27 / 68
筆頭魔導師は魔王の本拠地を雷撃しました
しおりを挟む
しかし、戦況はそれから膠着していた。
何故か魔王も攻めてこなかったが、こちらからモルロイに攻撃に転じることもなかった。
それは絶対に学園長や保守派の面々が反対しているからだろうことは容易に想像がついた。
また、国境の街に進出するために魔王が暗躍しているとか不穏な噂も流れた。
国境付近に領地のある貴族の子らは不安そうにしていた。
私の唯一の救いはモルロイと国境を接するマエッセンが我々のインダルに構う余裕が無くなったことだけだった。
このままこの状況が続けばマエッセンもインダルに手は出せない。
でもそれだとアルバートやクリスらがずうーっと戦場に拘束されることになる。
それも嫌だ。
私としては魔王がさっさと筆頭魔導師様に退治されてリーナ王女を助けてくれるのが一番いいんだけど。
でも、筆頭魔導師様と話せば話すほど魔王なんかに勝てるようには思えなくなっている。
だって部下の学園長のほうが強いっておかしくない?
「うーん、確かに筆頭魔導師様は黒死病を浄化されたけれど、やっぱり魔王と戦うのは難しいんじゃないかな」
ケチャが数学の授業の前に私に言う。当然彼女も最低クラスにいた。
「そうよね。見た感じあんな華奢だし」
メリが頷く。メリも私と同じで最低クラスだった。
私達は黒死病浄化の時の高揚感は消えて、魔王の恐怖が再び強くなっていた。
学園から他国へ留学する貴族の子弟もポロポロ出だした。
「国境に領地のある貴族の所にモルロイから使者が入っているそうよ」
物知り顔でケチャが言った。
「なんでそんなの知っているのよ」
メリが聞く。
「知り合いの騎士の先輩が教えてくれたの」
「でも、それ、あなたが知っているってことは、当然上も掴んでいるんでしょ。暴風王女や赤い死神に知れたら、ただじゃ済まないんじゃない?」
私が言う。
「そうよね。ここで手を下さないと魔王を怖れて捕縛しないんだってことになるし」
「ふんっ、赤い死神も暴風王女も魔王を怖れているんだよ」
私達の話に隣で聞いていたフォルシャフト伯爵令息だったかが言い放った。
「えっ、どういう事?」
ケチャが聞く。
「どうもこうも無いよ。魔王は無敵だぞ。赤い死神や暴風王女では勝てないよ」
「そうそう、たとえ筆頭魔導師様といえども黒死病菌には勝てても、魔王には勝てないよ」
貴族たちが頷く。
私達もそういう不安を感じていたのだが、他人に言われるのはなぜか我慢が出来なかった。
「何言っているのよ。筆頭魔導師様は絶対に魔王よりもお強いわ」
私は思わず声を出していた。
「何だお前は。確か淫乱とかいう小国から来た平民か」
「はんっ、貴族って本当に馬鹿ばかりね。そのワンパターンしか言えないの」
私はあまりにもバカらしくって言い返していた。
「何だと。貴様。今回は守ってくれるアルバートもいないんだぞ」
「そうだ!やるのか」
「何言っているのよ。筆頭魔導師様はあんたたちが飢えようとしていたのを雷撃で一閃、悪徳商人たちを一掃してくれたのよ。自国のトップを信じられなくてあなた達はそれでもボフミエ人なの!」
「そうだ。前皇帝の悪政もお前ら貴族共が不甲斐なかったからだろうが。それを筆頭魔導師様が倒していただいたんだぞ。お前ら皇帝の悪政の時は何も出来ずに静かにしていただけじゃないか」
「そうだそうだ」
私の周りには平民を中心に一致団結して言った。
「ふんっ、今のうちに吠えておくが良い。後で吠え面かくなよ」
フォルスト伯爵令息が言った。
「何だと」
「今日我が父上が、無駄な抵抗を止めて降伏するように筆頭魔導師様と面談している。どちらが正しいかはすぐに判るさ」
フォルスト伯爵令息が言った。
えっ、この伯爵家、完全に魔王についたって今言ったよね。絶対馬鹿だ。そんなの赤い死神が許すわけないじゃない。
私がそう思った時だ。
ドカーン
巨大な爆発音が宮廷の方からした。
「何事だ!」
「どうした?」
「敵襲か?」
皆、慌てて窓に張り付くが、こちらからは城壁が邪魔になって殆ど見えない。
怒った赤い死神が裏切った伯爵を血祭りにあげたんだ、と私はその時思った。
そして、次の瞬間凄まじい光がの束が宮廷から空へ向けて放たれたのだ。
一瞬にして空が真っ白になる。
「ら、雷撃だ」
「ついに出た!」
「筆頭魔導師様の雷撃だ」
そうか、これが筆頭魔導師様の雷撃なんだ。
そのあまりの凄まじさに私は呆然とした。
あの華奢な筆頭魔導師様がこんな凄い魔術を使えるなんて。
これなら魔王に勝てるかもしれない。
私は本気で思った。
そして、事実この雷撃で魔王の本拠地のモルロイの宮殿は一瞬でこの世から消滅していた。
何故か魔王も攻めてこなかったが、こちらからモルロイに攻撃に転じることもなかった。
それは絶対に学園長や保守派の面々が反対しているからだろうことは容易に想像がついた。
また、国境の街に進出するために魔王が暗躍しているとか不穏な噂も流れた。
国境付近に領地のある貴族の子らは不安そうにしていた。
私の唯一の救いはモルロイと国境を接するマエッセンが我々のインダルに構う余裕が無くなったことだけだった。
このままこの状況が続けばマエッセンもインダルに手は出せない。
でもそれだとアルバートやクリスらがずうーっと戦場に拘束されることになる。
それも嫌だ。
私としては魔王がさっさと筆頭魔導師様に退治されてリーナ王女を助けてくれるのが一番いいんだけど。
でも、筆頭魔導師様と話せば話すほど魔王なんかに勝てるようには思えなくなっている。
だって部下の学園長のほうが強いっておかしくない?
「うーん、確かに筆頭魔導師様は黒死病を浄化されたけれど、やっぱり魔王と戦うのは難しいんじゃないかな」
ケチャが数学の授業の前に私に言う。当然彼女も最低クラスにいた。
「そうよね。見た感じあんな華奢だし」
メリが頷く。メリも私と同じで最低クラスだった。
私達は黒死病浄化の時の高揚感は消えて、魔王の恐怖が再び強くなっていた。
学園から他国へ留学する貴族の子弟もポロポロ出だした。
「国境に領地のある貴族の所にモルロイから使者が入っているそうよ」
物知り顔でケチャが言った。
「なんでそんなの知っているのよ」
メリが聞く。
「知り合いの騎士の先輩が教えてくれたの」
「でも、それ、あなたが知っているってことは、当然上も掴んでいるんでしょ。暴風王女や赤い死神に知れたら、ただじゃ済まないんじゃない?」
私が言う。
「そうよね。ここで手を下さないと魔王を怖れて捕縛しないんだってことになるし」
「ふんっ、赤い死神も暴風王女も魔王を怖れているんだよ」
私達の話に隣で聞いていたフォルシャフト伯爵令息だったかが言い放った。
「えっ、どういう事?」
ケチャが聞く。
「どうもこうも無いよ。魔王は無敵だぞ。赤い死神や暴風王女では勝てないよ」
「そうそう、たとえ筆頭魔導師様といえども黒死病菌には勝てても、魔王には勝てないよ」
貴族たちが頷く。
私達もそういう不安を感じていたのだが、他人に言われるのはなぜか我慢が出来なかった。
「何言っているのよ。筆頭魔導師様は絶対に魔王よりもお強いわ」
私は思わず声を出していた。
「何だお前は。確か淫乱とかいう小国から来た平民か」
「はんっ、貴族って本当に馬鹿ばかりね。そのワンパターンしか言えないの」
私はあまりにもバカらしくって言い返していた。
「何だと。貴様。今回は守ってくれるアルバートもいないんだぞ」
「そうだ!やるのか」
「何言っているのよ。筆頭魔導師様はあんたたちが飢えようとしていたのを雷撃で一閃、悪徳商人たちを一掃してくれたのよ。自国のトップを信じられなくてあなた達はそれでもボフミエ人なの!」
「そうだ。前皇帝の悪政もお前ら貴族共が不甲斐なかったからだろうが。それを筆頭魔導師様が倒していただいたんだぞ。お前ら皇帝の悪政の時は何も出来ずに静かにしていただけじゃないか」
「そうだそうだ」
私の周りには平民を中心に一致団結して言った。
「ふんっ、今のうちに吠えておくが良い。後で吠え面かくなよ」
フォルスト伯爵令息が言った。
「何だと」
「今日我が父上が、無駄な抵抗を止めて降伏するように筆頭魔導師様と面談している。どちらが正しいかはすぐに判るさ」
フォルスト伯爵令息が言った。
えっ、この伯爵家、完全に魔王についたって今言ったよね。絶対馬鹿だ。そんなの赤い死神が許すわけないじゃない。
私がそう思った時だ。
ドカーン
巨大な爆発音が宮廷の方からした。
「何事だ!」
「どうした?」
「敵襲か?」
皆、慌てて窓に張り付くが、こちらからは城壁が邪魔になって殆ど見えない。
怒った赤い死神が裏切った伯爵を血祭りにあげたんだ、と私はその時思った。
そして、次の瞬間凄まじい光がの束が宮廷から空へ向けて放たれたのだ。
一瞬にして空が真っ白になる。
「ら、雷撃だ」
「ついに出た!」
「筆頭魔導師様の雷撃だ」
そうか、これが筆頭魔導師様の雷撃なんだ。
そのあまりの凄まじさに私は呆然とした。
あの華奢な筆頭魔導師様がこんな凄い魔術を使えるなんて。
これなら魔王に勝てるかもしれない。
私は本気で思った。
そして、事実この雷撃で魔王の本拠地のモルロイの宮殿は一瞬でこの世から消滅していた。
10
お気に入りに追加
1,339
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
魔力なしと虐げられた令嬢は孤高の騎士団総長に甘やかされる
橋本彩里(Ayari)
恋愛
五歳で魔力なしと判定され魔力があって当たり前の貴族社会では恥ずかしいことだと蔑まれ、使用人のように扱われ物置部屋で生活をしていた伯爵家長女ミザリア。
十六歳になり、魔力なしの役立たずは出て行けと屋敷から追い出された。
途中騎士に助けられ、成り行きで王都騎士団寮、しかも総長のいる黒狼寮での家政婦として雇われることになった。
それぞれ訳ありの二人、総長とミザリアは周囲の助けもあってじわじわ距離が近づいていく。
命を狙われたり互いの事情やそれにまつわる事件が重なり、気づけば総長に過保護なほど甘やかされ溺愛され……。
孤高で寡黙な総長のまっすぐな甘やかしに溺れないようにとミザリアは今日も家政婦業に励みます!
※R15については暴力や血の出る表現が少々含まれますので保険としてつけています。
【完結】ただの悪役令嬢ですが、大国の皇子を拾いました。〜お嬢様は、実は皇子な使用人に執着される〜
曽根原ツタ
恋愛
「――あなたに拾っていただけたことは、俺の人生の中で何よりも幸運でした」
(私は、とんでもない拾いものをしてしまったのね。この人は、大国の皇子様で、ゲームの攻略対象。そして私は……私は――ただの悪役令嬢)
そこは、運命で結ばれた男女の身体に、対になる紋章が浮かぶという伝説がある乙女ゲームの世界。
悪役令嬢ジェナー・エイデンは、ゲームをプレイしていた前世の記憶を思い出していた。屋敷の使用人として彼女に仕えている元孤児の青年ギルフォードは――ゲームの攻略対象の1人。その上、大国テーレの皇帝の隠し子だった。
いつの日にか、ギルフォードにはヒロインとの運命の印が現れる。ジェナーは、ギルフォードに思いを寄せつつも、未来に現れる本物のヒロインと彼の幸せを願い身を引くつもりだった。しかし、次第に運命の紋章にまつわる本当の真実が明らかになっていき……?
★使用人(実は皇子様)× お嬢様(悪役令嬢)の一筋縄ではいかない純愛ストーリーです。
小説家になろう様でも公開中
1月4日 HOTランキング1位ありがとうございます。
(完結保証 )
孤児が皇后陛下と呼ばれるまで
香月みまり
ファンタジー
母を亡くして天涯孤独となり、王都へ向かう苓。
目的のために王都へ向かう孤児の青年、周と陸
3人の出会いは世界を巻き込む波乱の序章だった。
「後宮の棘」のスピンオフですが、読んだことのない方でも楽しんでいただけるように書かせていただいております。
【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活
束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。
初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。
ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。
それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる