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第二部 学園波乱編 隣国から多くの留学生が来ました

隣国王女視点3 転入早々、反抗勢力の騎士を叩きのめすことにしました

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そして、始業式当日だ。

私はアンネローゼを見つけた。

何か制服に地味な格好、化粧もしていなくて、胸もない。何だこの貧相な女は? さすが落ちぶれ王族。こんな奴がこの学園ででかい顔をしているのか?

私は睨みつけてやった。

赤毛の女は女はぎくりと固まっていた。

私がニコリとしてやると女は恐怖で震えたみたいだ。

私が歩きだすと、女は思わず一歩下がっていたのだ。

これは何もしなくても脅すだけで勝てるのでは無かろうか? 私は楽観してしまった。

しかし、その時だ。その後ろからムッとした表情の王太子が顔を出してきたのだ。

「何故お前がここにいる。テレーサ・スカンディーナ。貴様の留学は拒否したはずだが」
やはり赤毛はこの男を使って私を拒否したのか。

「これは王太子殿下。またご挨拶ですわね。反体制派の者ばかり留学を許可されて、私を拒否されるなど酷いではないですか」
私は嫌味を言ってやった。なんと返してくるか楽しみだ。

「殿下。そのような不公平なことは外交問題なると、父が陛下に掛け合って許可していただいたのです」
横から私と同じクラスのB組の外務卿の令息が援護してくれた。

「勝手なことを」
「どちらが勝手なのですか。殿下にも色々事情はお有りかも知れませんが、今のスカンディーナの王女殿下はアンではなくて、テレーサ様なのです」
そうよ。そうよ。お前の眼の前の貧相な女など私の敵ではないわ。私は見下してやったのだ。

「何を勘違いして言うのか知らないが、テレーサ嬢を拒否したのは学力の最低ラインに達していなかったからだぞ」
「えっ」
私は王太子の言葉が理解できなかった。我が国の学園の成績トップの私が学力不足などありえないだろう。

「俺は別にかまわないが、お前は我が学園がいかに厳しいか判っているのか? 王女だからと言って入学したら手加減はされないのだぞ。隣国の姫様がそれに耐えられるのか? ちなみに物理の点数は0点だからな」

はっ、0点? 0点ってなんだ?

「いや、殿下。我が国の物理は難しいのでは」
息子がフォローしてくれるが、私は0点に固まっていた。まさか0点はないだろう。これは何か不正が行われたに違いない。

「他の留学生は全員取れているのにもかかわらずだ」
「・・・・」
そんなバカな。私は一緒に来た伯爵令嬢のロヴィーサを見たらロヴィーサも固まっていた。
いや、そんな訳はない。天才の私が0点など。私は必死に抵抗しようとした。

「殿下、私の魔術の成績は学年一ではないのですか」
「編入試験に魔術は関係ない。我が学園はいかに魔術に優れていようと学力不足の者は入れないのだ」
「そんな、平民のアンが許されて王族の私が許されないなんて、差別ですわ」
私はえこひいきを許すわけにはいかなかった。絶対に赤毛はなにか不正をしたのだ。

「何言っているか判らないが、アンが何故平民あつかいなのにA組か理解していないみたいだな」
「あなたの婚約者だったからでしょ」
「違う。入学の時はそもそも知らなかった。アンはお前と違って入学試験の成績がトップだったからだ」
「えっ」
私は王太子の言葉が信じられなかった。こんな貧相なやつが私の上だと、絶対になにか不正をしたに違いなかった。採点官を誑し込んだに違いなかった。

「そんな、同じ血が混じっているはずなのに」
「何を言う。お前にはアンネ様の血は一滴たりともまじっていないだろうが。アンネ様も学力はトップ入学だった。更には彼女はアンと違って礼儀作法も完璧だったそうだが」
この王太子、私の母が馬鹿だと言いたの? 

「ちなみにお前の父のブルーノ殿も入学試験の成績は下から2番めだった。お前は更に下だけどな」
こいつ、私の父まで貶めるとは許せない。どのみち赤毛が手を回したのだろう。もう許せなかった。

「ふんっ、成績が良くても殺されて、娘に苦労させていたら何にもならないじゃない」
私は赤毛に言ってやったのだ。

「な、なんだと。弑逆した犯人の娘がそれを言うのか」
「な、何ですって、私の父は暗君を正すためにやむを得ず、剣に手をかけたのよ。脳天気なそこのアンの両親のせいでね」
王太子の言葉に私が言った。

「勝手なこと言わないで。あなたの父親は私の母に横恋慕して、その頃あなたのお父様の愛人になっていた父の側妃のドロアーテに唆されて反逆に手を染めたんじゃない」
赤毛がとんでもないことを言い出してくれた。貴様の母が私の父に迫ってきたのだ。嘘を言うな。

「何ですって。よくそんな嘘言うわね。自分の父が無能だからって言って良いことと悪いことがあるわ」
「勝手なことを言っているのはあなたでしょ。スカンディーナの人間なら誰でも知っていることよ」
「何、言うのよ。判ったわ、アン・シャーリー。これは決闘よ」
私は卑怯な手を使う赤毛を徹底的に痛めつけてやろうと思って手袋を投げたのだ。

赤毛が一瞬、恐怖に震えたのが見えた。そうだ。貴様なんて私の敵ではない。徹底的にいたぶってやる。良くも私をコケにしてくれたな!

だが、その手袋を掴んだのはもっと貧乏くさい男だった。

「な、何するのよあなた」
私は慌てて文句を言った。

「テレーサ・カッチェイア、貴様の決闘、このメルケル・シーデーンが受けてやるぜ」
私の眼の前の男が名乗った。
「反逆者の娘、テレーサ、お前のことなど正当な王女殿下の手を煩わすまでもない」

「何ですって、あなた、アンを庇うなんて反逆勢力の仲間ね。良いわ。私がぼろぼろにしてやるわ」
まずはその騎士からいたぶってやるのも良いのかもしれない。私を笑った奴らを恐怖の底に沈めてやるのだ。私は決意した。
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