上 下
40 / 115

伯爵皇子にはびくともしませんでしたが、そこに皇太后さまが現れて子爵に降爵してくれました

しおりを挟む
「何を仰るのです。殿下。もともと、その女が私の娘に雷撃を浴びせたのでしょうが」
しかし、伯爵はその怒り狂っているクリフに反論したのだ。

あれ?
普通は皇子様が出てきたら慌てて頭を下げるところではないの?
私にはよく判らなかった。

それに周りの近衛騎士達も全然助けようともしていない。普通は近衛は皇子を守るんじゃないの?

「何を言う。先程アオイも言ったように、あの筆入れの防御魔術は余程きつく踏みつけない限り発動しないようになっていたんだぞ。お前の娘はその筆入れを壊そうと踏みつけたのだ。何処の伯爵家の令嬢が文房具を踏むように教育されているのか」
「な、なんですと」
伯爵はまた怒り狂って立ち上がったのだ。

「ふんっ、おっしゃりたいのはそれだけですかな、殿下」
薄ら笑いをして伯爵が言った。

「殿下がどこの馬の骨とも知らぬ娘を寵愛していると聞いたものですから来てみれば大層貧相な女ですな。それに礼儀もなっていない。笑えますな。
それに比べて第2王子殿下のウイルフレッド殿下の婚約者は見目麗しいポウナル公爵令嬢ですぞ。殿下もそんな貧相な娘の相手などしておらず、さっさと婚約者を策定されませんと、皇太子レースに更に差がつけられますぞ」
笑って伯爵が言ってくれた。周りの騎士たちもニヤリと笑っている。

そうかこいつはクリフの敵の第二王子派なのか。そして、周りにいる騎士たちもそうなんだろう。
でも、私はクリフの寵愛なんて受けていない! と私は叫ぼうとした時だ。

「アオイ、いつまで遊んでいるんだい。お茶が覚めてしまうじゃないか」
そこへ、近衛に守られて皇太后様が現れたのだ。

「お祖母様!」
驚いてクリフが言った。

「こ、皇太后様」
今度は慌てて伯爵や騎士たちが頭を下げた。
しかし、皇太后様はそれを全く無視して私の方へ歩いてきたのだ。

「大丈夫かい、アオイ、学園で何処かの伯爵の娘に襲われたんだって」
「えっ、いえ、そのような事は」
私は否定しようとした。

「良いんだよ。庇わなくても。私はちゃんと報告を受けているからね。今もその父親に襲われそうになったというのに近衛達は全く守りもしなかったね」
「いえ、あの、皇太后様」
伯爵と近衛騎士の隊長みたいなのが青くなって慌てて言い訳しようとしたが、皇太后様は全く無視した。

「ラッセル、どういう事なの?」
皇太后様の後にいた副騎士団長のラッセルに皇太后様は聞かれたのだ。

「も、申し訳ありません。直ちに責任者を呼んで……」
「ふん、役立たずは必要ないよ。首にしな」

「えっ」
ギョッとした伯爵と近衛たちを残して皇太后様は私を連れて奥に入っていかれたのだ。

この後実際に私を庇いもしなかった近衛騎士達は国境の警備舞台に配置転換、私に襲いかかろうとした伯爵は子爵に降爵されたのだ。

その一時で綱紀が一新されて、宮殿内は改めて誰が一番偉いか理解するとともに、その皇太后様に私が可愛がられているという噂があっという間に広まっていくのだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件

バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。 そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。 志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。 そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。 「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」 「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」 「お…重い……」 「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」 「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」 過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。 二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。 全31話

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?

あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」 結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。 それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。 不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました) ※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。 ※小説家になろうにも掲載しております

処理中です...