上 下
58 / 62

ライラの付いた嘘でペトラ先生を説得して侯爵令嬢を治しに行きました

しおりを挟む
「ペトラ先生!」
私は唖然とした。これは最悪だ。

なんで、なんで、ペトラ先生がここにいる?

ペトラ先生は寮長では無かったはずだ。

住まいはこの学園には無い。

当然通いのはずだ。

家はどこか知らないけれど、学園には住んていなかったはずだ。
それが何故ここにいる?

「これはペトラ先生。先生がどうしてここに?」
私の代わりにアクセリ様が聞いてくれた。
私はホッとした。


「学園内で、不埒にも不純異性行為をしている者がいると通報があったのです」
ペトラ先生がギロリと私と会長を睨みつけた。私は手を繋いでいたことを思い出して慌てて手を引っ込めた。

「それで警戒していたら、先程渡り廊下のあたりで、女性の悲鳴が聞こえたのです」
ライラはそれを聞くと思いっきり私の足を踏んでくれた。

痛い! 私は涙目になった。そもそも私が悲鳴を上げたのは、あんたが顔中血まみれになって私を驚かせたからじゃない!

「それで探していたらあなた方が騒いでいるのにぶつかったのです。まさか、アクセリさんともあろう方が、そのような行為に加担してはいないでしょうね」
疑わしそうにペトラ先生がアクセリ様を見るが、

「当然です。私もそのような噂を聞いていたので、警戒していたら、いきなりニーナ嬢とライラ嬢に出会ったのです」
アクセリ様が私達を突き放してくれたんだけど。

ええええ! ペトラ先生とアクセリ様、私の苦手な2トップに睨まれて、私は絶体絶命のピンチに立ってしまった。

こんなのこの二人に私が何か言えるわけ無いじゃない!

「私もニーナに無理矢理ここに連れてこられただけで」
ちょっと待ってよ。ライラまで私を見捨てないで!

私のうるんだ瞳をライラはまるっと無視してくれた。

「ニーナさん。これはどういうことですか?」
ペトラ先生に睨まれてしまった。もう正直に言うしか無い。

「私、ライラからマイラ様が危篤だって聞いたんです」
私はライラに振り返したのだ。自分だけ逃しはしない!

「マイラ様と言うとマイラ・カンガサラ侯爵令嬢ですか」
「はい」
先生の問いに私は盛大に頷いた。

「ちょっとニーナ、私は危篤だなんて言っていないじゃない」
「でも、マイラ様がサマーパーティーまで生きられないって言ったじゃない」
私は言い返した。

「それはそうだけど」
「ちょっと待った。ライラ嬢。今マイラは新薬を飲みだしたばかりだ。病が重くなったとは聞いていないぞ」
会長が怒ってライラに突っ込んだ。
「私も具合が悪くなったとは聞いておりません。ライラさんはどうやってその事を知られたのですか」
「そうだ。ライラ嬢、私もそれを知りたい」
ペトラ先生に次いで会長まで聞いてくれるんだけど。

「それは……」
ライラは躊躇した。私を鋭く睨んでくるんだけど、そんなの知らない!

それはそうだろう。前世のゲームの知識から知っているなんて言えないのだ。
どうするつもりだろう?
私はライラを見守った。

「判りました。正直に言います。だから、それが信じられないと思っても、信じて頂けますか」
ライラが皆を見回して言った。

「それは話を聞いてみないとなんとも言えない」
会長が当然のことを言った。

「判りました」
ライラは頷いたのだ。
「えっ!」 私はぎょっとしてライラを見た。

「ニーナ、あなたは黙っていなさい」
小さい声でライラが言うと話しだしたのだ。

「私の枕元で前聖女様がマイラ様がもうあまり長くないとおっしゃられたのです」
ライラがとんでもない事を言い出したんだけど。

「前聖女様というと100年前のミンミ様ですか」
ペトラ先生が聞いてきた。
それを聞いて会長が唖然としている。
想い人の事を言われてショックだったのだろう。

「そうだと思います。そのミンミ様が言われたのです。そんな危険なマイラ様だが手はないことはないと」
「ライラ嬢。それはどうすれば良いのだ?」
思わず会長がライラにすがっていた。
「はい。聖女様がおっしゃるには新聖女様なら治せると」
「新聖女様?」
誰だそれは? 私には誰のことか良く判らなかった。

「はい。それを聞いた途端にニーナが駆け出したのです」
えっ、そうだったっけ? 私はなんのことかよく判っていなかった。

「あなたは新聖女様がニーナさんだと思うのですか」
「私は判りませんが、おそらくニーナはそう思ったんだと思います」
そう言うと思いっきりライラがまた私の足を踏んでくれたのだ。
「痛い」
私は痛さにうめいて頭を下げた。

「ほら、このように頷いています」
ライラは当然のように言ってくれるんだけど、ちょっと待ってよ。確かに私はそう思って会長を連れて行こうと思ったけれど……。

まあ、もうこうなったらそれに乗るしか無いけれど、何も人の足を踏むことはないじゃない。

「ニーナさん。あなたがマイラさんを治すというのですか」
「はい。出来るかどうかは判りませんが、聖女様の神託が出た限りやるしか無いかと」
私は神妙に頷いたのだ。どのみちやるつもりだったから、やるしか無い。

「なんとも信じられないことですが」
ペトラ先生が疑い深そうに私達を見るが、

「先生は前聖女様の神託を疑われるのですか?」
「そうとは言いませんが、」
ペトラ先生は私の真摯な瞳を見て気押されたみたいだ。

「事は一刻も争うのです。殿下。マイラ様は病気で苦しんでいらっしゃるのです。前聖女様の神託で、私が治せる可能性があるかもしれないんです。すぐにマイラ様の所に連れて行って下さい。お願いします」
私は会長に頼み込んだのだ。

「いや、でも、こんな時間に」
「会長、時間がないんです。今こうしている間もマイラ様が苦しんでいらっしゃるかと思うと私は胸が痛くて……お願いします」
私は再度会長に頭を下げたのだ。

「判った。そこまで言うなら行こう」
会長がやっと頷いてくれたのだ。

何も夜に出なくてもと渋るペトラ先生を前聖女の神託を盾に強引に私達は行動を開始したのだ。

*************************************************
さてニーナは無事に侯爵令嬢の所に行けるのか?
どんどん更新していきます

ここまで読んで頂いて有難うございます。
このサイドストーリー
『転生したヒロインのはずなのに地味ダサ令嬢に脇役に追いやられ、氷の貴公子に執着されました』
この話のライラ視点です。ライラの性格がガラリと変わります。
是非ともお読みください。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/302819342

下にリンクも張っています
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。 十分以上に勝算がある。と思っていたが、 「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」 と完膚なきまでに振られた俺。 失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。 彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。 そして、 「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」 と、告白をされ、抱きしめられる。 突然の出来事に困惑する俺。 そんな俺を追撃するように、 「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」 「………………凛音、なんでここに」 その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜

波間柏
恋愛
 仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。 短編ではありませんが短めです。 別視点あり

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...