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帝国皇子に抱き締められました

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「フェルの馬鹿!」
「エル!」
私は大きな声で叫ぶとフェルに呼び掛けられたのを無視して駆け出していた。私は何故そんなことをしたか判っていなかった。

ただ、闇雲に駆けた。どこをどう駆けたか良く判っていなかった。気付いたら城の城壁の上にいた。

なんか帝国の公爵令嬢の前でその皇子の頬をひっぱたくなんてとんでもないことをやってしまった。下手したら国際問題だ。本来ならフェルが誰と仲良くしようと関係ないはずなのに・・・・。

なんか私の中で嫌だったのだ。

何でなんだろう?

私から、フェルに対してどの女の子を紹介してほしいのって聞いたくらいなのに・・・・、実際フェルが女の子と仲良くなっているのを見ると、それを嫌がるなんてどう言うことなんだろう?

なんか涙まで流れてきた。

私は自分の心が良く判らなくて、もうどうしようもなかった。

フェルは帝国の第五皇子で、お母様の親戚。実際はお母様は先々代の孫なのでいとこになるのだが、お母様のおじにあたる皇帝陛下がお母様と少ししか変わらないので、、実際は違うんだけどフェルはお母様のことを叔母様と呼んでいる。まあ、私にとってはフェルは親戚のお兄ちゃんというか、遊び相手だった。小さい時からの。
私は生まれた時からベルンハイトが婚約者だったから、それ以外は恋人ではなくて皆、悪友だった。
最も出来損ないの私にはほとんど友達はいなかったが・・・・。
唯一喧嘩できるのは、いやわがまま言えるはフェルだったのだ。
小さい時からフェルは私のわがままに色々付き合ってくれた。
まあ、フェルの冒険とかいう訳の判らないものにもよく付合わされたが・・・・

そう、フェルは私にとってとても大切な友人だったのだ。

その友人に親しい異性の友達が出来たので、嫉妬したのだろうか?

でも、なんか違う気がする。

私は城壁の陰に突っ伏して泣いていた。

「エルっ、どうしたんだ。いきなり俺を引っ叩いていなくなるなんて、本当に探したぞ」
そこへフェルが来たのだ。

ええええ、私はこの時にフェルに来てほしくなかった。

後ろには公爵の娘は連れていないみたいだった。

「一体どうしたんだ。いきなり走っていなくなるから、必死に探したんだぞ」
フェルが後ろから私の肩に手を置いてくれた。

それに驚いたのか、涙が更に止まらなくなった・・・・

「えっ、ちょっと、しばかれたのは俺なのに、なんで叩いたエルが泣いているんだよ」
フェルは混乱していた。

そんな事言ったって、私も判んない。

私は泣きながら首を振るしか無かった。

そんな私を後ろから戸惑ったようにフェルが抱きしめてくれた。

私は振り向いてフェルの胸で思いっきり泣いた。
フェルの胸は鍛え上げているみたいで、硬かった。いつの間にかフェルは胸板がついていたのだ。昔はヤワだったのに。

フェルに泣かされては、よくフェルの胸で泣いて困らせてやったことを思い出していた。

「どうしたんだ。エル?」
泣き止みそうになる度にフェルに聞かれたが、答えようがなかった。
自分自身もよく判らないのだから。
そして、その度にまた泣き出すのだ。

なんかどうしようもない。本当に。自分の嫌いな泣き虫令嬢だった。

でも、フェルの温かい胸の中で泣くのは落ち着けた。
結局泣き止みそうになるとフェルに聞かれるので、その度に泣き出して、結局、フェルの胸の中で1時間位意味もなく泣いてフェルを困らせたのだった。
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