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第三部 隣国潜伏編 母の故国で対決します
エピローグ 本物の王女となってしまいました
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「ああああ! 何でこうなった!」
私は心の中で頭を抱えていた。
私は私のせいで、いや違う、ブルーノのせいで焼け野原になった領主館で、皆に囲まれていた。
いや、もっと正確に言うと
土盛りされて少し高くなった所に、この領地にある一番立派な椅子が据えられて、その上に座らされていたのだ。
その私もどこから手に入れたのか、とても立派できれいなドレスで着飾らせられていた。
そして、私の前には頭を垂れた千人を超える人がいたのだ。
その先頭にクリスティーン様がいるんだけれど・・・・
元気になって私はクリスティーン様に助けられたのを知った。
私がお礼を言うと
「なんの、アン、これからだ。アンの親の仇は必ず取ってやるからな」
「えっ?」
私はクリスティーン様が言う意味がよく判らなかった。
「私はここ数ヶ月、アンの親の仇を討つために、賢明に努力してきたのだ」
「?」
そんなことは私は何も知らなかった。私が学園でのうのうと生活している時もクリスティーン様はなんと訓練と称して竜を討伐されていらしたらしい。
いや、しかし、そもそもクリスティーン様は私と何の関係もないのだ。エルダやイングリッドの母親のように私の母と親友だったという話もない。
クリスティーン様が私のためにそこまでして頂く理由等無いのだ。
私が遠回しにその事を話すと
「何を言うのだ。アン。お前は私の可愛い後輩ではないか。後輩が命を狙われているのに、私がそれを助けぬ理由など無いわ」
そう言うとクリスティーン様は豪快に笑われたんだけど・・・・
「いやいやいやいや、それ、命をかける理由にはなりませんよね」
「何を言うのだ。私は気に入らん奴はどうでも良いが、気に入った奴は嫌がられてもとことん構ってやるのだ。それに、その方の事はその方の母にも夢の中で頼まれたからな」
ええええ! お母様、そんなことまでしたの?
「今の絶対に作りましたよね。また、・・・・痛い」
その後ろでクリスティーン様の補佐官のベーン様がぼそっと呟かれた瞬間、クリスティーン様がベーン様の頭を叩かれて、ベーン様が頭を押さえてうずくまられた。
馬鹿力とか脳筋とかベーン様がブツブツつぶやいておられる。
「アンが命をいつまでも狙われるならば、その狙っている奴を倒すしかなかろう。そうなると、正統な王位を持つアンを女王に据えるしかなかろうが」
そう言ってクリスティーン様は大笑いされたのだが・・・・
「絶対に面白いから自分がしたいだけですよね」
そうブツブツ呟くベーン様の声が真実の声に聞こえたんだけど。
振り返ろうとしたクリスティーン様の傍からベーン様が逃げる速さが凄まじかった。
そして、私があれよあれよとただ呆然としている中で、私の王女就任が決まったのだ。
本来ならば女王になれと周りから散々言われたのを、何とか国が小さいから王女で良いと、無理やり周りをねじ伏せたのだ。
だって領土と言っても、ヴァンドネル伯爵領しか無いのだから。
王国の組織作りは何故かエルダとイングリッドと一緒に来たイェルド様らが取り仕切ってくれた。
この兄妹二人共出てきて、オースティンの公爵家と侯爵家は良いのか、と思わないでもなかったが、自分の事が急すぎて他人のことなど思いやる余裕もなかった。
そして、今、私は着飾って玉座、いや王女席に座って皆に跪かれていた。
私の後ろには何故か私の騎士になったフィル様とメルケルが帯剣して控えていた。
この新しい国の大魔術師に就任したガーブリエル様がイェルド様から王冠、いや違う、王女のティアラを受け取って、私の頭に乗せてくれた。
私はただただ呆然とそこに座っていた。
「ここに、新生アンネローゼ王国の王女にアンネローゼ様が就任された」
厳かにイェルド様が宣言された。
本来はここで皆が再度頭を下げると聞いていたのだが、
「アンネローゼ王女殿下バンザイ」
真っ先に立上ったクリスティーン様が叫ばれた。
「バンザーーーイ」
「アンネローゼ様バンザーーーイ」
そこからはもうなし崩し的に万歳三唱になってしまったんだけど・・・・
イェルド様も呆れモードだった。
こうして、決意するまもなく、私は王女になってしまった。
館の傍にいた領民からもバンザイの声が聞こえる。
その日は、そのまま無礼講でメリーがどこからか手に入れた酒を皆に配って、大宴会になってしまったのだ。
この先にある困難に私は目眩がしたが、
「アン、飲んでいるか?」
飲めない酒を無理やり飲まされて、その後の記憶はおぼろげだ。
フィル様が必至に私を守ってくれようとしていたが、いつの間にかフィル様も酒で潰されていた。
スカンディーナにまもなく寒い冬が来ようとしている時だった。
*******************************************************
ここまで読んで頂いて有難うございました
続きはしばらく休んだ後で始めさせていただきます。
お気に入り登録、感想等頂けたら幸いです
私は心の中で頭を抱えていた。
私は私のせいで、いや違う、ブルーノのせいで焼け野原になった領主館で、皆に囲まれていた。
いや、もっと正確に言うと
土盛りされて少し高くなった所に、この領地にある一番立派な椅子が据えられて、その上に座らされていたのだ。
その私もどこから手に入れたのか、とても立派できれいなドレスで着飾らせられていた。
そして、私の前には頭を垂れた千人を超える人がいたのだ。
その先頭にクリスティーン様がいるんだけれど・・・・
元気になって私はクリスティーン様に助けられたのを知った。
私がお礼を言うと
「なんの、アン、これからだ。アンの親の仇は必ず取ってやるからな」
「えっ?」
私はクリスティーン様が言う意味がよく判らなかった。
「私はここ数ヶ月、アンの親の仇を討つために、賢明に努力してきたのだ」
「?」
そんなことは私は何も知らなかった。私が学園でのうのうと生活している時もクリスティーン様はなんと訓練と称して竜を討伐されていらしたらしい。
いや、しかし、そもそもクリスティーン様は私と何の関係もないのだ。エルダやイングリッドの母親のように私の母と親友だったという話もない。
クリスティーン様が私のためにそこまでして頂く理由等無いのだ。
私が遠回しにその事を話すと
「何を言うのだ。アン。お前は私の可愛い後輩ではないか。後輩が命を狙われているのに、私がそれを助けぬ理由など無いわ」
そう言うとクリスティーン様は豪快に笑われたんだけど・・・・
「いやいやいやいや、それ、命をかける理由にはなりませんよね」
「何を言うのだ。私は気に入らん奴はどうでも良いが、気に入った奴は嫌がられてもとことん構ってやるのだ。それに、その方の事はその方の母にも夢の中で頼まれたからな」
ええええ! お母様、そんなことまでしたの?
「今の絶対に作りましたよね。また、・・・・痛い」
その後ろでクリスティーン様の補佐官のベーン様がぼそっと呟かれた瞬間、クリスティーン様がベーン様の頭を叩かれて、ベーン様が頭を押さえてうずくまられた。
馬鹿力とか脳筋とかベーン様がブツブツつぶやいておられる。
「アンが命をいつまでも狙われるならば、その狙っている奴を倒すしかなかろう。そうなると、正統な王位を持つアンを女王に据えるしかなかろうが」
そう言ってクリスティーン様は大笑いされたのだが・・・・
「絶対に面白いから自分がしたいだけですよね」
そうブツブツ呟くベーン様の声が真実の声に聞こえたんだけど。
振り返ろうとしたクリスティーン様の傍からベーン様が逃げる速さが凄まじかった。
そして、私があれよあれよとただ呆然としている中で、私の王女就任が決まったのだ。
本来ならば女王になれと周りから散々言われたのを、何とか国が小さいから王女で良いと、無理やり周りをねじ伏せたのだ。
だって領土と言っても、ヴァンドネル伯爵領しか無いのだから。
王国の組織作りは何故かエルダとイングリッドと一緒に来たイェルド様らが取り仕切ってくれた。
この兄妹二人共出てきて、オースティンの公爵家と侯爵家は良いのか、と思わないでもなかったが、自分の事が急すぎて他人のことなど思いやる余裕もなかった。
そして、今、私は着飾って玉座、いや王女席に座って皆に跪かれていた。
私の後ろには何故か私の騎士になったフィル様とメルケルが帯剣して控えていた。
この新しい国の大魔術師に就任したガーブリエル様がイェルド様から王冠、いや違う、王女のティアラを受け取って、私の頭に乗せてくれた。
私はただただ呆然とそこに座っていた。
「ここに、新生アンネローゼ王国の王女にアンネローゼ様が就任された」
厳かにイェルド様が宣言された。
本来はここで皆が再度頭を下げると聞いていたのだが、
「アンネローゼ王女殿下バンザイ」
真っ先に立上ったクリスティーン様が叫ばれた。
「バンザーーーイ」
「アンネローゼ様バンザーーーイ」
そこからはもうなし崩し的に万歳三唱になってしまったんだけど・・・・
イェルド様も呆れモードだった。
こうして、決意するまもなく、私は王女になってしまった。
館の傍にいた領民からもバンザイの声が聞こえる。
その日は、そのまま無礼講でメリーがどこからか手に入れた酒を皆に配って、大宴会になってしまったのだ。
この先にある困難に私は目眩がしたが、
「アン、飲んでいるか?」
飲めない酒を無理やり飲まされて、その後の記憶はおぼろげだ。
フィル様が必至に私を守ってくれようとしていたが、いつの間にかフィル様も酒で潰されていた。
スカンディーナにまもなく寒い冬が来ようとしている時だった。
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