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昼休みに王子様にウィル様宛の手紙を渡しました

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ヴィルタネン先生のカツラをヨーナスとアハティが風魔法で吹き飛ばしてくれて、私達は爆笑したのだった。

「えっ」
先生は笑い声に一瞬何が起こったか判らなかったみたいで、
「先生、カツラが」
慌てて言うユリアナ嬢の言葉に慌てて手を頭に押さえて慌てていた。

その後で私達が散々怒られたのは言うまでもないが、怒り出すツルピカの先生の頭を見て私達が笑い出すので、先生も威厳が保てなかったみたいで、その後私達はペトラ先生の前に担任もろとも呼び出されて注意されたのだった。
でも、ペトラ先生も状況確認でヴィルタネン先生のカツラを吹き飛ばされて慌てる様子を聞いた時には思わず目が泳いでいたし、ヒルダ先生は笑うのを必死に抑えていたと思う。

私としては出来ない私をあそこまで笑いものにしてくれた、ヴィルタネン先生に仕返ししてくれたヨーナスとアハティにはとても感謝したのだが、わざとしていないと言う、ヨーナスとアハティの言い分はほとんど認められずに、反省文10枚の処分が下った。

私も昨日の件で10枚の反省文を書けって言われたんだけど、何かおかしいと思う。
ペトラ先生も笑っていたのに!

次の歴史の時間に寝不足が続いた私は爆睡してしまい、更に10枚のレポートが追加されてしまったんだけど……

「今のはあんたの自業自得よ」
何かライラが冷たい。

最近やたらと突っかかってくるみたいに思うんだけど、気のせいだろうか?

でも、折角出来た親しい友達だから、あんまり逆らうわけにもいかないし、でも、偶には反論してもいいよね。
「だって昨日は朝方までかかってウィル様にお手紙書いていたのよ」
「ウィル様って、あんたの初恋の人でしょ。どこの誰か判ったの?」
ライラが聞いてくれるんだけど、その視線も何か冷たい。

「そうなの。会長の知り合いなんだって」
私が嬉しそうに言った。
「えっ、殿下の? でも最初は知らないって言われたんでしょ。生徒会のアスモ様も知らないっておっしゃっていたのに。本当なの?」
「昨日の適性検査の時に言われたの。あんまり公にできないから会わせられないけれど、手紙くらい届けてやるって」
「そうなんだ」
何か、ライラは疑わしそうに私を見るんだけど。

でも、会長が私に嘘をついても仕方がないと思う。


皆と昼食を食べた後、私はおそらくいるだろう会長を探しに図書館に行ったのだ。

私の予想通り、会長は相変わらず、あの場所で寝ていた。

「会長」
今度はキスさせるわけにはいかないので、私は会長を起こすために揺り動かしたのだ。

「あ、ニーナ」
そう言って、目を開けた会長は今度は抱きついてきたんだけど。

ええええ! 今度は私の名前を呼んで抱きついてきたんだけど……

「ちょっと会長!」
私が焦って、会長の腕から逃れようと暴れると

「あっ、ゴメンゴメン」
会長は素直に謝って放してくれた。

何か会長は王子殿下だし、やっぱり女と遊び慣れているのか? すぐに抱きついたりキスしたりしてくるし……

ライラの情報によると女性には嫌悪感を持っていて、距離をもっていつも接しているっていう話だったけれど、何か信じられなかった。
私にはやたらと近いんだけど……昨日もカーリナさんの腕を握っていたし。

「どうした、ニーナ嬢? 俺の貴重な睡眠時間を邪魔してくれて」
少し不機嫌そうに会長が言ってくれるんだけど、私が抱き枕にならなかったから?

「あっ、すみません。会長はやっぱり女たらしかなと思ってしまいました」
「何を言うんだ。俺はそんな訳無いだろう」
慌てて会長は否定するが、

「だって昨日は私をマイラさんだ間違ってキスしようとするし、魔法師団長の手をずうーーーーっと握っていたし」
「あのな。マイラは俺の幼馴染で、妹みたいなものだ」
「でも、すぐにキスするんでしょ」
「子供の時の話だ。昨日は子供の時の夢を見ていたんだ。そもそもここ一年間はほとんど会っていないぞ」
私の言葉に会長は言い訳するんだけど。

「ふーーーーん、そうなんですか?」
私は疑り深そうに会長を見た。

「事実だ。それにカリーナは転移持ちなので昨日握っていたのは逃亡防止のためだ。ニーナ嬢の事を聞くために捕まえておいてやったんだぞ」
恩着せがましく言ってくれるんだけど。

「えっ、そうなんですか? でも親しそうでしたよ」
「あいつは俺の10こも上なんだぞ」
呆れたように会長は言うが、

「えっ、そんなに歳上なんですか」
私は驚いた。もっと若いかと思ったのに。

「俺の魔術の師の一人でもある。そんなやつに恋愛感情はもたない」
会長は言い切るんだけど、あれだけきれいだと10歳なんて関係ないんじゃないかと思ってしまう。

「用はそれだけか?」
また寝ようとした会長に慌てて、
「違います。会長の事じゃなくて、ウィル様に渡して下さい」
私はそう言うと手紙を差し出したのだった。

「えっ、これは?」
「昨日、ウィル様に手紙渡して頂けるという話だったじゃないですか。昨日徹夜で書いてきたんです」
「ああ、そんな事も言ったな」
会長はやっと思い出してくれた。

「お願いしますよ、会長。絶対に渡して下さいね」
私は念押しした。

「判った。近日中に渡して置くよ」
「よろしくお願いします」
私はそう言うと帰ろうとした。

「もう行くのか、ニーナ嬢?」
「だってもうじき昼休みの終わりの予鈴がなりますよ。次の授業は遅れたくないんで」
私はそう言うと会長に手を振って別れようとしたのだ。

「もう、そんな時間か。俺も授業に行くよ」
そう言って会長が起き上がったんだけど、会長と一緒に歩くとどうしても目立ってしまって嫌なんだけど。
皆がジロジロ、私を見るし。見目麗しい会長に地味で大人しい私が歩いているので面白おかしく見てくれるのだ。

「ねえ、あの女は」
「あれが昨日第二王子殿下に水魔法ぶっかけた生意気水女よ」
「あああれがね」
「平民の分際で第一王子殿下と話ししているなんて本当に身の程知らずね」
「しっ、あんたも水魔法ぶっかけられるわよ」
とか言われているなんて思ってもいなかったのだ。


「ウィルのどんな所が好きなんだ?」
「嫌だ会長。別に好きというわけでは……」
会長のいきなりの質問に私は慌てた。

「でも、初恋の奴なんだろう」
「破落戸に襲われた時に助けてくれて、それがとても格好良かったんです」
そう、あの時のウィル様はとても凛々しかった。

「なんだ。吊り橋効果か」
「何ですか? 吊り橋効果って」
「落ちそうな吊り橋を渡る時に助けてもらったらその人に好感を持ちやすいという事さ」
「まあ、助けてもらいましたから、そう言う面はあると思いますが、さっそうと登場してとても素敵だったんです」
私は会長の意見をあっさり否定した。

「でも、ちょうどいいタイミングで出てくるって、それまで見てたってことだぞ。普通は襲われる前に助けてくれるのが良いやつなんじゃないのか」
「それはそうだと思いますけれど。助けてくれないよりはましです」
「まあな。昨日はちゃんと助けてやっだろう」
会長はいきなり自分の事に置き換えているんだけど……何か違う!

「えっ、でも、あの後レポート10枚書かされる羽目になったんですけど」
私は少しむっとして言うと

「あのな。教師相手に水魔法ぶっ放してレポート10枚で済めばよいだろう」
「まあ、そうですね。昨日はありがとうございました。じゃあ会長、私はこちらなんで」
私は手を振って会長と別れたのだ。

周りの女性陣から特に高位貴族の面々からギラギラした目で睨まれているなんて思ってもいなかったのだ。
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