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元婚約者の言葉に私は完全に切れました

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淫乱聖女が何しにここにやってきたの?

それも女たらし王太子と一緒だし。

それでなくてもあの淫乱黒い十字架の件でプッツン切れているのに。闇魔道具も使った人間が淫乱だと魔道具までもが淫乱になるらしい。裸の女に成り変わるなど。そう言えば、その姿も淫乱聖女に似ていたような気がする。

もう、やるならやってやろうじゃない!

さぞかし、今日もめかし込んで来るんだろう。こちらは、魔物討伐でほとんど着の身着のままだ。そう思って私は淫乱聖女を待ち構えたのだけど・・・・



「あんた、誰?」
私は最初それが誰か、判らなかった。

元は立派だったのではないかと想われるすす汚れた衣装、何日も風呂に入っていないのか体中真っ黒にして、なんか今にも異臭が漂ってきそうな、格好をした女がいた。目にも隈を作っていて、髪の色も黒ずんでいてボサボサなんだけど。

「何言っているのよ。私よ。私! 偉大なる聖女アデラ・ヘセイ様よ!」
胸を張って言う割に、なんかめちゃくちゃくたびれて見えるんだけど。

そこには王宮で一世を風靡してた淫乱聖女の姿はどこにもなかった。男どもに乱暴の限りを尽くされた娼婦のなれの果てみたいな感じだった。

「えっ、あなたがアデラなの?」
びっくりして私は女を二度見した。確かに髪の色はピンクらしいが、ボサボサの頭だし、体中真っ黒だし、服は返り血なんだろうか、ところどころシミになっている。

「どう見てもそうでしょ」
淫乱聖女はムツとしてこちらに言い返してきた。

まあ、私も討伐には疲れたし、風呂にも入っていないけど、衣装は毎日洗濯できているのよね。侍女はいないけど、衛生班がいて、ちゃーーーんと面倒を見てくれているのだ。

それに比べて、ここに来た、ロンドの連中は本当に疲れ切っていた。服装こそ、まだまともだが、女たらし王太子のエイベルも目に隈を作っているし、他の面々は傷だらけだ。魔物討伐に相当手間取ったらしい。


本来ならば一国の王太子を迎えるのだから歓待もしなければいけないのかもしれないが、ここはダンジョンの傍だし、今は討伐中で椅子もお茶もない。


車座に座ると
「で、何の用なのだ?」
ハロルドが切り出してくれた。

「あーら、これはいつの間にかベルファスト王国の王太子殿下になられたハロルド様ではありませんか」
淫乱聖女の嫌味が炸裂した。まあ、こいつはこれでなくては。

「ハロルド、あなたが王子だったとは知らなかった。言ってくれればよかったのに」
その横のエイベルも驚いて言っていた。

「今は王太子殿下であられます」
横からエイブさんが言った。

「あなたは?」
「これは失礼致しました。エイベル王太子殿下。辺境伯を拝命しているエイブラハム・バーミンガムです」

「これは失礼した。スノードニアの大軍を殲滅されたバーミンガム公でしたか」
慌てて女たらし王太子が謝った。そうよ、隣国の辺境伯くらい覚えていなさいよ。私は自分のことを棚に上げて思った。

「殲滅したのはここにおられる王太子殿下でいらっしゃいますが」
「そうなのか。さすが氷の騎士と呼ばれた男なのだな」
なんか、女たらしは変な所に感心しているが。氷の騎士って、それはハロルドが女に塩対応だったからで、強さには何の関係もないよね。そもそも、殲滅したのは私と龍だし・・・・。
私が白い目で二人を見ると

「まあ、そのようなことはどうでも良い」
ハロルドは気まずくなったのか話題を変えた。

「こちらは魔物の残党掃討火残っている。手短に要件を言ってもらおう」

そうよ。そうよ。忙しいのよ。あんたは女の裸を見ているのに忙しいのかもしれないけれど。
私はハロルドにジト目をくれてやった。
ハロルドが思わず怯んだ。

ふんっ、許してなんかやらないんだから。
私は怒っていた。
この淫乱聖女らが、消えたらどうしてくれよう。私はもう次のことを考え出していた。そう、私は完全に他人事だった。次の女たらしの言葉を聞くまでは。

「我が国を出て行った、キャサリンが貴国で偽聖女を装い、闇魔道具を使って魔物を召喚して、我が国を襲わせたという噂があってだな。その確認に来たのだ」

この女たらし王太子は何を言ってくれるのだ。そもそも淫乱黒い十字架を突き刺したのはそちらの淫乱聖女だろうが。

私は完全にプッツンキレた。

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