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王女の侍女は食堂で大国公爵令息にプリンを半分もらいました

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そのまま私達はオウが予約していたレストランに向かった。途中で話を聞くとジャンヌとアレクは即戦クラスの魔導コースの生徒だった。ジャンヌはクリスの姉ではなくて遠い親戚だそうだ。二人は昔からの幼馴染でオウも同じく幼馴染だった。ということはクリスとオウは幼馴染と恋仲ってことで、それはソニアの心にほろ苦さを感じさせた。


「で、インダルってどこにあるんだ」
姉御肌のジャンヌが聞いてきた。インダルなんてドジっ子ソニアの噂を聞いて初めて存在を知ったらしい。

「クロチアとマエッセンに挟まれた国だ」
オウが言ってくれた。インダルの位置を知ってくれているなんてさすがにクリスの恋人だ。

「ひょっとしてクロチアとマエッセンも知らないんじゃないだろうな」
オウが重ねて聞く。

「いや、さすがにその両国は知っているぞ」
「国の位置くらい全て頭に入れておけ」
「えっ、そんなの必要ないだろう。なあアレク」
「いや、さすがに俺も知っているぞ。常識だろう」
ジャンヌがアレクに振るとアレクが当然とばかりに言ってきた。

うそ、この国って皆天才?私だって近くの国以外はあんまり知らないのに。すべての国の位置を知っているのが常識なんて凄い事だ。でも、寮の周りの子らは知らなかったから、そんな事無いはずだ。

「えっそうなのか」
ジャンヌは慌てるが、いや、絶対に一般人にとっては常識でない。国の大臣とか、王族くらいだろう。そんなの知っているのは。王女も覚えるのに苦労していた筈だ。


「で、そのインダルからここまで何しに来たんだ?」
話題を変えるためかジャンヌが訊いてきた。

「えっ、いえ、その」
私は詰まった。友達たちにも中々王女を助けてくれる後ろ盾を探しにとは言えてなかった。言えたのはクリスくらいだ。でも、彼女らはまだそこまで親しくない。

「彼女はインダルの王女の侍女で、王女を助けてくれる後ろ盾を探しに来たんです」
何もこんなところで言わなくてもいいのに、クリスがあっさりバラしてくれた。
こんな平民が大国の後ろ盾をもらいに来たなんて言ったら笑われるしか無いのに。

「今はボフミエも飢饉乗り越えたところだからな、中々援助は難しいんじゃないか」
オウが真面目に答えてくれた。

「そうだよな。そんな事したら学園長とかが切れそうだ」
ジャンヌが言った。

「えっ、学園長が切れるってどういうことですか」
あの温厚で年も近く親しみの湧きそうな学園長が切れるってどういう事だろう。

「あいつは保守派だからな」
「えっ」
ジャンヌの言葉にソニアが聞き返すと

「学園長はテレーゼの皇太子だからボフミエの執行部にも強いんだそうだよ。で基本は保守派だから、他国への干渉は許さないんじゃないかな」
オウが解説してくれた。

「そうなんですか」
学園長がテレーゼの皇太子だったことをソニアは失念していた。もっともソニアは直接話したこともなかったし、たとえ頼めたとしても絶対に味方はしてくれそうにないと判った。


「インダルはマエッセンが虎視眈々と狙っているんだろう。あそこの王は元々インダルの美人王妃を狙っていたからな」
「えっ、そうなのか」
「10年前の王妃襲撃も王妃を狙ったマエッセンの襲撃じゃないかと聞いたことがあるぞ」
アレクの言葉に私は固まった。

うそ、そうなの。私は知らなかった。マエッセン王が人妻王妃に横恋慕して王妃を誘拐するつもりで襲撃したっていうの。私は唖然とした。

「大丈夫か」
青くなった私を心配してアルが声をかけてくれた。

「ゴメン。ちょっと立ちくらみがして」
「大丈夫か」
「もう大丈夫。時々なるの」
私は頭を振っていった。

マエッセンの糞豚王め。自分の色欲のために王妃を襲ったのか。それで私の両親が殺されたんだ。絶対に許さない。私は心に誓った。


「ここだ」
レストラン自体は大衆向けのレストランで、まだ昼前なので空いていた。

6人席に案内される。

オウ、クリス、ジャンヌの順で、オウの前がアルで私、アレクの順に座る。

「うまそうな匂いだな。オウ、お勧めは」
「ここは定食だ。A定食が焼き魚。Bがとんかつ。Cが煮魚だ」
「じゃあ私はBで」
「俺も」
ジャンヌの言葉にアレクがのる。
「私はCで」
「じゃ俺も」
クリスの言葉にオウが頷く。

「私はAで」
「私もAで」
私が言うとアルが追従してくれる。何もカップルのマネしなくてもいいのにとは思ったが、少しだけ嬉しかった。まあ、アルは私には高嶺の花何だけれど。


「へい、おまちどうさん」
少し待つと店員が2人で運んできてくれた。

「えっ」
それを見てクリスが固まる。

「何だ。クリス。まだかぼちゃだめなのか」
ジャンヌが呆れていった。そうかクリスはかぼちゃがだめなんだ。何でも完璧そうなクリスにも好き嫌いがあったなんて、私は少しクリスに親近感を覚えた。

「何言っているんですか。元々お姉さまが、ハロウインの飾り付けするからって馬鹿みたいにかぼちゃ取ってくるからでしょ」
クリスがぶすっとしてジャンヌに文句言う。

「そうだったかな」
「あったあった、ジャンヌの母親に怒られて俺らが必死にかぼちゃばかり食べなきゃいけなくなったんだ」
「食べても食べても無くならなくて、その夜はかぼちゃのおばけに追いかけられる夢見て、それ以来かぼちゃはだめなんです」
ジャンヌは覚えていなかったが、オウの言葉にクリスは文句を言っていた。文句言うクリスが少し可愛かった。

かぼちゃを避けるクリスにオウが何も言わずに食べてあげていた。本当にこの二人は仲の良い恋人だった。

「クリス、いつまでも好き嫌いは駄目だぞ」
それを見てジャンヌが注意する。

「何言っているんですか。お姉さまもグリーンピースをアレクに食べてもらっていますよね」
クリスが反論した。そう、この二人の仲も怪しい。ジャンヌは否定するがアレクはまんざらでもないようだ。

「何のことかよくわからないな」
ジャンヌの誤魔化しもあまりにもバレバレだ。

食べ終わった後にデザートが出た。
女性にはイチゴのショートケーキが、男性にはプリンが出て来た。

「あっねこのプリン美味しい」
オウが男のくせに幸せそうにプリンを食べている。
それをクリスが物欲しそうに見ていた。

「はいっ」
そのクリスの口にオウが1口プリンを放り込む。

「あっ、本当に美味しい」
クリスは幸せそうに微笑んだ。あいも変わらず、アツアツだ。絶対これは付き合っている。私は思った。

「ジャンヌも半分食べるか」
アレクが聞く。

「えっ、じゃあケーキも半分渡す」
二人は半分ずつにした。

「えっ」
私は目が点だ。やっぱりこの二人も付き合っているんじゃないか。


その私の机の前に、アルが半分残ったプリンの入れ物を置いてくれた。

「えっ、アル」
私は赤くなった。アルの食べた残りを食べるなんて間接キスじゃないか。

「食べたいんだろう」
あるが言う。

「えっ、でも」
「俺は男だから甘いのはもう一ついらない」
アルが言ってくれた。私は恥ずかしかったが、この甘い雰囲気の2組のカップルにあてられてそのまま思い切って頂くことにした。他の4人は何も言わないだろう。郷に入れば郷に従うまでだ。
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