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第二章 愛娘との幸せな生活を邪魔することは許しません

オードリーは残虐王の盾となりアルヴィンの剣で貫かれました

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キャメロンはディーンに間一髪転移させられて近衛のいる広場に叩きつけられた。

そして、今までキャメロンのいた王宮に大爆発が起こる。

王宮の半分が目の前で弾き飛んでいた。
それは城壁をたやすく貫通して森の遥か彼方まで被害を与えていた。

このままここにいたのでは殺される。
薄れいく視界の中でキャメロンは今まで感じたこともない恐怖を感じた。
しかし、体が何も言うことを効かなかった。

「直ちに陛下を安全な地下室にお連れしろ」
「医者を呼ぶんだ」
周りの兵士たちによってキャメロンは何も言う事も出来ずに、地下の執務室に連れて行かれた。

直ちに医師が現れて治療される。

顔の腫れも少しはひいた。

いつ、シャラが現れるかキャメロンは生きた心地がしなかった。

しかし、現場を見に行った兵士の話では生きている者は誰も残っていないとのことだった。
あのまま、撤退したというのか、キャメロンには信じられなかった。
直ちに王宮中を改めさせた。

しかし、依然としてシャラ等一行は見つからなかった。

キャメロンはいざという時の人質のためにオードリーを連れてこさせた。

「陛下。そのお顔はどうされたのですか」
顔を腫れたキャメロンを見てオードリーは聞いた。

「ほう、余を心配してくれるのか」
驚いてキャメロンが言った。

「当然ではありませんか。私はあなた様の側室なのですから」
「例え、アルヴィンが生きておってそう言えるのか」
「何をおっしゃっていらっしゃるのですか。あの方はあなたに処刑されたではないですか」
「余はそのアルヴィンらに襲撃されたのじゃ」
キャメロンの言葉にオードリーは固まった。やはり事実だったのかと。

「本当でございますか」
「たいして驚いておらんな」
オードリーの反応にキャメロンは意外に思った。

「城の皆が噂しておりましたから」
「で、その方は逃げなくてよいのか」
「どの面下げてアルヴイン様の所へ行けましょう。私はあの方の前であなたに抱かれてしまったのです。もう会わせる顔もありません」
キャメロンを見てオードリーは言った。

「余と生死をともにしてくれるというのか」
キャメロンがオードリーの手を握った。

「はいっ、地獄までお供します」
オードリーは握られた手を見て言った。

もう魂を悪魔に売り渡したのだ。お腹の子供の為とは言え、アルヴィンの前でキャメロンに抱かれたのだ。アルヴィンが許してくれるとは一顧だに思っていなかった。


その様子を呆然とアルヴィンは隙間から見ていた。オードリーは自分の事は少しくらい気にかけてくれていると思っていた。それが夢の中だけだったとアルヴィンにはよく判った。

無理やり、キャメロンに貞操を奪われたのも、反逆を許したのも自分等王族がしっかりしていなかったからだということも判っていた。

しかし、目の前で手を握られてイチャイチャされるのはアルヴィンには許せなかった。

もうアルヴィンにはどうなっても良かった。

怒りに任せて秘密の扉を蹴倒した。

その音に全員アルヴィンを見る。

「アルヴィン様」
オードリーは驚愕の視線をアルヴィンに向けた。
まさか、ここでアルヴィンに会うとは。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
アルヴィンは叫びつつ、魔道具の剣を取り出した。

「陛下を守れ」
近衛の騎士がキャメロンの前に立つ。

その騎士に向けてアルヴィンの剣からファイアーボールが飛び出した。

それは騎士を直撃する。

爆発が起こるとともに、それは凄まじい光を発していた。

全員目くらましで一瞬前が見えなくなる。

その隙に一気に距離を詰めてキャメロンまで迫る。

一気に剣を突き刺そうとした。

しかし、その前に手を広げたオードリーが重なる。

アルヴィンの剣がオードリーを貫いた。

「えっ」
アルヴィンは驚愕した。まさか、オードリーがキャメロンを庇って盾になるなんて。
自分がオードリーを刺し貫いたことを知った。

「オードリー」
思わずアルヴインは剣を取り落していた。魔道具の剣先が消えて無くなる。

倒れそうになるオードリーを抱き止めた。

「ごめんなさい。アルヴィン」
オードリーは虫の息で謝った。

「何故だ。何故俺に殺された」
もうアルヴインは周りは見えていなかった。

オードリーは軽く頭を振ると
「お願いアルヴィン。、ジェイク、ジェイクの事だけは」
オードリーは最後に必至にアルヴィンにすがりついた。

それがアルヴィンにとってどれだけ冷酷なことか判っていても最後に気になることは息子の事だった。

それだけ言うとオードリーは首をガクッと垂れた。

「オードリー!」
アルヴインの叫び声が部屋の中に響き渡った。

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本編クライマックス突入しました。

続きは明日更新です。
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