上 下
48 / 59
第二章 愛娘との幸せな生活を邪魔することは許しません

シャラは元第二王子を連れてマーマ王国を叩き潰すために転移しました

しおりを挟む
ノザレの地でいきなり城が爆炎魔術で火に包まれた時、チェレンチーは外で向かい来る兵士たちを相手に戦っていた。

「えっ、」
後ろの城がいきなり炎に包まれて、チェレンチーは驚いた。
シャラ達は大丈夫なんだろうか。もっともシャラは地獄の灼炎地獄の中に放り込まれてもケロリとして出て来た口だ。その身よりもその部下たちが大丈夫なのか心配になったが、いきなり異空間に引っ張り上げられた。

「えっえっーーーーーーー」
チェレンチーは強引に異空間に引っ張られた。転移したと気づいたのはいきなりいつものシャラ村の畑に真ん中に放り出された時だった。

シャラに連れられて転移していった約100名がひとまとめに放り投げられていた。

「ギャッ」
下になった人間が悲鳴を上げる。

「クローディア!」
シャラは彼らのことは放っておいて、慌てて出発の時にクローディアがいたエルンストの小屋に駆け込んだ。

そこには地面に倒れ込んだエルンストとステバンがいた。

「おいっ、クローディアはどうした」
シャラは二人に叫んだ。
「姉御すいません。連れて行かれました」
何とか目を開けたステバンが言う。


「どこに連れて行かれた」
シャラは気を失ったステバンからエルンストをみて聞いた。

「判りません」
エルンストは首を振った。

「マーマ王国のディーンですな」
後ろから声がかかった。振り返るとそこにはジャルカが立っていた。

「4人一度に転移させましたからな。あんな事ができるのはマーマ王国のディーンくらいしか居りません」

「ジャルカ、貴様がいながらクローディアを拐われるなんてなんという事だ」
シャラがきっとして言った。

「いやあ、気配に気づいて今来たところじゃが。私を恐れて逃げたようですな」
ジャルカは笑った。

「どこに転移した?」
「マーマ王国の王宮ですな」
「おのれ。もう許さん。城もろとも滅ぼしてくれるわ」
頭にきてシャラが言った。

「おい、野郎ども。マーマ王国に攻め込むぞ」
シャラは部屋を飛び出した。

「えっ、今からですか」
「当たり前だ。クローディアが拐われたんだぞ」
チェレンチーの呆れた言葉に、シャラは殴り倒しそうな勢いで言い切った。

「シャラ。この夜中に行くのか。今も100人を連れてノザレを往復してきたんだろう。さすがのお主でも100人を連れてマーマ王国まで行くのは厳しくないか。明日まで待ったほうが良かろう」
ジャルカも言う。

「ふんっ、そうだな。マーマ王国などしゃらくさい。貴様らの力を借りずとも私一人で叩き潰してやるわ」
シャラが言い切った。

「えっ姉御。それは流石に危険では」
シャラの魔力量の欠如を危惧してステバンが反対する。

転移は一人で行くのは大したことはないが、100人も連れて行くと大量の魔力量を使う。確かに100人連れて数百キロの往復は魔力量的にシャラにとっても中々大変だった。これから100人連れてマーマ王国まで行くのはなかなか難しいかもしれない。
シャラにとってマーマ王国まで一人でいって王宮を消滅させるのは容易い。しかし、クローデイアの安全を完全に守れるかと言うと万全ではない。手の者は多いほうが良い。

シャラは他人事のようにニヤニヤしているジャルカを見た。

そう言えば個奴はシャラの師匠であって、他の者達から大賢者とか言われていたな、と思いだしていた。当然魔力量も多いはずだ。マーマ王国のヘボ魔導師など敵ではないだろう。

シャラはジャルカを使うことにした。しかし、師匠も偏屈。頼んでもやってくれないかもしれない。

シャラはニヤリとした。

「そう言えばジャルカ師匠。随分お年を取られたようですな」
「な、何を申す。儂はまだ十二分に元気じゃぞ」
「ても、ステバンが聞いたそうだぞ。マーマ王国の魔導師が、『ジャルカは耄碌してたいしたことはないと』」
不敵な笑みでシャラは言った。

「な、何じゃと」
ジャルカはその言葉を聞いた瞬間に目に怒りの火が灯った。

「おのれーーーー。小童共が儂を老いぼれ扱いしたじゃと。どうしてくれよう・・・・」
ブツブツ言い始めるジャルカをシャラは無視して、

「アルヴィン。お前は私と来い」
片隅にいたアルヴィンに声をかけた。

「しかし、シャラ様。私はマーマ王国とはもう何の関係もありません」
アルヴィンが拒否する。

「何を言っている。私はマーマ王国の王宮は不案内だ。中を案内してくれるくらいしてくれても良いのではないか」
「それくらいなら」
不承不承にアルヴィンは頷いた。確かに王宮は広く、迷いやすかった。一刻も早く救出なら知っていたものがいたほうが良い。

「すまないな。アルヴィン。それにお前の問題も逃げているだけで良いのか」
シャラはアルヴィンの瞳を覗き込んだ。

アルヴィンはその青い瞳の深淵に吸い込まれそうになった。
マーマ王国の王宮には愛しかった妃のオードリーがいる。そして全てを奪ったキャメロンも。

「すまん。アルヴィン。お前の個人的なことに首を突っ込むつもりはなかったのだが、今回はマーマを叩き潰す。せめてその目で見てくれ。それが残された貴様の責任だろう」
シャラはアルヴィンの肩をたたいた。
「それに私が何も考えないでやるとマーマ王国自体を火の海に変えかね無いからな。その時は止めてくれ」
そう言うとシャラはアルヴィンから離れる。
確かにシャラは切れると何をするか判らなかった。

そして、シャラはチェレンチーに向いた。

「シャラの姉御。俺たちは」
「後のことはチェレンチーに任せる。まあ、3時間位休んでから来れば良かろう」
平然とシャラが言った。

「えっ、でも、ここからでは馬を飛ばしても数日はかかりますが」
チェレンチーは当然のことを言う。

「ジャルカに頼めば良かろう。お前らくらいは余裕で送ってくれる」
「な、何故儂がそのような事をせねばならんのじゃ」
シャラの言葉にジャルカが文句を言う。

「マーマのヘボ魔導師にバカにされたままで良いのか?」
シャラが笑って言った。

それをジャルカは睨みつけた。

「では、3時間後に王宮で」
シャラはアルヴィンの手を掴んで一同を見回した。

「行くぞ」
シャラはアルヴィンの死んだ魚のような目を見つめて言った。
アルヴィンは軽く頷く。

シャラはアルヴィンを連れて転移した。
愛しのクローデイアを追って。


**************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。

ついに最終決戦です。

拐われたクローディアの運命やいかに

明日の朝から更新です。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜

ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました 誠に申し訳ございません。 —————————————————   前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。 名前は山梨 花。 他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。 動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、 転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、 休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。 それは物心ついた時から生涯を終えるまで。 このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。 ————————————————— 最後まで読んでくださりありがとうございました!!  

処理中です...