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王女の侍女は宰相らに最大出力の障壁攻撃を浴びせました
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アサーブの後ろから宰相のイシャンが現われた。
こいつはインダルの敵、自分さえ良ければ国がどうなっても良いという男だ。
元々伯爵家の嫡男で、国王の懐刀と言われたのが、王妃の死以降、変節。新王妃を迎え入れることに暗躍。今や、王子派の急先鋒でマエッセン王の腰巾着だ。
王子の父親はこの男ではないかとまで言われていた。
娘をマエッセン貴族にも嫁がせている。バリバリのマエッセン派だ。
こいつはアサーブみたいに脳筋でもなく、悪巧みも巧みだ。すなわち、私が頭で対抗できるわけもない。
「侍女ソニア、ボフミエなどに留学して、学を得るから下手な小細工をするようになる。女は愛嬌だけあれば良いものを。王女も貴様もこのインダルには不要だ」
「ほう、言うこと言ってくれるわね。で、あなたもノルディン帝国皇太子殿下は怖くないと」
私はこの作戦を始めた限り最後までやるしか無かった。
1分1秒でも時間を稼がなければならないのだ。
「勝手に、ノルディン帝国の皇太子殿下のお名前を使うな。インダルの次期国王陛下がカビーア王子殿下だとノルデイン帝国皇帝陛下にも了解は得ておるわ」
イシャンは言い切った。
「ふうん、じゃあ、皇帝陛下と皇太子殿下のご意見は違うのね。皇太子殿下は私達の味方よ。そして、すぐ隣クロチアにいらっしゃるわ。赤い死神に敵対しても良いと言うわけね」
私は不敵な笑みを浮かべた。
「ふん。口数の減らぬ女だ。ボフミエ魔導国は今魔王戦で大変なのだよ。それが終わるまでにすべての事を終えれば済むだけの話だ」
「ふうん、でも、それを許していただけるかしら。怒り狂った皇太子殿下を止められるものは誰もいないけれど」
「ふん、愚かな女だ。その親書には内政干渉は出来ないと書かれていたのだろうが。我らの諜報力を侮るな」
イシャンはそう言うと笑った。
やばい、この笑みは既にバレている。裏切り者が私達の中にもいるんだ。
私は最後の手段を使うことにした。
「何言うの。リーナ王女を女王に任命すると・・・・」
「そもそも、ボフミエ魔導国の筆頭魔導師に国王任命権はない。それにその親書には今は魔王戦で忙しくて内政干渉は出来ないと内務卿からの親書であろうが。なあ、ウィハーンよ」
「えっ」
私は驚いた。
その名前は王女の護衛騎士で私の横にいる男だった。
「はい」
そう言うとヴィハーンともうひとり騎士は振り返って私に向けて剣を構えた。
「あなた、裏切ったの」
私が叫んだ。
「ふん、元々私達はイシャン閣下とよしみを結んでいたのだよ。あの王女ではマエッセンには対抗できまい」
騎士の男は笑って言った。
「ふんっ、ご苦労だったな。ソニア。いろいろ暗躍してくれたようだが、貴様らのつまらぬ行動など全てこちらに筒抜けなのだよ。トリポリ王と連絡取り合っていたようだが、貴様らが放った使者はもう、この世におるまい。
そもそもトリポリ国王が危険を犯してまで、この地に来ることなど考えられんのだよ。合流してもあの女と見ると見さかいのないトリポリ王の妾とされるのがおちなのだよ。王女のためにこの国の女王になどしてくれる親切心はトリポリ国王にはないのだよ。それを信じるとは愚かなものだ」
馬鹿にしきった顔でイシャンは言った。そんな事は私も知っている。でも、私達は使えるものは何でも使って時間を稼ぎたかった。約束通り、ボフミエが手伝ってはくれないかも知れないが、最悪リーナ王女の亡命を認めてもらえれば良いのだ。しかし、次のイシャンの言葉に私は固まった。
「貴様は王女の逃げる時間を稼いでいるつもりかも知れんが、それも無駄だ。貴様の王女は、今頃抜け道の先の食堂で拘束されておる頃だ。そこには兵士が待ち構えておるからな。」
イシャンは笑って言った。
でも、私はそれを聞いて安心した。言ってやることはないがその抜け道は使っていない。
この城のありとあらゆる抜け道は、昔から王女とルドラと私の遊び場で、遊びや王宮を抜け出すために散々使っているのだ。城の誰も知らない抜け道も私達は全て把握していた。
後は裏切り者がまだいるかだが、まあ、いた所でルドラが何とかしてくれているだろう。
「まあ、トリポリの妾になるのもマエッセン国王の愛人になるのもそんなに変わるまい。
貴様も素直に降伏せよ。その方の器量ならば、マエッセン貴族相手の報奨にでも使ってやるわ」
イシャンは下卑た笑みを浮かべて言った。
そして、配下の兵士たちに私の拘束を指示しようとした時だ。
私はニコリと笑った。
「だ、そうですよ。皇太子殿下」
私はイシャン達の背後に向かって声をかけると跪いた。
「えっ」
あまりもに整然と私が声をかけて跪いたものだから、馬鹿なことにイシャンも兵士たちも思わず後ろを振り返った。
「ソニア、何もおらんではない・・・・」
慌てて振り返ろうとしたイシャン達に向かって、私は、必殺技、縦長障壁攻撃を最大出力で放出した。
一瞬にして私の前にいた兵士もイシャンも障壁に巻きんで壁に叩きつけていた。
ズカーン。
そして、凄まじい衝撃と破壊音を聞きながら私は意識を無くした。
********************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ソニアの必殺障壁攻撃でどうなったか。
気を失ったソニアの運命やいかに
今昼更新予定です。
こいつはインダルの敵、自分さえ良ければ国がどうなっても良いという男だ。
元々伯爵家の嫡男で、国王の懐刀と言われたのが、王妃の死以降、変節。新王妃を迎え入れることに暗躍。今や、王子派の急先鋒でマエッセン王の腰巾着だ。
王子の父親はこの男ではないかとまで言われていた。
娘をマエッセン貴族にも嫁がせている。バリバリのマエッセン派だ。
こいつはアサーブみたいに脳筋でもなく、悪巧みも巧みだ。すなわち、私が頭で対抗できるわけもない。
「侍女ソニア、ボフミエなどに留学して、学を得るから下手な小細工をするようになる。女は愛嬌だけあれば良いものを。王女も貴様もこのインダルには不要だ」
「ほう、言うこと言ってくれるわね。で、あなたもノルディン帝国皇太子殿下は怖くないと」
私はこの作戦を始めた限り最後までやるしか無かった。
1分1秒でも時間を稼がなければならないのだ。
「勝手に、ノルディン帝国の皇太子殿下のお名前を使うな。インダルの次期国王陛下がカビーア王子殿下だとノルデイン帝国皇帝陛下にも了解は得ておるわ」
イシャンは言い切った。
「ふうん、じゃあ、皇帝陛下と皇太子殿下のご意見は違うのね。皇太子殿下は私達の味方よ。そして、すぐ隣クロチアにいらっしゃるわ。赤い死神に敵対しても良いと言うわけね」
私は不敵な笑みを浮かべた。
「ふん。口数の減らぬ女だ。ボフミエ魔導国は今魔王戦で大変なのだよ。それが終わるまでにすべての事を終えれば済むだけの話だ」
「ふうん、でも、それを許していただけるかしら。怒り狂った皇太子殿下を止められるものは誰もいないけれど」
「ふん、愚かな女だ。その親書には内政干渉は出来ないと書かれていたのだろうが。我らの諜報力を侮るな」
イシャンはそう言うと笑った。
やばい、この笑みは既にバレている。裏切り者が私達の中にもいるんだ。
私は最後の手段を使うことにした。
「何言うの。リーナ王女を女王に任命すると・・・・」
「そもそも、ボフミエ魔導国の筆頭魔導師に国王任命権はない。それにその親書には今は魔王戦で忙しくて内政干渉は出来ないと内務卿からの親書であろうが。なあ、ウィハーンよ」
「えっ」
私は驚いた。
その名前は王女の護衛騎士で私の横にいる男だった。
「はい」
そう言うとヴィハーンともうひとり騎士は振り返って私に向けて剣を構えた。
「あなた、裏切ったの」
私が叫んだ。
「ふん、元々私達はイシャン閣下とよしみを結んでいたのだよ。あの王女ではマエッセンには対抗できまい」
騎士の男は笑って言った。
「ふんっ、ご苦労だったな。ソニア。いろいろ暗躍してくれたようだが、貴様らのつまらぬ行動など全てこちらに筒抜けなのだよ。トリポリ王と連絡取り合っていたようだが、貴様らが放った使者はもう、この世におるまい。
そもそもトリポリ国王が危険を犯してまで、この地に来ることなど考えられんのだよ。合流してもあの女と見ると見さかいのないトリポリ王の妾とされるのがおちなのだよ。王女のためにこの国の女王になどしてくれる親切心はトリポリ国王にはないのだよ。それを信じるとは愚かなものだ」
馬鹿にしきった顔でイシャンは言った。そんな事は私も知っている。でも、私達は使えるものは何でも使って時間を稼ぎたかった。約束通り、ボフミエが手伝ってはくれないかも知れないが、最悪リーナ王女の亡命を認めてもらえれば良いのだ。しかし、次のイシャンの言葉に私は固まった。
「貴様は王女の逃げる時間を稼いでいるつもりかも知れんが、それも無駄だ。貴様の王女は、今頃抜け道の先の食堂で拘束されておる頃だ。そこには兵士が待ち構えておるからな。」
イシャンは笑って言った。
でも、私はそれを聞いて安心した。言ってやることはないがその抜け道は使っていない。
この城のありとあらゆる抜け道は、昔から王女とルドラと私の遊び場で、遊びや王宮を抜け出すために散々使っているのだ。城の誰も知らない抜け道も私達は全て把握していた。
後は裏切り者がまだいるかだが、まあ、いた所でルドラが何とかしてくれているだろう。
「まあ、トリポリの妾になるのもマエッセン国王の愛人になるのもそんなに変わるまい。
貴様も素直に降伏せよ。その方の器量ならば、マエッセン貴族相手の報奨にでも使ってやるわ」
イシャンは下卑た笑みを浮かべて言った。
そして、配下の兵士たちに私の拘束を指示しようとした時だ。
私はニコリと笑った。
「だ、そうですよ。皇太子殿下」
私はイシャン達の背後に向かって声をかけると跪いた。
「えっ」
あまりもに整然と私が声をかけて跪いたものだから、馬鹿なことにイシャンも兵士たちも思わず後ろを振り返った。
「ソニア、何もおらんではない・・・・」
慌てて振り返ろうとしたイシャン達に向かって、私は、必殺技、縦長障壁攻撃を最大出力で放出した。
一瞬にして私の前にいた兵士もイシャンも障壁に巻きんで壁に叩きつけていた。
ズカーン。
そして、凄まじい衝撃と破壊音を聞きながら私は意識を無くした。
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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ソニアの必殺障壁攻撃でどうなったか。
気を失ったソニアの運命やいかに
今昼更新予定です。
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