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公爵令嬢を剣の勝負でふっとばしました

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結局、フェルの胸で泣くだけ泣いたら気分がスッキリした。

うーん、今までの疲れが溜まっていたのだろうか?

すべての感情が涙で流れたみたいだ。

まあ、ベルンハルトとは18年間婚約していたわけだから、それを解消されたり、戦争したりと色々気苦労が多かったのだろう。私が考えていた以上に色々疲れが溜まっていたらしい。

頑張った私。と自画自賛してみる。

その私の頭をポンポンとフェルがなでてくれた。

うーん、なんか違うように思うんだけど、でも少し嬉しかったのは内緒だ。



その後、やたらとフェルが過保護になってしまった。

甲斐甲斐しく私の面倒を見てくれるのだ。

いや鬱陶しい・・・・と思うと同時に構ってもらって嬉しいという変な感覚もあったことは事実だ。

いや、私の面倒よりも自国の公爵令嬢の面倒を見ろよ、と少しは思ったが、フェルの胸で泣いた手前、きつく言うことも出来なかった。


で、トイレの中までまで付いて来ようとするので流石にそれは叩き出した。

「はっ」
何なのだ。フェルの過保護さは。更に拍車がかかっている。
でも、泣いてしまったのは私だ。悪いのは私なのだ。私は自分の感情がまだ理解できていなかった。


「ふう」
ため息をついてトイレの個室を出た私の前に、その女は仁王立ちしていた。

「あんた、一体、フェルの何なのよ!」
公爵令嬢が怒髪天で立っていたのだ。

うーん、怖い。

とぶりっ子しても仕方がない。

「えっ、幼なじみですけど」
私は自慢していった。

「何言っているのよ。私のほうが幼なじみよ」
公爵令嬢が怒って言っている。

「私たちはいとこなんだから」
「ふんっ、それ言うなら、私のお母様とフェルがいとこだからそんなに変わらないでしょ」
「いとこの子供なんだから、血の繋がりは私より少ないでしょ」
公爵令嬢が自慢していった。それが何なんだろうと思わないでもなかったが、単純な私は言い返していた、

「そんなの殆ど変わらないでしょ」
「何言っているのよ。血の繋がりは大切よ」
「ふーん」
私は馬鹿にしたように令嬢を見た。

「何よ。たかだか小国の辺境伯の令嬢が帝国皇子の横に立てると本気で思っているの? 帝国一の公爵家の令嬢の私のほうが相応しいわ」
「辺境伯辺境伯って煩いわね。我が家は戦神エルザベート様の直系なのよ。ポットでの帝国の一公爵家につべこべ言われる筋合いはないわ」
「何ですって。我が家は元々皇帝陛下から別れているのよ。皇帝陛下を侮辱するつもり」
「あのう。それ言うと我が家のお母様は現皇帝陛下の姪なんですけど。私のほうが皇帝陛下に対して血の繋が濃いのではなくて」
「何ですって小国の陪臣のくせに」
「ふんっ。今は我が家が王家です。小さくても王家は王家。陪臣と言うならあなたのほうが帝国の陪臣ではなくて」
「うーーーーーー。出来損ないの姫のくせに」
この女、嫌なことを言ってくれる。

あのう、こいつここが私の城、いや、領主はお父さまだけど、我が家だってことわかっているんだろうか。

「ふんっ。出来損ない出来損ないって煩いわね。たしかに皇帝陛下にも『その方が出来損ないの姫か』って笑って言われたけれど」
帝国に遊びにいった時にそう言われた。でも、その後帝国の近衛を2、3人訓練で地面にひれ伏させたんだけど。・・・・。

「そうでしょ。陛下も認められるくらいの出来損ないなんでしょ。それが帝国の公爵令嬢の私にかなうわけないじゃない」
公爵令嬢はニコッと悪いことを思いついたように悪魔の笑みを浮かべた。

「わかったわ。そこのあなた。フェルの横に立つのをかけて私と勝負しなさい」
「はあああ、なんであんたと勝負しないといけないのよ」
私はぎょっとしして言った。

刺繍とか、礼儀作法とかお料理とか、令嬢の勝負なんて私が勝てるわけもない。そう、出来損ないとは女の子が出来ることが殆ど出来ないという意味でもあった。主にビアンカらにはそう言う面で呼ばれている。

昔お兄様に馬の刺繍を贈ったら、イモムシの刺繍なんて珍しいなって言われたし、料理は焼くだけなら何とかなったが、シチューを作ったら真っ黒にしてしまったのだ。
それからは行軍中の食事は焼くだけ担当だ。それも必ず、隣にもう一人いる。今回はフェルがいたけど・・・・。うーんね男より料理が酷いってどういうことと思わずにはいられなかった。
それにこの令嬢はどう見てもまともな令嬢だ。

令嬢勝負しても絶対に勝てない。

「ふんっ。ああら。あなた。武の名門なんでしょ。剣で勝負しなさい」
「えっ」
私はぽかんとした。あなた勝てる勝負しないわけ?

「私も帝国の淑女として剣の嗜みはあるの。剣で勝負しましょう」
女は私を指さしていった。

いや、それは良いけれど・・・・。こいつ本当に良いんだろうか。私が出来損ないと言われるのは、剣ではお兄様に到底及ばないからでもあるんだけど。お兄様除いて、私に剣で勝てるのは数えるほどしかいないんですけど・・・・知っているの?

私は戸惑ったが、女は頑ななだった。



訓練場を譲って貰って私たちは対峙していた。

「いや、ヘレナ。エレと勝負するのはまずいって」
フェルが私の横に立ちながら、必死に言っている。そのくせなんでこいつ、私の横にいるわけ。公爵令嬢の横で言えばいいじゃない。それに何故か私の手を握っているし。

「煩いですわ。フェル。今こそ、あなたの目を覚ましてあげますわ」
フェルが私の手を握っていることが更に令嬢がヒートアップしている。

「そこの出来損ない。勝負よ」
模擬剣を構えながら令嬢は言った。

その構えは様になっていた。ある程度剣の覚えはあるようだ。

私も剣を構えた。


「姫様、お手柔らかにね。国際問題にならないようにしてくださいよ」
何故か100メートルくらい離れてヘルマンが叫んでいる。
私達に訓練場を譲った男たちは私から100メートルくらい離れている。公爵家の男の護衛もそれにならっている。どういうことなの?

何かどいつもこいつもムカつくんだけど。

「行くわよ」
令嬢は剣を構えて踏み込んできた。

その剣を交わすと下から斬り上げていた。

次の瞬間、令嬢は私の剣で弾き飛ばされていた。

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