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王女の侍女は赤い死神の攻撃を見て絶対に逆らわないようにしようと心に誓いました

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「失礼します」
そこにインダルの騎士が走り込んできた。

「どうしたの」
リーナ様が聞く。

「マエッセンの大軍が国境を超えてこの地になだれ込んできました」
兵士の声は恐怖に震えていた。

「国境の守備兵は」
「マエッセンに寝返ったそうです」
リーナ様の声に兵士が悲壮感をもって答えた。

「よしっ、やっと出番だ」
しかし、この状況にジャンヌが喜んで言う。

「クリス様。お助けいただけますか」
リーナがクリスに頭を下げた。

「敵の軍勢の数は判りますか」
「1万以上入るかと」
兵士は呆然としていった。

「たった1万か」
何故かアレク様が気落ちしていった。

なんで1万って大軍でしょう。私がおかしいのかしら。

「アレク様。我が方の配置は」
「トリポリ軍3000を郊外に配置しております。リーナ王女。インダル軍は」
「なんとか揃えて1000名です」
「まあ、それだけいれば十分でしょう。戦場に参りましょう。リーナ王女直ちに指示を。終わり次第、ウィル、リーナ王女を伴って戦場に転移を」
「判りました」
直ちにリーナ様がルドラを引き連れて外に出ていく。

一同はクリス様の指示で郊外に転移する。
着替えた私も連れてきてもらった。

砂丘の上から下を見ると大軍に動揺したトリポリ軍が見えた。

「これはこれはクリスティーナ様」
トリポリ王はホッとしてクリスを迎えた。

「トリポリ国王。これくらいの軍勢に動揺するとはまだまだだな」
アレクが呆れて言う。

「我々は凡人でございますから。アレクサンドル様と一緒にされても困ります」
トリポリ国王がブツブツ言う。

「何か申したか」
「いえ、何でもございません」
慌ててトリポリ国王は平伏した。これは何回見てもシュールだ。トリポリ国王は余程アレク様が怖いらしい。

「敵、接近します」
トリポリの兵士が必死に叫んだ。

「ふんっ、小癪な」
アレクが手を一閃させた。

ズカーン

凄まじい爆発音がする。

爆裂魔術がマエッセンの先鋒を一瞬で炎に変えた。

私は赤い死神の巨大な力を初めてこの目で見た。

そこには焼け野原になっており、マエッセン軍の先鋒が消滅していた。

敵が驚いて止まる。


その前に、巨大なアレクの拡大画像が現れた。

「マエッセンの犯罪者共に次ぐ。私はボフミエ魔導国外務卿アレクサンドル・ボロゾドフである。我が筆頭魔導師様に楯突くとは笑止千万。ここに貴様らを殲滅しよう」

えっ、いきなり殲滅発言。私はびっくりした。
さすが赤い死神、血も涙もない。

既に先鋒1千人ほどが炎に焼かれていた。

「アレク様。さすがにマエッセンの兵士達が可愛そうです」
横からクリスが言う。

「左様でございますか。では少し、猶予を与えてやりますか」
アレクは笑うと、再び敵に見えた。

「マエッセンの犯罪者共よ。喜べ。我が筆頭魔導師様が貴様らを哀れんで頂けた」

「ええい、黙れ。私はダーナ・マエッセン。ボフミエ魔導国だろうが何だろうが、我が国は貴様らの国に用はない。我らは我が王の妹、インダルの王妃の要請で参ったのだ。外国の兵は黙ってもらおうか」

敵の指揮官らしきものが叫んでいる。

アレクはそれを拡大投影してこちらの前に映し出した。

「ふんっ、第一王子が犯罪者共の親玉か。我が筆頭魔導師様はリーナ王女殿下の依頼により、インダル王国軍に味方すると決められた。インダルに弓引くものはすなわち我らに弓引く者だ」
「何を申す。我らはノルデイン帝国皇帝陛下の許可を得て行動しておるのだ。貴様こそ、ノルデイン帝国に楯突くつもりか」
第一王子は自慢して言ってきた。
えっ、マエッセン王国はアレク様の父上ノルディン皇帝の支援を受けているって言うこと。それってまずいんじゃ。私はアレク様を横から見た。

しかし、アレク様はフンっと笑った。

「それがどうした。貴様、私が誰か知らないらしいな」
アレク様の笑いが白々しい。目は怒りに燃えているようだ。何かやばい。

敵第一王子の横で男が必死に誰かが衣類を引っ張っていた。

「何事じゃ」
王子が後ろを振り返って叫んでいる。

「何だと、目の前の男が赤い死神だと・・・・」
第一王子の顔がひきつるのが見えた。

「誰が赤い死神だと」
アレク様は怒りのあまり、手を前に突き出していた。

一瞬にて爆裂魔術が敵本陣に直撃した。

ズカーン

凄まじい爆発が起こる。

そして、その爆発の後には巨大なクレーターが生まれていた。

私は絶対にアレク様だけは怒らせないようにしようと心に誓った。彼にとって父の命令だろうが何だろうが、自分に逆らうものには容赦がなかった。だって後ろで必死に言い募っていたものの制服はノルディンのマークが入っていたのだから。
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