5 / 59
第一章 娘が生贄にされるのを助けるために地獄から脱獄します
娘は約束とは違い苦労を重ねていました
しおりを挟む
ここからシャラの娘クローディア編です。
**********************************
そして、年月が流れた。何回も春が来て夏となり木の葉が真っ赤に染まり散っていった。
病弱な赤子だったクローディアも薬のおかげで病も治り、健康な少女になっていた。
伯爵家で大切にされているかと言うとそれは微妙だったが。
クローディアの一つ下には見た目は天使のような銀髪のアデラという妹が出来ていた。伯爵夫妻はその妹を溺愛していた。そして、当然のことながら甘やかし放題な妹はわがまま三昧に育っていた。妹には父も母も甘く、そのつけは全てクローディアに来ていた。
クローディアは18歳になっていた。魔導学園の最上級生の3年生だった。
午前中の授業が終わり、昼休みに入った。クローディアは作ってきたお弁当を一人で広げていた。魔導学園のクラスは2クラス。昔は貴族と平民は一緒だったみたいだが、今は別れていた。
クローディアは平民の実母が死ぬ前に義母に託していったそうで、
「お情けで養ってあげているの」
義母からは小言をもらうたびに言われていた。
皇太子の婚約者になったのは、前国王がクローディアの母の願いを叶えたからだそうで、
「何で平民風情の娘が我が子の婚約者なんだか」
王妃教育でも散々王妃からは嫌味を言われていた。
確かにクローディアから見ても平民の子供が皇太子の婚約者でいることは不思議なことだった。
前国王のご落胤という噂もあったが、それが事実ならばもう少し王宮や実家でのクローデイアに対する待遇が違うはずだった。クローディアは今は殆ど使用人のように扱われていた。
義母から疎まれ、王妃からも蔑まれていたクローディアに友人がいるわけもなく、貴族社会の中では孤立していた。
「クロウ、どうしたんだい。今日も一人なのか」
そのクローディアに声をかけてくれるのは皇太子のアーサーだけだった。
「他の令嬢たちとは仲良くなれないのかい。何なら私から声をかけようか」
アーサーだけはクローディアを決して邪険にはしなかった。一人ぼっちでいるクローディアのことを本当に心配して令嬢たちにも仲良くしてくれるように声を掛けるのだが、どうしても逆効果になるみたいで、クローディアの方から止めてもらっていた。
「ありがとうございます。皇太子殿下。しかし、そのようなお気遣いは無用に願います」
クローディアは頭を下げた。
「それよりも、皇太子殿下も今は色々と大変なのではありませんか」
クローディアのほうがアーサーを気遣った。
クローディアの住んでいるダレル王国は小さな国だった。王都ダレルを中心に300年の歴史があっが、近年は隣の国マーマ王国の伸長が激しく後塵を拝していた。
マーマ王国の前国王とダレルの前国王は仲が良かったので、そうでもなかったが、双方が代替わりしてからはそれが顕著になっていた。
マーマ王国の新国王は強力な軍の力をして、各地に侵略を行おうとししていた。
新国王はまず、現皇太子アーサーにマーマ王国の人質になれと脅しをかけてきたのだ。マーマ王国は強大とは言え、300年の歴史あるダレル王国が飲める話ではなかった。
この話を蹴るとマーマ王国との関係が更に悪化し、3日前にマーマ王国から更なる使者が来ていた。無理難題を言ってきたに決まっているのだ。クローディアの身分では何も判らなかったが、皇太子が今大変な立場にいるのは考えるまもなく判った。
マーマ王国から王女が嫁入りしてくる可能性もあり、そうなればクローディアとの婚約も無くなるだろう。そうなった時は仕方がないとクローディアは半ば諦めていた。
「ありがとう。クロウ。でも大丈夫だよ。君たちにまで心配をかけて申し訳ないね。別に私が人質に行ってそれで収まるならばそれで良いのだが、なかなかそう言うわけにも行かないみたいで・・・・いや、すまん。今の発言は忘れてくれ」
皇太子が首を振って言った。皇太子は本当に疲れているみたいだった。
「アーサー様」
明後日の方角からとても脳天気な声が響いてきた。
「アデラ」
走ってきた令嬢はクローディアの妹だった。
「アーサー様、探してもいらっしゃらないと思ったらお姉さまに捕まっていらっしゃったのね」
アデラはクローディアに見せつけるようにアーサーに腕を絡めた。
「何を言っているんだ。君の姉は私の婚約者だ。私が話していても問題なかろう」
「それよりもアーサー様。もうお腹がぺこぺこなんです。早く食堂に行かないと食事が無くなってしまいますわ。急ぎましょう」
アデラは話題を強引に変えていた。
「本当にアデラは食い意地が貼っているんだな」
「まあ、アーサー様、酷い」
そう言いながらアデラはアーサーを引っ張っていった。
アーサーはクローディアに手を降って引っ張られていった。
それを見てクローディアは溜息をついた。いつもアデラはこうだった。
「お姉さまがアーサー様の婚約者だなんて酷い!」
アデラには小さい時に散々ごねられたのだった。
しかし、アーサーとの婚約はアーサーとクローデイアが生まれた時から決まっていることだった。前国王とクローディアの実の母の間で結ばれた婚約で義母や王妃ではどうしようもなかった。
前国王が健在の時は母も王妃も国王を気にしてここまで露骨にクローディアに当たってこなかった。
最近だった。二人がきつく当たるようになったのは。それを見て他の貴族令嬢たちもクローディアとの距離をおくようになったのだ。
もうクローディアの味方は律儀な皇太子くらいだった。
クローディアは本当にアーサーのことが好きだった。
たまにしか会えなかったが、会えば優しかった。
でもこの関係もいずれはなくなるかも知れない。
クローディアは不安だった。
**************************************************
シャラが知ったら確実に化けてくるレベルです。
**********************************
そして、年月が流れた。何回も春が来て夏となり木の葉が真っ赤に染まり散っていった。
病弱な赤子だったクローディアも薬のおかげで病も治り、健康な少女になっていた。
伯爵家で大切にされているかと言うとそれは微妙だったが。
クローディアの一つ下には見た目は天使のような銀髪のアデラという妹が出来ていた。伯爵夫妻はその妹を溺愛していた。そして、当然のことながら甘やかし放題な妹はわがまま三昧に育っていた。妹には父も母も甘く、そのつけは全てクローディアに来ていた。
クローディアは18歳になっていた。魔導学園の最上級生の3年生だった。
午前中の授業が終わり、昼休みに入った。クローディアは作ってきたお弁当を一人で広げていた。魔導学園のクラスは2クラス。昔は貴族と平民は一緒だったみたいだが、今は別れていた。
クローディアは平民の実母が死ぬ前に義母に託していったそうで、
「お情けで養ってあげているの」
義母からは小言をもらうたびに言われていた。
皇太子の婚約者になったのは、前国王がクローディアの母の願いを叶えたからだそうで、
「何で平民風情の娘が我が子の婚約者なんだか」
王妃教育でも散々王妃からは嫌味を言われていた。
確かにクローディアから見ても平民の子供が皇太子の婚約者でいることは不思議なことだった。
前国王のご落胤という噂もあったが、それが事実ならばもう少し王宮や実家でのクローデイアに対する待遇が違うはずだった。クローディアは今は殆ど使用人のように扱われていた。
義母から疎まれ、王妃からも蔑まれていたクローディアに友人がいるわけもなく、貴族社会の中では孤立していた。
「クロウ、どうしたんだい。今日も一人なのか」
そのクローディアに声をかけてくれるのは皇太子のアーサーだけだった。
「他の令嬢たちとは仲良くなれないのかい。何なら私から声をかけようか」
アーサーだけはクローディアを決して邪険にはしなかった。一人ぼっちでいるクローディアのことを本当に心配して令嬢たちにも仲良くしてくれるように声を掛けるのだが、どうしても逆効果になるみたいで、クローディアの方から止めてもらっていた。
「ありがとうございます。皇太子殿下。しかし、そのようなお気遣いは無用に願います」
クローディアは頭を下げた。
「それよりも、皇太子殿下も今は色々と大変なのではありませんか」
クローディアのほうがアーサーを気遣った。
クローディアの住んでいるダレル王国は小さな国だった。王都ダレルを中心に300年の歴史があっが、近年は隣の国マーマ王国の伸長が激しく後塵を拝していた。
マーマ王国の前国王とダレルの前国王は仲が良かったので、そうでもなかったが、双方が代替わりしてからはそれが顕著になっていた。
マーマ王国の新国王は強力な軍の力をして、各地に侵略を行おうとししていた。
新国王はまず、現皇太子アーサーにマーマ王国の人質になれと脅しをかけてきたのだ。マーマ王国は強大とは言え、300年の歴史あるダレル王国が飲める話ではなかった。
この話を蹴るとマーマ王国との関係が更に悪化し、3日前にマーマ王国から更なる使者が来ていた。無理難題を言ってきたに決まっているのだ。クローディアの身分では何も判らなかったが、皇太子が今大変な立場にいるのは考えるまもなく判った。
マーマ王国から王女が嫁入りしてくる可能性もあり、そうなればクローディアとの婚約も無くなるだろう。そうなった時は仕方がないとクローディアは半ば諦めていた。
「ありがとう。クロウ。でも大丈夫だよ。君たちにまで心配をかけて申し訳ないね。別に私が人質に行ってそれで収まるならばそれで良いのだが、なかなかそう言うわけにも行かないみたいで・・・・いや、すまん。今の発言は忘れてくれ」
皇太子が首を振って言った。皇太子は本当に疲れているみたいだった。
「アーサー様」
明後日の方角からとても脳天気な声が響いてきた。
「アデラ」
走ってきた令嬢はクローディアの妹だった。
「アーサー様、探してもいらっしゃらないと思ったらお姉さまに捕まっていらっしゃったのね」
アデラはクローディアに見せつけるようにアーサーに腕を絡めた。
「何を言っているんだ。君の姉は私の婚約者だ。私が話していても問題なかろう」
「それよりもアーサー様。もうお腹がぺこぺこなんです。早く食堂に行かないと食事が無くなってしまいますわ。急ぎましょう」
アデラは話題を強引に変えていた。
「本当にアデラは食い意地が貼っているんだな」
「まあ、アーサー様、酷い」
そう言いながらアデラはアーサーを引っ張っていった。
アーサーはクローディアに手を降って引っ張られていった。
それを見てクローディアは溜息をついた。いつもアデラはこうだった。
「お姉さまがアーサー様の婚約者だなんて酷い!」
アデラには小さい時に散々ごねられたのだった。
しかし、アーサーとの婚約はアーサーとクローデイアが生まれた時から決まっていることだった。前国王とクローディアの実の母の間で結ばれた婚約で義母や王妃ではどうしようもなかった。
前国王が健在の時は母も王妃も国王を気にしてここまで露骨にクローディアに当たってこなかった。
最近だった。二人がきつく当たるようになったのは。それを見て他の貴族令嬢たちもクローディアとの距離をおくようになったのだ。
もうクローディアの味方は律儀な皇太子くらいだった。
クローディアは本当にアーサーのことが好きだった。
たまにしか会えなかったが、会えば優しかった。
でもこの関係もいずれはなくなるかも知れない。
クローディアは不安だった。
**************************************************
シャラが知ったら確実に化けてくるレベルです。
10
お気に入りに追加
1,832
あなたにおすすめの小説
赤い死神の大侵攻作戦で王国を蹂躙します…しかし、その前に無敵の戦神が立ち塞がりました
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
ファンタジー
かつて地上に大帝国を築き上げた女帝シャラザールは、魔王を退治した功で神の一員として天界に招かれていた。しかし、曲った事の大嫌いな戦神は酷いことをする神々を次々に地上に叩き落とし、ついに全能神ゼウスの怒りを買い地上に落とされる。一方ノルディン帝国の若き英雄は恋人を殺されてその国一つ滅ぼして赤い死神と恐れられていた。地上に叩き落されたゼウスの子供らがシャラザールのいるマーマレードの地に侵攻を始める時、シャラザールは自らの子孫のクリスティーナに憑依しこれに対抗しようとする。
「邪な心を持つやつは許さん!」シャラザールの怒りが炸裂する時、神も仏も弾き飛ばされます。
「娘の命を救うために生贄として殺されました・・・でも、娘が蔑ろにされたら地獄からでも参上します」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/474495563
の千年後のお話です。
「皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!」https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/129494952の3年前の物語です。この話が最初なのでこの話から読み進めていけるはずです。
今回も底抜けのハッピーエンドを狙います。
無敵の戦神シャラザールの前に悪は栄えません!
小説家になろう、カクヨムでも掲載中
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
「神様、助けて!」現れた無敵の戦神は実は可憐な少女でした
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
ファンタジー
白人の大軍の前に信頼していた宰相に裏切られた王女は十字架に磔にされました。「神様、助けて!」王女がまさに生贄にされようとした時、大海を越えて最強の戦神が来臨しました。「余の前に降伏せよ」絶対的な破壊神の登場に、大軍、ホワイテア帝国軍はどう出るのか。
そして、凄まじい閃光の跡に倒れていたのは・・・・。
一方「人種差別って食えるのか?」全く気にしていない暴風王女と赤い死神は敵国ホワイテア帝国に歓待されました。しかし、
見た目は可憐な少女だけれど実は戦神が憑依しているボフミエ魔導国筆頭魔導師のクリスに自称婚約者のオーウェンはじめボフミエ魔導国の問題児たちが新大陸を席巻し、人種差別も身分差も全て地平の彼方に弾き飛ばします。
「皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/129494952
のサイドストーリーですが、この話だけでも楽しめます。
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる