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王女の侍女は食堂でクリスに慰められました

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本日3話目です。

********************

食事時間になった。

「クリス、一緒に食堂に行こうよ」
私はクリスを誘って食堂に行くことにした。
クリスを助けたことでクリスとの仲は少しは良くなったはずだと思う。クリスは寡黙な方だからよく判らなかったが・・・・

クラスの大半はやはり貴族だった。40人中ボフミエの貴族が20名。平民は10名。他国からの留学生が10名だ。留学生は私を除いてほとんど貴族だった。
他国からの留学生にはアルバートや近隣国の王族もいた。
平民の女の子はクリスだけだった。

私は定食を頼んだ。クリスも定食だ。定食はご飯と魚フライに野菜サラダ、味噌汁がついていた。

「ソニア、昨日も聞きかけたけれどインダル王国から平民のあなたがここまで来るなんて大変じゃなかったの。今インダルはけっこう大変だと聞いているけれど」
「え、クリスって詳しいんだ」
私はそこまで知ってくれていて嬉しかった。

「ええ、まあ」
クリスが微妙に頷く。

「そう、私、王女様の侍女を小さい時からやっていて、王女様に言われて来たの」
「王女ってリーナ王女よね」
「クリス、すごいね。インダルなんて小国のこと誰も知ってくれていないのに、私の大切な王女様のことまで知ってくれているなんて」
私は感激していった。

「知っていると言っても名前だけよ」
「名前だけでも知ってくれているなんてすごいよ」
「私、将来は文官になりたいから、国際情勢も勉強しているの」
何でも無いようにクリスは言った。さすが伸びる国は違う。こんな平民の学生でさえも、インダルなんて小さな国のことを勉強してくれているんだ。

「インダルは今大変でしょう。色々と」
「そうなの。私の仕えている王女様と弟の後継者争いとかで。
王女様は優秀なのよ。それに民にも優しくて。民からの人気は高いんだけど、後ろ盾がないの。それに対して弟はバックに大国のマエッセンがついているから、向こうのほうが圧倒的に強いの。私は出来たら留学中に後ろ盾になってくれそうな人を探して親しくなれって言われてるんだけど・・・」
「えっ、じゃあ、私と親しくなるよりも、アルバート様とかと親しくなったほうが良いんじゃないの」
「アルバート様なんて無理よ。雲の上の人だし、それに、私入学式のときに不注意でぶつかったらすごく睨みつけられて」
私は思わず言っていた。

「たまたま、機嫌が悪かったんじゃない。彼はおそらく優しいと思うよ」
「そうかな。いつも周りからちやほや声かけられていて天狗になっているんじゃないかな。平民の私のことなんて見下しているに違いないよ。やっぱり平民の私がお貴族様と仲良くなるのは厳しんじゃないかな」

そう、私はこの2日間学園で色々見ていたけれど、デニスを始め基本的に貴族の人たちはとてもプライドが高くて話なんて出来るような様子はなかった。アルバートもトゲトゲしていて声かけにくいし。

王宮にいけば皇太子がたくさんおられるみたいだけれど、私なんか歩いていたら不審者扱いであっという間に捕まるに違いないし。

「だから、せめて、出来たら魔術や剣で王女を守れるようになりたいなって思うの」
私はクリスに新たに決意した目標を話した。

「そうなんだ。私が魔術使えたら教えられるんだけど、なかなか上手く使えないのよね」
「ふうん、そうなんだ。クリス、フランツ先生が怯えていたけれど何やったの?」
「何もしてないわよ」
「うそ、絶対に何かやったでしょ」
「昔、ちょっと魔力が暴発しちゃってフランツ先生を弾き飛ばしたと言うか」
再度突っ込むと赤くなってクリスが白状した。

「すごいじゃない。暴発してボフミエ魔導国きってのフランツ先生を吹き飛ばすなんて」
私は感動して言った。あの偉そうな先生を弾き飛ばすなんてクリスはどんだけ魔力量があるんだろう。
私は尊敬の眼差しでクリスを見た。

「でも、ソニアも、授業の最後の方はきちんとファイアーボールが出るようになっていたじゃない。才能はあると思うわ」
「ありがとう、クリス、そう言ってもらえると嬉しい。剣は少しは使えるんだけれど魔術は全然だから」
「えっ、あなた侍女なのに。剣が使えるの?」
「幼馴染が騎士で昔一緒によく練習していたから。王女を守るってこともあって練習したの。まだまだだけど少しは使えるんだ」
「へええ、すごいね、ソニアは。でも、剣を使えるようになるのは普通は無理じゃないかな。それだけ努力できるって、ひょっとしてソニアはその幼馴染が好きだったりして」

クリスのこの不用意な一言はグサリと私の胸に突き刺さった。
もう忘れたはずだったのに。

「えっ、ソニア大丈夫」
慌ててクリスが俯いた私の顔を覗き込んだ。

気付いたら私は涙を流していた。

「ごめん、クリス、ちょっと」
私は溢れた涙を拭った。

「ごめんなさい。ソニア。辛いこと思い出させたみたいね」
クリスがハンカチを貸してくれた。
私は慌ててそれで顔を拭いた。

私は少しして落ち着いた。

「ごめん、クリス、吹っ切ったつもりだったんだけど、吹っ切れてなかったみたい」
涙を拭って私は言った。そう、本当に吹っ切ったつもりだったのに。
その後クリスに幼馴染が憧れの姫君に取られてしまったことを白状させられていた。

「だから、この学園で、恋も頑張ろうと思ってるの」
私は明るく言った。

「うん、ソニアなら明るいし健気だし、大丈夫だよ」
クリスはそう言うと何故か私の頭をよしよしと撫でてくれた。

母が死んでからはそんな事されたこと無くてとても恥ずかしかったけど、胸の中がとても暖かくなった。
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