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第二部 学園波乱編 隣国から多くの留学生が来ました

王太子視点8 俺がアンを守って決闘するはずが、殺された騎士の息子に横取りされました

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新学期が始まった時だ。俺は講堂で3日ぶりにアンを見つけて、喜んで駆け寄っていこうとした時だ。

俺は、アンに向かって威圧感を持って歩いて来る女を見つけて驚いた。
そこにはこちらが留学を拒否した、隣国の王女テレーサがいたのだ。

その王女はアンを睨みつけていたのだ。
俺のアンは震えていた。
アンは思わず一歩下がってきた。俺はそのアンを後ろから優しく抱きしめたのだ。

「大丈夫だ」
そうアンにささやくと俺は王女の前に立ったのだ。

「何故、お前がここにいる。テレーサ・スカンディーナ嬢。貴様の留学は拒否したはずだが」
俺は怒って目の前の王女に言った。

「これは王太子殿下。またご挨拶ですわね。反体制派の者ばかり留学を許可されて、私を拒否されるなど酷いではないですか」
「殿下。そのような不公平なことは外交問題なると、父が陛下に掛け合って許可していただいたのです」
横からB組の伯爵令息がしゃしゃり出てきた。こいつは外務卿の息子か。

「勝手なことを」
「どちらが勝手なのですか。殿下にも色々お有りかも知れませんが、今のスカンディーナの王女殿下はアンではなくて、テレーサ様なのです」
「何を勘違いして言うのか知らないが、テレーサ嬢を拒否したのは学力の最低ラインに達していなかったからだぞ」
「えっ?」
そう、断る理由をどうこじつけよう、といろいろ考えようとしたら、この王女は思った以上に馬鹿だったのだ。おそらく、史上最低点を更新してくれたのだ。そう、純粋に編入試験の点数が採れていなくて、あっさりと拒否できたのだ。なのにそれを復活させるってなんて余計なことをやってくれたのだ。

「えっ、でも、聖女様も点数は達していなかったはずでは」
「その件は教会の大司教に聞いてくれ。俺からは何も言えん」
このバカ息子はもう一人の特例のことを言い募ってきた。ピンク頭も本当に出来ていなかったのだが、大司教が母にお百度参りをして、何とか許してもらったというか、全責任は教会が取るということで決着したのだ。夏休みには徹底的な補習が行われたと聞く。

ということは、それ以上に馬鹿な王女は外務が面倒を見るのか?
余計なことをした外務に絶対に見させてやる。俺は決心した。

「そんな、平民のアンが許されて王族の私が許されないなんて、差別ですわ」
なのに、このおバカ王女は何をトチ狂ったか、俺のアンと比べてくれたのだ。

「何言っているか判らないが、アンが何故平民なのにA組か理解していないみたいだな」
俺は氷のような声で言った。

「あなたの婚約者だったからでしょ」
「違う。入学の時はそもそも知らなかった。アンはお前と違って入学試験の成績がトップだったからだ」
「えっ」
このバカ王女は驚いているんだけど。

「そんな、同じ血が混じっているはずなのに」
「何を言う。お前にはアンネ様の血は一滴たりともまじっていないだろうが。アンネ様も学力はトップ入学だった。更には彼女はアンと違って礼儀作法も完璧だったそうだが。ちなみにお前の父のブルーノ殿も入学試験の成績は下から2番めだった。お前は更に下だけどな」
俺ははっきりと現実を教えてやったのだ。これからは毎日4、5時間の補講を受けないと落第するぞと。

「な、何ですって。そ、そんな馬鹿な」
テレーサは手をわなわな震わした。事実を突きつけられて頭が混乱しているみたいだ。

「ふんっ、成績が良くても殺されて、娘に苦労させていたら何にもならないじゃない」
「な、なんだと。弑逆した犯人の娘がそれを言うのか」
このボケ王女は何をトチ狂ったのか俺のアンを貶めてくれたのだ。もう、これで、退学させても良いんじゃないかと俺は思ったのだが。

「私の父は暗君を正すためにやむを得ず、剣に手をかけたのよ。脳天気なそこのアンの両親のせいでね」
その王女のトチ狂った言葉に切れたアンが叫んでいた。
「勝手なこと言わないで。あなたの父親は私の母に横恋慕して、その頃あなたのお父様の愛人になっていた父の側妃のドロアーテに唆されて反逆に手を染めたんじゃない」
「何ですって。よくそんな嘘言うわね。自分の父が無能だからって言って良いことと悪いことがあるわ」
「勝手なことを言っているのはあなたでしょ。スカンディーナの人間なら誰でも知っていることよ」
「何を言うのよ。判ったわ、アン・シャーリー。これは決闘よ」
そう言うとテレーサは手袋をアンに向けて投げやがったのだ。

ふんっ、アンをそんな危険な目に合わせるわけにはいかない。俺はその手袋を取ろうと手を伸ばしたのだ。
その俺の前にいつの間にか留学生の男が進み出て、なんと手袋を掴んでくれたのだ。

え、いや、ちょっとまて、手を伸ばした俺のメンツが・・・・

俺は唖然とするしか無かった。

イングリッドの唇が動いた。

その唇は「本当に馬鹿ね」
と言っていた。

俺のアンの婚約者としての矜持が・・・・
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