152 / 174
第三部 隣国潜伏編 母の故国で対決します
王太子視点12 婚約者を追いかけてスカンディーナに向かいました
しおりを挟む
テレーサ王女は頑なに何も話さなかった。中々強情だ。
しかし、もともとの病の発生源を辿ると、王女のお付きだった伯爵令嬢が予防薬だと言って配っていた薬が怪しかった。王女のお付きだった女性はアンのヒールのおかげで一命を取り留めていたが、「お前が配った薬というのが病の発生源だったんだ」
と話すと最初は信じなかった。ヴィルマルが薬の分析結果を詳しく話すと真っ青になって、今度はペラペラ話しだしたのだ。まあ、本人は薬だと思っていたとしか言わないからそれだけでは罪に問うのは可哀想なのだが、病を流行らせたのは事実だ。
それを元に騎士団長が王女に話しても、王女は頑なに知らぬ存ぜぬを通しているみたいだった。しかし、王女は強気で、自分と王太子である俺とが婚約しないと特効薬を渡さないと言い切っているのだとか。俺は直ちに対策するために騎士団長を王女の護送も兼ねて王都に返した。
パヤラの街には騎士団の半分が残った。その者達に国境の警備を厳重にさせるとともに、隣国の情報を探らせた。アンが隣国にいるかどうかは定かではなかった。
俺はしかし、待ってはいられなかった。
「俺はこれからヴァンドネル伯爵領に潜入してアンを探す」
俺は側近に話した。
「フィル、何を言っているんだ。お前は王太子だぞ。勝手に他国に潜入するなど許されると思うか」
ルーカスが言ってくる
「そうだ。父からもくれぐれもフィルにむちゃをさせないようにお前が監視しろと言われているんだ」
いつもは俺の側につくアルフまでもが言う。
「何言っているんだ。俺たちの命の恩人を探すだけだ。何が問題がある」
「それはそうだが、陛下の了解を取らないと」
「ふんっ、そんな暇はない。ルーカス、バート、お前たちもアンに命を救われたんだろう。それにアルフ、お前もアンはクラスメートじゃないか。そのアンが俺の母のせいでスカンディーナに帰ったなんてことが俺には許せない」
俺は拳を握って地面を叩いた。
「フィル、そこまで言うなら、探すなら俺とバートで行くぞ」
「そうだ。騎士団長のいないこの街の指揮官はお前ではないか」
アルフとバートが言ってきた。
「もう、山場は終わった。後は副騎士団長に任せても問題はないだろう」
俺はバートに言った。
「それに自分の婚約者を探しに行くのに、他人を行かすバカがどこに居るんだよ」
俺はそう言うと
「今回、スカンディーナの陰謀に嵌められた母に成り替わって、アンに俺は謝らなければいけない」
「しかし、」
「フィル」
「王太子が勝手に他国に潜入するのは良くないだろう」
ルーカスが最後に言う。
「何を言っている。奴らはこの国の国民に疫病を流行らせたのだ。それをアンが救ってくれたんだ。我が王国は人としてあるまじき行為をしたのに、それにもかかわらず無償でだ。
あの役立たず聖女を見ろ。疫病を怖れておっかなびっくりしているからヒールも効かないんだよ。アンなんて1発で皆を治してくれたんだぞ」
俺は机を叩いた。
「俺は1国の王太子として、いや人としてアンに詫びなければいけないんだよ。お前らが来ないなら、俺は一人でも行く」
「わかったよ。俺も一緒に行くさ」
「俺もアンに命を救われたんだ」
アルフとバートが言ってくれた。
「ルーカスは残るか」
「馬鹿言うな。俺もアンに命を救われたのは同じだ。俺も行く」
俺たちは夜陰に紛れて、宿屋を出た。
置き手紙を残して。
しかし、
「殿下方。どちらに行かれるのですか」
俺たちは宿を出た所で魔術師団長のヴィルマルに見つかってしまった。
「ヴィルマル。お前、王都に騎士団長と一緒に帰ったのでは」
俺は慌てて聞いた。
「何を仰っているんですか。王都からなんて転移を2、3回使えば帰ってこれますからな」
ヴィルマルは笑って言った。
俺はヴィルマルも転移を使えるのを忘れていた。
「陛下からは殿下が余計なことをしないように見張れと言われて来たのですが」
嫌な奴に見つかったと、俺らは思った。こいつの実力は折上付きで、撒くのは難しそうだった。
「ヴィルマル。すまない。見逃してくれ」
「殿下。殿下が行って、もし何かあったら戦争になりますよ。確実に」
ヴィルマルが呆れて言った。
「ふんっ、疫病を我が国に持ち込んだ時点で戦争ものだろう」
俺は言い切った。
「絶対に殿下にスカンディーナには行かせるなと陛下から命令を受けているのですが」
そう言うと、ヴィルマルは俺を見た。
俺は思わず剣に手をかけた。でも、剣を手にしてもこいつに4対1でも勝てる気がしなかった。
ふと、ヴィルマルが目をそらせてくれたのだ。
「アンネローゼ様をよろしくお願いします」
そして、あろう事か頭を下げてきたのだ。
「ヴィルマル!」
「私が来た時には殿下は出奔したあとだったと陛下にはお伝えします」
ヴィルマルは俺たちを見逃してくれるようだ。
「恩に着る」
俺が言うと、
「アンネローゼ様が傷ついたら承知しませんからね」
そう言ってヴィルマルは後ろを向いてくれたのだ。
「それと国境はスカンディーナの兵どもで固められております。西側の山は険路ですが、私ならそちらから入りますね」
そう、後ろから声をかけてくれたのだ。
「判った。必ずアンは守るから」
俺たちはそう言うと歩き出した。
しかし、もともとの病の発生源を辿ると、王女のお付きだった伯爵令嬢が予防薬だと言って配っていた薬が怪しかった。王女のお付きだった女性はアンのヒールのおかげで一命を取り留めていたが、「お前が配った薬というのが病の発生源だったんだ」
と話すと最初は信じなかった。ヴィルマルが薬の分析結果を詳しく話すと真っ青になって、今度はペラペラ話しだしたのだ。まあ、本人は薬だと思っていたとしか言わないからそれだけでは罪に問うのは可哀想なのだが、病を流行らせたのは事実だ。
それを元に騎士団長が王女に話しても、王女は頑なに知らぬ存ぜぬを通しているみたいだった。しかし、王女は強気で、自分と王太子である俺とが婚約しないと特効薬を渡さないと言い切っているのだとか。俺は直ちに対策するために騎士団長を王女の護送も兼ねて王都に返した。
パヤラの街には騎士団の半分が残った。その者達に国境の警備を厳重にさせるとともに、隣国の情報を探らせた。アンが隣国にいるかどうかは定かではなかった。
俺はしかし、待ってはいられなかった。
「俺はこれからヴァンドネル伯爵領に潜入してアンを探す」
俺は側近に話した。
「フィル、何を言っているんだ。お前は王太子だぞ。勝手に他国に潜入するなど許されると思うか」
ルーカスが言ってくる
「そうだ。父からもくれぐれもフィルにむちゃをさせないようにお前が監視しろと言われているんだ」
いつもは俺の側につくアルフまでもが言う。
「何言っているんだ。俺たちの命の恩人を探すだけだ。何が問題がある」
「それはそうだが、陛下の了解を取らないと」
「ふんっ、そんな暇はない。ルーカス、バート、お前たちもアンに命を救われたんだろう。それにアルフ、お前もアンはクラスメートじゃないか。そのアンが俺の母のせいでスカンディーナに帰ったなんてことが俺には許せない」
俺は拳を握って地面を叩いた。
「フィル、そこまで言うなら、探すなら俺とバートで行くぞ」
「そうだ。騎士団長のいないこの街の指揮官はお前ではないか」
アルフとバートが言ってきた。
「もう、山場は終わった。後は副騎士団長に任せても問題はないだろう」
俺はバートに言った。
「それに自分の婚約者を探しに行くのに、他人を行かすバカがどこに居るんだよ」
俺はそう言うと
「今回、スカンディーナの陰謀に嵌められた母に成り替わって、アンに俺は謝らなければいけない」
「しかし、」
「フィル」
「王太子が勝手に他国に潜入するのは良くないだろう」
ルーカスが最後に言う。
「何を言っている。奴らはこの国の国民に疫病を流行らせたのだ。それをアンが救ってくれたんだ。我が王国は人としてあるまじき行為をしたのに、それにもかかわらず無償でだ。
あの役立たず聖女を見ろ。疫病を怖れておっかなびっくりしているからヒールも効かないんだよ。アンなんて1発で皆を治してくれたんだぞ」
俺は机を叩いた。
「俺は1国の王太子として、いや人としてアンに詫びなければいけないんだよ。お前らが来ないなら、俺は一人でも行く」
「わかったよ。俺も一緒に行くさ」
「俺もアンに命を救われたんだ」
アルフとバートが言ってくれた。
「ルーカスは残るか」
「馬鹿言うな。俺もアンに命を救われたのは同じだ。俺も行く」
俺たちは夜陰に紛れて、宿屋を出た。
置き手紙を残して。
しかし、
「殿下方。どちらに行かれるのですか」
俺たちは宿を出た所で魔術師団長のヴィルマルに見つかってしまった。
「ヴィルマル。お前、王都に騎士団長と一緒に帰ったのでは」
俺は慌てて聞いた。
「何を仰っているんですか。王都からなんて転移を2、3回使えば帰ってこれますからな」
ヴィルマルは笑って言った。
俺はヴィルマルも転移を使えるのを忘れていた。
「陛下からは殿下が余計なことをしないように見張れと言われて来たのですが」
嫌な奴に見つかったと、俺らは思った。こいつの実力は折上付きで、撒くのは難しそうだった。
「ヴィルマル。すまない。見逃してくれ」
「殿下。殿下が行って、もし何かあったら戦争になりますよ。確実に」
ヴィルマルが呆れて言った。
「ふんっ、疫病を我が国に持ち込んだ時点で戦争ものだろう」
俺は言い切った。
「絶対に殿下にスカンディーナには行かせるなと陛下から命令を受けているのですが」
そう言うと、ヴィルマルは俺を見た。
俺は思わず剣に手をかけた。でも、剣を手にしてもこいつに4対1でも勝てる気がしなかった。
ふと、ヴィルマルが目をそらせてくれたのだ。
「アンネローゼ様をよろしくお願いします」
そして、あろう事か頭を下げてきたのだ。
「ヴィルマル!」
「私が来た時には殿下は出奔したあとだったと陛下にはお伝えします」
ヴィルマルは俺たちを見逃してくれるようだ。
「恩に着る」
俺が言うと、
「アンネローゼ様が傷ついたら承知しませんからね」
そう言ってヴィルマルは後ろを向いてくれたのだ。
「それと国境はスカンディーナの兵どもで固められております。西側の山は険路ですが、私ならそちらから入りますね」
そう、後ろから声をかけてくれたのだ。
「判った。必ずアンは守るから」
俺たちはそう言うと歩き出した。
0
お気に入りに追加
1,633
あなたにおすすめの小説
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
【完結】気づいたら異世界に転生。読んでいた小説の脇役令嬢に。原作通りの人生は歩まないと決めたら隣国の王子様に愛されました
hikari
恋愛
気がついたら自分は異世界に転生していた事に気づく。
そこは以前読んだことのある異世界小説の中だった……。転生をしたのは『山紫水明の中庭』の脇役令嬢のアレクサンドラ。アレクサンドラはしつこくつきまとってくる迷惑平民男、チャールズに根負けして結婚してしまう。
「そんな人生は嫌だ!」という事で、宿命を変えてしまう。アレクサンドラには物語上でも片思いしていた相手がいた。
王太子の浮気で婚約破棄。ここまでは原作通り。
ところが、アレクサンドラは本来の物語に無い登場人物から言い寄られる。しかも、その人物の正体は実は隣国の王子だった……。
チャールズと仕向けようとした、王太子を奪ったディアドラとヒロインとヒロインの恋人の3人が最後に仲違い。
きわめつけは王太子がギャンブルをやっている事が発覚し王太子は国外追放にあう。
※ざまぁの回には★印があります。
【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜
まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。
【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。
三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。
目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。
私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。
ムーンライトノベルズにも投稿しています。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
【完結】バッドエンドの落ちこぼれ令嬢、巻き戻りの人生は好きにさせて貰います!
白雨 音
恋愛
伯爵令嬢エレノアは、容姿端麗で優秀な兄姉とは違い、容姿は平凡、
ピアノや刺繍も苦手で、得意な事といえば庭仕事だけ。
家族や周囲からは「出来損ない」と言われてきた。
十九歳を迎えたエレノアは、侯爵家の跡取り子息ネイサンと婚約した。
次期侯爵夫人という事で、厳しい教育を受ける事になったが、
両親の為、ネイサンの為にと、エレノアは自分を殺し耐えてきた。
だが、結婚式の日、ネイサンの浮気を目撃してしまう。
愚行を侯爵に知られたくないネイサンにより、エレノアは階段から突き落とされた___
『死んだ』と思ったエレノアだったが、目を覚ますと、十九歳の誕生日に戻っていた。
与えられたチャンス、次こそは自分らしく生きる!と誓うエレノアに、曾祖母の遺言が届く。
遺言に従い、オースグリーン館を相続したエレノアを、隣人は神・精霊と思っているらしく…??
異世界恋愛☆ ※元さやではありません。《完結しました》
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜
晴行
恋愛
乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。
見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。
これは主人公であるアリシアの物語。
わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。
窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。
「つまらないわ」
わたしはいつも不機嫌。
どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。
あーあ、もうやめた。
なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。
このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。
仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。
__それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。
頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。
の、はずだったのだけれど。
アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。
ストーリーがなかなか始まらない。
これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。
カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?
それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?
わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?
毎日つくれ? ふざけるな。
……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる