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王都目前で無血開城工作を始めました

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それからは王都の道には抵抗する大きな兵力は存在しなかった。

ホフマン子爵軍がどうなったか、噂は凄まじい勢いで広がったようだ。

男どもは私を見ると大慌てで逃げ出すか、恐慌を来して降参してくるかどちらかだった。

我軍は破竹の勢いだった。

「さすが不能姫様のお力は素晴らしい」
第三騎士団長が余計なことを言うので剣柄で叩いてやったら、

「姫様、私が不能になったら、責任取ってくれるのですか」
と叫びやがって、何故がフェルと一触即発の状態になっていた。

最短距離がわが西街道なので、当然と言えば当然なのだが、我軍が一番早くに王都にたどり着いてしまったのだ。

王都の前10キロで我軍は布陣していた。

「どうしますか。一気に王都を占拠しますか?」
「うーん、悩むところなのよね。勝手に占拠しちゃったら、お兄様とお姉様に何言われることやら」
「しかし、あの二人にやらせたら、廃墟になってしまうかもしれませんよ」
ヘルマンの言うことも最もだった。
でも、お兄様とお姉様の恨みも怖い。あと10年くらい延々と言われそうだ。

「とりあえず、王都に工作を仕掛けて宜しいですか」
補佐官のウンガーが聞いてきた。

「えっ、また何か酷いことするの?」
こいつのやることはどぎついのだ。私の不能姫の噂をまいたのも絶対にこいつだ。

「いやあ、一番いいのは無血開城ですから」
ウンガーは笑って言った。

「私たちは見てればいいの?」
私は胡散臭そうに

「はい。姫様はそうして頂ければ、後はこちらで手配します」
嬉々としてウンガーが言った。

「まあ、良いわ。王都が火の海になるのも嫌だし」
私はウンガーに任せることにした。お兄様とお姉様にもウンガーのせいにしよう。
私は良いことを思いついた。

「あっ、そうだ、姫様。毎日1回、宝剣を王都に向かって振って頂けると有り難いんですが」
ウンガーが言ってきた。

「えええ!、また建物が壊れるじゃない」
「それで済めば安いものではないですか。王都が火の海になるよりは」
ヘルマンが当然のように言う。

うーん、そうかな。

仕方がない。

私は早速王都に向けて剣を構えた。

「ちょ、ちょっと姫様」
「僕らを巻き込まないでくださいよ」
ヘルマンらが慌てて私の前から消える。

そして、剣を振ろうとしてふと考えた。

何も考えずに振っても素振りなだけではないか・・・・・

私は昔を思い出すことにした。
王都ではいろんな奴に虐められもしたし、嫌味も言われた。

中でも一番ムカついたのは・・・・・

王妃に、
「あーら、出ている人は出ているのに、無い人はないのね」
と、アマーリエと並べて呼ばれたお茶会で、言われたことを思い出した。
どの道こうなるのならば、あの場でお茶を王妃にぶっかけてやればよかった。
出ているアマーリエとともに。そう思うと怒りに火がついた。

「おのれ、若作りババアめ!」
いやらしい笑いをしていた王妃を思い出しながら、私は思いっきり剣を振ったのだった。

グワーン!

凄まじい素振り音とともに光が王都目指して飛んでいった。

そして、少し経ってから凄まじい爆発音が王都からしたのだった。

それを兵たちは唖然と見ていた。

「姫様に恨みを買うなんて、なんて恐ろしいやつなんだ」
ヘルマンがボソリと言った。

「大丈夫、この軍の中ではあんたが一番怒りかっているから」
「えっ、姫様、冗談ですよね」
そう言って寄ってくるヘルマンが鬱陶しかった。


「おい、エル、王都へのビラ見たんだけどこれで本当に良かったのか」
その日の午後、フェルに言われて私は初めてビラを見て、口をあんぐり開けて固まってしまった。

「王都、いや格下げで領都に残っている奴らへ
余は戦神エルザベートの化身、エルヴィーラ・ ハインツェルである。
余がこの地にいる間に受けた屈辱の数々、許すまじと思っておる。
余に屈辱を与えた元王太子とその愛人は余の剣の前に廃人と化した。
余に逆らったバルチュ侯爵とホフマン子爵らは不能にしてやったのは皆が知っている通りだ。
速やかにこの地を明け渡すなら良し。
逆らうならば男は全て余の剣の前に不能と化すであろう」

私はこれを見てプッツン切れた。何だこれは!
これでは厄災姫改、不能姫になるのが確定ではないか。

「ウンガー!、ウンガーはどこに行った」
私は思わず叫んでいた。

「ウンガー様ならビラを持って王都に行かれましたが」
兵士の一人が教えてくれた。

「もう、許さない。大ボケウンガー野郎!」
私はそう叫ぶと宝剣を振り抜いていた。

「アチャーーー、ついにウンガーも姫様のお怒りを勝ってしまいましたな」
ヘルマンが笑って言った。
私がギロリと睨むと慌てて黙り込む。

「うーん、なによこれ、どんどん大人しい、静かな姫のイメージが崩れていくんだけど・・・・」
「いや、エル、そんなイメージ元々無いから」
フェルに言われて私はフェルも睨みつけていた。

「どういうことよ。不能姫なんてあだ名が付いたら私お嫁に行けないじゃない」
「大丈夫。そうなったら俺が貰ってあげるから」
「えっ?」
私が話すと同時にそこに遅延で王都から凄まじい爆発音がして、フェルの言葉を聞こえなくしていたのだ。

「何か言った、フェル」
「いや、何も」
私は不機嫌な顔でフェルを見た。絶対にこいつも他の奴らと同じ事を言ったに違いない、と思ってしまったのだった。

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