上 下
16 / 68

王宮の侍女はいざという時は助けてもらえると仲間に言われました

しおりを挟む
翌朝目が覚めた私は、あれだけ泣いたのが嘘のようにスッキリしていた。

昨夜思いっきりアルの胸で泣いたからだろうか。

本当にアルには酷いことをしたし、私を優しく抱きしめてくれて泣かせてくれるなんてなんて優しかったんだろう。

でも、しばらく恥ずかしくて絶対にアルには会えない。

私は昨日のことを思い出して真っ赤になった。

超大国の公爵令息の胸で泣くなんて・・・・


そう赤くなってうじうじしているうちにミアが来て昨日一日寝ていたと言われて休みの大半を寝ていたのに気づいた。

じゃあ今日は授業じゃん。やばい。


私は慌てて起き出した。

ミアが洗濯してくれた制服を渡してくれる。宮廷で洗濯してもらうなんてなんて事だろうと自分自身に呆れながら、お礼を言う。


「ソニア、大丈夫?」
そこへ制服を着たクリスが迎えに来てくれた。

「ゴメン。クリス。また、魔力切れを起こしてしまって」
私は謝った。魔術を使うと最近はいつも気を失ってしまう。

「それは仕方がないわよ。慣れないのにあんな巨大な障壁作るんだから」
クリスが呆れて言った。

「次からはもう少し気をつけるようにするわ」
私は反省した。

二人で部屋の外に出るとアルバートが待っていてくれた。

「ア、アルバート様」
私は驚いた。まさかこんなところで会うなんて思いもしなかったのだ。

まあいるのは宮廷だし、基本近衛騎士のアルバートは宮廷に住んでいるはずだからいるのは当然かも知れないけれど。

「大丈夫か?」
開口一番聞いてくれた。

「昨日は本当にすいませんでした」
私が胸の中で泣いたことを謝る。

「気にするな。たまには泣きたいこともあるさ」
アルバートが気を使って言ってくれる。こんなに優しかったんだ。最初に酷い奴だと思った自分を殴りたくなる。

「えっ、アルバート様が泣かせたんですか」
クリスがふざけて聞く。

「な、何を仰るんですか。私が女性を泣かせるなんてことをする訳が無いでしょう」
アルバートは焦ったのかクリスに対する言葉が敬語になっていた。

女の子を泣かせたってことに過剰反応している。まあ、泣かせたのなら騎士としてはあるまじきことだけれど、昨日は私が泣いたのだ。

「ううん。アルバート様は悪くないの。私が両親のこと夢に見てしまって。泣いた私を慰めていただいたの」
私がアルバートのために言い訳する。

「そうなんだ。辛い夢見たんだ」
クリスが何か考えながら言う。

「うん。今まで馬車の事故で死んだと思っていたから、マエッセンに襲撃されて死んだなんて思ってもいなくて」


「アレク、お前が余計なこと言うからいけないんだぞ」
いきなり角を曲がった先にジャンヌとアレクが待っていた。

何でこの二人が宮廷の中にいるんだろうと不審に思ったが、私を心配して宮廷まで来てくれたんだろうか。彼らは実力から言って既にボフミエの魔導騎士になっているのかもしれない。

「そうか、襲撃されたって知らなかったんだよな。すまん」
「アレク様。本当に両親は襲撃されたのですか」
「君の両親がどうなったか走らないが、王妃は襲撃で亡くなったのは事実だ」
なぜ他国のアレクが知っているのか判らなかったが、ここまで言い切るのだから事実なんだろう。

「仇を討つ気ならいつでも協力はするぞ。かけには負けたからな」
ジャンヌが言ってくれた。昨日の賭けは私が気絶したから負けだと思っていた。勝ちにしてくれるんだ。

「えっ、仇を討つなんてそんなの無理です。実際に手を下したのはただの兵士だと思いますし、国王を殺すなんて不可能です」
「そうか、所詮マエッセンなんてノルデインの南の小国。やるならやるぞ」
私が答えると真顔で言うアレクの言葉に私は絶句した。

マエッセンが小国ならインダルなんてクズ国になってしまうじゃないか。
その国王を仇討ちするなんて絶対に無理だと私は思うのに、アレクは私に気を使ってくれて冗談を言ってくれたのだろうか。

「アレク、そんなこと言ってるのが学園長に知られたら説教部屋行きだぞ」
「何言ってるんだよ。元々かけを始めたのはジャンヌだろ」
「えっ、私も同罪か」
アレクの言葉にジャンヌは嫌そうにした。

「そんなの決まっているでしょう」
「ふん。賭けで負けたのはアルだからアルも同罪な」
アルバートが話すとジャンヌが言い返してきた。

「えっ、でも私は巻き込まれただけでは」
「そんなの学園長が認めるわけ無いだろう」
アルが青くなって言い訳したが、ジャンヌはそれを一顧だにせずに否定した。

学園長って、そんなに怖いんだろうか。まあ生徒の分際で大国の国王に仕返しをすると話す段階で学園の範疇を超えていると思うけれど。

「まあ、ソニア。いざという時は力になるから、相談しろ。でも、学園長にはくれぐれも内密にな」
ジャンヌが手を降って魔導クラスの教室に向かおうとする。

「はい。よろしくお願いします」
「あっ、そうだ。放課後暇だったら訓練場に来い。色々と教えてやるよ」
「えっ、本当ですか。よろしくお願いします」
ジャンヌの言葉に喜んで私はお礼を言った。

「剣は俺が教えるから」
教室に入りしなにアルバートが言ってくれた。

「えっ」
私は固まっていた。

「何で驚く。俺の剣術はジャンヌらに比べて正統派だぞ」
アルバートが言う。

「でも、超大国の公爵家の方に教えていただけるなんて、恐れ多くて」
私の言葉にアルバートはとても不思議そうな顔をした。

「いや、ジャンヌとかアレクに教わるほうがおそれ・・・・」
「えっ、何かおっしゃいましたか」
アルバートの言葉は最後のほうがチャイムが鳴って聞こえなかった。

「いや何でもない」
私達は急いで席についた。

*************************************

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

ソニアの師匠は超一流?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

帰らなければ良かった

jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。 傷付いたシシリーと傷付けたブライアン… 何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。 *性被害、レイプなどの言葉が出てきます。 気になる方はお避け下さい。 ・8/1 長編に変更しました。 ・8/16 本編完結しました。

告白はミートパイが焼けてから

志波 連
恋愛
国王の気まぐれで身籠ってしまった平民の母を持つティナリアは、王宮の森に与えられた宮で暮らしていた この国の21番目の王女であるティナリアは、とにかく貧しかった。 食べるものにも事欠く日々に、同じ側妃であるお隣の宮で働こうと画策する。 しかしそこで出会ったのは、護衛騎士との恋に悩む腹違いの姉だった。 ティナリアの決断により、その人生は大きな転換を迎える。 様々な人たちに助けられながら、無事に自由とお金を手にしたティナリアは、名を変えて母親の実家である食堂を再建しようと奮闘する。 いろいろな事件に巻き込まれながらも、懸命に生きようとするティナリア。 そして彼女は人生初の恋をした。 王女でありながら平民として暮らすティナリアの恋は叶うのだろうか。 他のサイトでも掲載しています。 タグは変更するかもしれません。 保険的にR15を追加しました。 表紙は写真AC様から使用しています。 かなり以前に書いたものですが、少々手を入れています。 よろしくお願いします。

侯爵の愛人だったと誤解された私の結婚は2か月で終わりました

しゃーりん
恋愛
子爵令嬢アリーズは、侯爵家で侍女として働いていたが、そこの主人に抱きしめられているところを夫人に見られて愛人だと誤解され、首になって実家に戻った。 夫を誘惑する女だと社交界に広められてしまい、侍女として働くことも難しくなった時、元雇い主の侯爵が申し訳なかったと嫁ぎ先を紹介してくれる。 しかし、相手は妻が不貞相手と心中し昨年醜聞になった男爵で、アリーズのことを侯爵の愛人だったと信じていたため、初夜は散々。 しかも、夫が愛人にした侍女が妊娠。 離婚を望むアリーズと平民を妻にしたくないために離婚を望まない夫。というお話です。

【完結】似て非なる双子の結婚

野村にれ
恋愛
ウェーブ王国のグラーフ伯爵家のメルベールとユーリ、トスター侯爵家のキリアムとオーランド兄弟は共に双子だった。メルベールとユーリは一卵性で、キリアムとオーランドは二卵性で、兄弟という程度に似ていた。 隣り合った領地で、伯爵家と侯爵家爵位ということもあり、親同士も仲が良かった。幼い頃から、親たちはよく集まっては、双子同士が結婚すれば面白い、どちらが継いでもいいななどと、集まっては話していた。 そして、図らずも両家の願いは叶い、メルベールとキリアムは婚約をした。 ユーリもオーランドとの婚約を迫られるが、二組の双子は幸せになれるのだろうか。

義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!

ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。 貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。 実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。 嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。 そして告げられたのは。 「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」 理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。 …はずだったが。 「やった!自由だ!」 夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。 これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが… これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。 生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。 縁を切ったはずが… 「生活費を負担してちょうだい」 「可愛い妹の為でしょ?」 手のひらを返すのだった。

婚約をなかったことにしてみたら…

宵闇 月
恋愛
忘れ物を取りに音楽室に行くと婚約者とその義妹が睦み合ってました。 この婚約をなかったことにしてみましょう。 ※ 更新はかなりゆっくりです。

もう彼女の夢は見ない。

豆狸
恋愛
私が彼女のように眠りに就くことはないでしょう。 彼女の夢を見ることも、もうないのです。

私だけが家族じゃなかったのよ。だから放っておいてください。

恋愛
 男爵令嬢のレオナは王立図書館で働いている。古い本に囲まれて働くことは好きだった。  実家を出てやっと手に入れた静かな日々。  そこへ妹のリリィがやって来て、レオナに助けを求めた。 ※このお話は極端なざまぁは無いです。 ※最後まで書いてあるので直しながらの投稿になります。←ストーリー修正中です。 ※感想欄ネタバレ配慮無くてごめんなさい。 ※SSから短編になりました。

処理中です...