上 下
18 / 115

領主の前に連れて行かれて襲いかかられそうになった時に皇子様が助けてくれました

しおりを挟む
「えっ、なんで」
私は手錠をかけられた意味が判らなかった。

「ちょっと、あんた、なにをするんだい! この子は私達の病を治してくれたんだよ。それを手錠をかけるってどういうことだい」
おかみさんが怒ってくれた。

「煩い。領主様の命令だ。お前らも逆らうと連行するぞ」
兵士達がおかみさんたちを睨みつける。

「ちょっとなにするんだよ。姉ちゃんは俺達を助けてくれたんだぞ。領主様なんて何もしてくれなかったじゃないか」
ベンが私のために叫んでくれた。

「だまれ、小僧。これ以上言うと貴様も引っ立てるぞ」
兵士がベンを睨みつけて刀に手をかけた。

「ベン、大丈夫だから。すぐに帰ってこれるから」
私は慌ててベンに言った。

「ね、姉ちゃん」
ベンが私に向かってこようとしてお母さんに止められていた。
私は兵士達に引っ立てられて馬車に乗せられたのだ。


「ふんっ、村民に何とかうまく取り入ったみたいだが、残念だったな。疫病を広めて治せば中に入り込めると思ったのか」
「私は広めていないわ」
私がムッとして言うと

「嘘をつけ。貴様が広めたから治せるんだろう。そうでなかったら、治せるわけはなかろう。そんなことが出来るのはアリストン王国にいる聖女様くらいだ。貴様が出来るわけはなかろう」
「何を言っているのよ。そんな事を言っている暇があったら私を開放して皆の治療に当たらせなさいよ。でないと手遅れになるわよ」
私は精一杯忠告してあげたのだ。
「ふんっ、しらを切っていられるのは今のうちだぞ。領主様の前に出たら容赦はないからな」
「領主様の前で拷問にかけられて泣き叫ぶ前に、さっさと治す方法を吐いた方が良いぞ」
男は無遠慮な視線で私を睨めつけてくれたのだ。

私はその視線に怖気を感じた。
モンターギュ帝国はこんな奴らしかいないのか?
辺境伯のところでも拷問にかけられそうになったし、なんかもういい加減にうんざりしてきた。

それに私はとても理不尽に感じていた。
せっかく村人を助けていたのに、なぜ領主が邪魔する。男爵様か何か知らないが、それがどうしたのだ。私も召喚された異世界人なのだ。普通は偉いはずだ。本当か嘘か走らないけれど。

こんなんだったら攻撃魔術のやり方をクリフに聞いておくんだった。
即座に攻撃ししてやったのに!

クリフが近くにいるんだから助けに来てくれることは……ない。だってこの村は隔離されているのだから。皇子であるクリフがベン等と話せることはないのだ。

どうしよう? ヒールが攻撃に使えたら使うのに……

私の考えがまとまらないうちに領主の別荘についた。
ここは川沿いの保養地として領主が使っているらしい。
別荘と言っても結構立派な建物だった。帝国の男爵と言っても結構裕福らしい。

別荘の中の装飾も結構立派だった。

そして、謁見の間に私は手錠を付けられたまま引きずり出されたのだ。

「この女が疫病を流行らせた魔女か」
私の前にでっぷりとした領主が現れて聞いてきた。
なんでこうもぶくぶく太っているのか。
住民の生き血を吸っているのではないかと言うほど男爵は太っていた。

「本人は違うと申しておりますが」
私を連行した兵士が意地悪い視線で私を見た。

「ふんっ、よく見れば可愛い容姿をしておるではないか。どうやって疫病を流行らせたか今すぐ吐けば許してやらぬこともないが」
男爵は厭らしそうな目で私を頭の先から足元まで見てくれたのだ。

「私はやっていないわ」
私は豚に言ってやったのだ。
「善意で村人を治してあげていたのに、いきなり捕まえるなんてあなたの領地はどうなっているの?」
私は面と向かって男爵に喧嘩を売ってやったのだ。というか、元々喧嘩を吹っ掛けてきたのはこいつらだ。

「何だと、人が優しくすればつけあがりおって」
男爵は立ち上がると私に向かってきた。

私は思わず逃げようとしたが、手錠を嵌められてその先に縄が結ばれていてその縄を兵士が掴んでいたので、逃げられなかった。

男爵が脂ぎった手で私を掴もうとしたのだ。

「いやああああ!」
私の叫び声とともに、

守りの首輪が光ったのだ。

そして、その光で男爵と兵士を弾き飛ばしてくれていたのだ。
男爵は5メートルくらい吹っ飛んで地面に叩きつけられていた。

手錠も一瞬で外れていた。

「き、貴様、そのような魔道具でこの男爵様に逆らうのか」
男爵はいきり立っていた。

「ええい、この女を捕まえよ。殺さなければ多少は傷付けても構わん」
兵士達が一斉に飛びかかってこようとした。

私は絶対絶命だったのだ。

私に向かって兵士達が抜剣した。

嘘! 剣で斬り付けてくるの? 

私は唖然とした。

兵士が私に向かって、斬りかかってきたのだ。

私はやられたと観念したのだ。

その私の前に人影が現れてその男を弾き飛ばしてくれたのだ。

「クリフ!」
そこにはいるはずのないクリフが立っていたのだ。
****************************************************
ここまで読んで頂いて有難うございます。
クリフが現れた理由は明朝です。

さて、【つぎラノ2023】にもノミネートされた私の初書籍
『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://tosshiii.wixsite.com/6furusato/%E6%9B%B8%E7%B1%8D

下にリンク貼っています

全国の書店様、ネット書店様で絶賛発売中です。読んで頂けたら嬉しいです!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件

バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。 そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。 志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。 そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。 「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」 「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」 「お…重い……」 「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」 「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」 過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。 二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。 全31話

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?

あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」 結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。 それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。 不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました) ※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。 ※小説家になろうにも掲載しております

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

処理中です...