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王宮に聖女として召喚されたのに、親友に裏切られて放り出されました

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幾多の物語の中からこのお話を選んでいただいてありがとうございます!
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私は千早葵、16歳、本来なら花の? 女子高生だ! 本来なら……
でも、今は病院のベッドの上にいる。

そして、その私は今、病院の窓から衝撃のシーンを見てしまったのだ。
私はショックのあまり、固まってしまった。

私が密かに思っていた、蓮君が私の親友の凛とキスしていたのだ。

そ、そんな……

私と凛は家が隣どおしで幼馴染みだった。私は病弱で、外でほとんど遊べなかったけれど、そんな私によく付き合ってくれた親友だった。
蓮君は中学一年の時のクラスメートで、クラスの人気者だった。病弱な私にもよく気を使ってくれた存在だった。内気な私がほのかな恋に落ちるのに時間はかからなかった。病弱な私になんかチャンスは全然無いと判っていたけれど、密かに私は想っていたのだ。その私の想いも凛には話していたし、凛は応援すると言ってくれていたのに……

なのに、なのに……
私は凛の裏切りにとてもショックを受けたのだった。


「どうしたの? 葵、暗い顔して」
翌日病室に顔を出してくれた凛は白々しく聞いてくれた。
よくも言ってくれた。
私はムッとして、
「あなた、私を裏切って蓮君と付き合っていたの?」
睨みつけてやったのだ。

「はああああ! 裏切ったですって。あなたいつから蓮君の彼氏になったの?」
「……」
なんと、凛は開き直ってくれたのだ。そう言われれば、私は何も反論できなかった。

「どうしたのよ。葵、何か言いなさいよ」
凛は私を睨み返してきたのだ。

「あなた、そもそもうざいのよ。子供の頃から病弱だからって、皆に大切にされて。
何様のつもりなの? 
私は両親から、
『葵ちゃんは病気がちだから、できるだげ、面倒を見るのよ!』
って言われていたから、無理してあんたの面倒を見てきたけれど、もう限界よ。
何で、毎日毎日こんな陰気な病院にお見舞いに来てあげなきゃいけないのよ! 彼氏まであんたのために世話しなければならないというの? 
私が好きになったんだから、私が蓮君の彼女になっても何も問題ないでしょ! もう、あんたの面倒を見るのもうんざりなのよ!」
凛は叫んでくれた。そうか、凛はそんな風に考えていたんだ。
私は凛の言葉にショックを受けていた。

でも、でも、もう一年も生きられないかもしれない私の前で、その憧れの彼氏を取る必要はないんじゃないの……

私の瞳からは涙が溢れ出した。

もう、良い。もうこんな世界にはいたくない!

私が切実に願った時だ。

「その願い、確かに叶えよう」
そう、声がして私は金色の光にいきなり包まれたのだ。

「えっ?」
何、何どうしたの?

そう、思った時に私は地面に空いた穴に落ちたのだった。

どこまでもどこまでも……

その時に凛の悲鳴も聞こえたような気がしたけれど、良く判らなかった。






私がはっと気づいた時だ。

私は冷たい床に倒れていた。
石畳の大きな部屋だった。

蝋燭の光で照らされていたが、周りにいる人々は黒ずくめだった。

何だこれは? カルト集団かなにかなのか?


「あなたが聖女様ですか?」
誰かが話しているのが聞こえた。でも、それは私に向けられたものではなかった。
聖女? 聖女って何だ? 私がたまに読むラノベには出てきた気がするけれど……

そちらに目を開けて見ると、そこには凛が男たちに囲まれていた。

「私は向田凛と言います。あなた方ですか? 私をこの世界に呼んだのは」
凛が男たちに聞いていた。この世界ってどういうこと? 私達のいた世界と違うってこと?
私の頭は追い付かなかった。

「はっ、私はシリル・キンロスと申します。この地の神官をしております。聖女様」
男が凛に頭を下げていた。

「ううっ」
私は頭を振ってなんとか起き上がった。

「この者は何者ですか?」
そのシリルが凛に私の事を聞いていた。

私は未だに何が起こったのか良く判っていなかった。

でも、周りを見る限り日本ではない事が判った。皆の髪の毛の色がまちまちだし、服装は昔の中世ヨーロツパ風だ。部屋は石造りの部屋で壁も石で出来ていた。壁に置かれた多くの蝋燭の光で照らされているが、それだけでは明るさが足りずに暗かった。

「さあ、知らないわ。聖女の私に引き寄せられれてついてきたんじゃなくて。こんな貧相な女は知り合いでも何でもないわよ」
「凛、何を言うのよ!」
私は凛の言葉が信じられなかった。確かに今まで喧嘩していた。でも、今それを言うのか? このどこかわからない場所で。

「聖女召喚の儀で、この世界に二人がいらっしゃることはめったに無いことです。でも、過去、そのような事例がございました。その時はどちらが聖女様かで結構揉めたそうです」
シリルが淡々と話してくれた。

「でも、この女は身なりも貧相だし、顔は青白く痩せている。聖女様のお仕事には到底耐えられなさそうだぜ」
その隣の男が私を見て言ってくれた。当たり前だ。私は凛と違って病人なのだ。着ているものもパジャマだし、病人だから顔も青白いだろう。

「そうよ。この女はどう見ても病人じゃない」
凛まで笠に着て言ってくれるんだけど。当然じゃない。私は病人なんだから。

「ちょっと、凛、それは、ひどいわ、ゴホンッゴホンッ」
私は急な環境の変化に体が対応していなくて咳き込んでしまったのだ。

「大変よ。この女、伝染る病かもしれないわ」
凛が悲鳴をあげてくれた。

「それはまずいのでは」
「すぐに、放り出すべきだぜ」
「衛兵! すぐにこの女を放り出すのだ」

咳き込んでいる私は、兵士たちに掴み上げられたのだ。

「ちょっと、凛!」
私は必死に凛を見た。
「さっさと連れて行って!」
でも凛はそんな私を汚いものを見るように見下してくれたのだ。

「いや、ちょっと」
私は兵士達に連れてそのまま、連れ出されたのだ。私は暴れて抵抗しようとしたけれど、全く効かなかった。そのまま引きずられたのだ。
いや、ちょっと待って私本当に病人だから、放り出されたら生きていけないから。
でも、私は恐怖のあまり兵士達に叫ぶことも出来なかったのだ。

そして、建物の外に放り出されてしまったのだ……

「ギャっ」
私は地面に叩きつけられた。

そ、そんな馬鹿な。凛にこんな目に合わせられるなんて……

私は信じられなかった。

何もわからない世界で外に放り出されたら、病弱な私は死ぬしかないじゃない……

外は雨が振っていたのだ。

私は何とか立ち上ったけれど、もうフラフラだった。

私を放り出した後ろの門は冷酷にも閉じられていた。

私はどこか雨宿りできるところはないかと歩き出したのだ。
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