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第一部 学園始動編 モブでなく悪役令嬢だと判りました

ブルーノ視点2 好きだった王妃の娘に会いに行こうとしました

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俺は別にアンネの忘れ形見の娘をどうこうしようという気はなかった。ただ単に気になっただけだったのだ。どちらかというと、あのアンネが命をかけて守ろうとした存在だった。困窮していば援助くらいしてやってもいいと思っていたのだ。

 それをビリエル・ボクルンド大使のボケが、何を勘違いしたのか、殺そうとしたと聞いて俺は完全にキレた。

今回の件に関与した各位の処分を命じた。

そして、オースティン王国への謝罪とアンネローゼ本人への謝罪も手紙を書いて送った。


「どういうことなの? ブルーノ。あなたまだあの赤毛の女が忘れられないわけ?」
しかし、これがディオーナ女王の不興を買ったのだ。本当に面倒な女だ。

元々、何でも出来る兄に嫉妬していたディオーナだ。その妻のアンネに良い印象は持っていなかった。更に、アンネの人気が王女の自分より高いというのも気に入らなかったみたいだった。
そのアンネに対しては隣国のドロテーア王女と気があって二人してよく虐めようとしていたのだ。しかし、天真爛漫なアンネの前には二人の嫌味は全く効力を持たなかった。嫌味が通じなかったのだ。


兄夫婦が気に入らないディオーナ女王とその兄に相手にされないドロテーア側妃は叛逆という点では利害が一致していた。誰が跡を継ぐかは揉めていたが。

ディオーナは叛逆がなると怒り狂った俺と協力してそのドロテーア一味を叩き出していたが。

俺はアンネがいなくなった世界から色が無くなったが、ディオーナはそれから色々と己の為に暗躍していたのだ。

王宮を華美にし、贅沢な生活を送っていた。それだけならず、今まで兄と比較されていたせいか、自分の業績にやたらと拘るのだ。人には面倒な政治を任せているくせに、余計な口出しをすることも多くなり、俺としてはやりにくいことこの上なかった。

その上、ディオーナはいつの間にか無能な取り巻きに囲まれて、チヤホヤされていたのだ。無能なものほどディオーナに近づこうとする。最近は俺の部下まで取り込みだしたのには俺も呆れていた。

そして、一番の弟子の魔術師のフレードリクが女王のアンネローゼ抹殺の内命を受けてオースティンに向かったと聞いて、俺はブチギレた。
俺の命に背いてまで、アンネローゼを亡き者にしようとするとは。
たかだか小娘に何を恐れているのだ。ディオーナは。

娘まで、殺させるとあとの寝覚めが悪い。俺はやむを得ず、後のことは信頼できる部下に任せてオースティンに向かった。


俺は向かったオースティンで唖然としていた。

今回の件で信頼をなくした大使館には監視装置を取り付けていた。

その監視装置からはフレードリクは何をとち狂ったのか、アンネローゼの母代わりの侍女を誘拐するはずが、どこをどう間違えて連れてきたのか、ガーブリエルの下で一緒に魔術を学んだ、ユリアを拐ってきていたのだ。爆炎の小娘だ。フレードリクはユリアの変装すら見分けられないのか。
部下に対しても絶望した。というか見限った。

オースティンの侯爵夫人を誘拐して、国際問題にならないはずはなかった。この尻拭いは全てディオーナにやらせようと俺は思った。
余計な事をした責任は自分で取らせるのだ。そうすれば少しは大人しくなるであろう。

「そこの女、少し優しくしてやるとつけ上がりやがって」
フレードリクの部下の男はそう言うと、侯爵夫人に張り手を見舞ったのだ。こいつ、爆炎の魔女をしばくなんて、なんて勇気のある奴だ。俺でもしないことを。

最もやんわりした障壁を張っているユリアには、今の張り手の効果は殆どないはずだ。

オースティンの侯爵夫人に暴力を振るったこの事実にどうしてくれるんだ? どのみち、ユリアのことだ。証拠もバッチリ撮っているはずだ。とんでもない賠償金をふっかけてくるに違いない。

「何すんのよ」
案の定、次の瞬間、部下の男は爆炎の魔女に張り倒されていた。

フリードリクは何をしているのだ。一番危険な爆炎の魔女を放り出して。

兵士や魔術師が現れたが、爆炎の魔女の敵ではない。あっという間に片付けられていく。

「貴様、何奴だ」
そこへやっとフレードリクが現れた。

「私は頭がGのぐれたシャーリーよ」
ユリアがなんか叫んでいる。何を言っているのか全然判らなかったが。

「そんな訳は無かろう。アンネローゼの侍女が魔術師でないのは判っているわ」
「ふんっ。私の正体を知ればあなたの責任問題よ」
「ほう、ならばここで死んでもらうしか無いな」
フレードリクは笑うと氷の魔術を発動した。
しかし、それにユリアは爆炎魔術で対抗する。
力は互角か。フリードリクの力にも俺はがっかりした。もう少し鍛錬していると思ったのだが。

そこに転移してきたヴィルマルの衝撃波の前にフリードリクはなすすべもなく、やられていた。
そして、その後ろに俺は久しぶりに見る我が師、ガーブリエルを見た。

ということは、アンネローゼがいる学園は手薄か。折角来たのだ。一度会ってくるか
俺は軽い気持ちで立ち上がったのだ。

その出会いが俺の運命を左右するとは思ってもいなかった

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