部 海賊編 ★第3部 帝国の冬編 物語上、シディ×ラズ以外もあります。 割りと、総受けというもののようです。 ※2019.8.9にタイトルを『滅国の奴隷に愛の花を』から変更しました。 ※2019.10.24に校正済み☆完結しました。 ※9話で第2部完結後、引き続き番外編を投稿。 ※2019.11.6 第3部 連載開始しました。 重要 完結後随分立ちますのでエブリスタにて2部の途中から有料公開といたしました。 そちらでどうぞよろしくお願いいたします。 ■表紙は以下で作りました。EuphälleButterfly @Art_euphalle14 さま ありがとうございます!!! 大感謝です。 Euphälmäuge[少年の館] 

【完結】2愛されない伯爵令嬢が、愛される公爵令嬢へ

華蓮
恋愛
ルーセント伯爵家のシャーロットは、幼い頃に母に先立たれ、すぐに再婚した義母に嫌われ、父にも冷たくされ、義妹に全てのものを奪われていく、、、 R18は、後半になります!! ☆私が初めて書いた作品です。

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】 https://ncode.syosetu.com/n1741iq/ https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199 【小説家になろうで先行公開中】 https://ncode.syosetu.com/n0091ip/ 働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。 地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

【完結】しゃにむに社畜をしていたら、王の虜囚になりました。

北川晶
BL
傲慢砂漠王×健気社畜。天野蓮月は日本の総合商社に勤めるトライリンガル。会社の社運をかけた取引の場に呼ばれ。中東の国シマームの王、ラダウィと対面する。実はラダウィと面識があった蓮月だが。彼は蓮月を、双子の弟の華月と間違えて、親密に接してくる。会社の取引を円満に終えるまで、弟ではないと訂正できない蓮月。だがラダウィはおまえを伴侶にすると言う。会社のために嘘をつき、偽りの愛を囁かれ、蓮月は苦しむが。ラダウィが初恋であった蓮月は。嘘をついた己を彼が裁くまでは、一緒にいたいと願ってしまって…。 現代BL。前半の三分の一は子供時代。後半は社畜しながら大人エロです。ラブシーンに★つけます。

義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!

ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。 貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。 実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。 嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。 そして告げられたのは。 「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」 理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。 …はずだったが。 「やった!自由だ!」 夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。 これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが… これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。 生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。 縁を切ったはずが… 「生活費を負担してちょうだい」 「可愛い妹の為でしょ?」 手のひらを返すのだった。

転生したらオメガだったんだけど!?

灰路 ゆうひ
BL
異世界転生って、ちょっとあこがれるよね~、なんて思ってたら、俺、転生しちゃったみたい。 しかも、小学校のころの自分に若返っただけかな~って思ってたら、オメガやベータやアルファっていう性別がある世界に転生したらしく、しかも俺は、オメガっていう希少種の性別に生まれたみたいで、は?俺がママになれるってどういうこと?しかも、親友の雅孝をはじめ、俺を見る目がなんだか妙な感じなんですけど。どうなってるの? ※本作はオメガバースの設定をお借りして制作しております。一部独自の解釈やアレンジが入ってしまう可能性があります。ご自衛下さいませ。

処理中です...