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第一部 学園始動編 モブでなく悪役令嬢だと判りました
破いた犯人は友人らに脅されて白状しました
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「ひ、酷い」
私はこれを見て切れてしまった。
「な、私の、私の教科書が・・・・メチャクチャ高かったのに!」
「えっ、そこを気にするの?」
エルダが驚いて聞いてきた。女達の妬みがいかに激しいかはわかったけれど、私には高い教科書を買い直さないといけないことのほうが気になったのだ。
「そうよ。教科書はあなたみたいなお貴族様にしてみたら大した事はないかもしれないけれど、私のような庶民にしてみたら貴重で高いのよ。私の食費20回分くらいよ。私に餓死しろって言うの!」
「いや、あなた、そんな餓死しそうになったら我が家に来ればいいから。というか、教科書古いので良ければお兄様のもらって来てあげたから」
エルダがカバンから教科書を出してくれた。2年前でも中身は同じはずだ。
「うそ、エルダありがとう」
私はエルダの優しさに感謝した時だ。
「えっ、アン、ずるい。私のきれいな教科書と替えてあげるわ」
イングリッドが私のもらった教科書と自分の教科書を強引に替えてくれたのだ。
「ちょっと、イングリッド何するのよ!」
「だって良いじゃない。私の教科書まだ何も書き込みしていないもの。何しろ、これはイェルド様のお使いになられた教科書なんでしょ。それ使って勉強したほうが、余程賢くなる気がするのよね」
イングリツドが教科書に頬ずりしている。
「えっ、じゃあ、イングリッド、あなたもお兄様の教科書もらってきてよ。あなただけずるいわよ」
エルダが怒って言った。
「ええええ! でも、あんた2冊も教科書いらないでしょ」
「あんたが怒って破いたことにするわ」
「ちょっとなんで私が悪者になる必要があるのよ。破くんなら他の者にやらせなさいよ」
「そう? あなた達わかっているわね。アンの教科書破いたの誰だか判らないけど、次は私の教科書を破きなさいよ」
エルダが理不尽なことで怒っている。いや、自分の教科書を破けって、何言っているのよ!
「エルダ、いくら高位貴族が沢山いるこのAクラスとはいえ、公爵令嬢の教科書を破く勇気のある奴なんているわけ無いだろう! それもお兄様があの厳しい生徒会長なんだから、犯人は草の根分けても探し出されて断罪されるの確実だろう。それ判っていて、やる奴なんているわけ無いだろうが」
アルフが言いきった。
確かに。さすがにこの国二番目の地位の公爵家令嬢を虐めようとするやつはいないだろう。
「あ、アルフ良いこと言ってくれたわ。忘れるところだった。お兄様が言っていたの。教科書が見つかったら魔力の痕跡を調査して誰がやったか調べるから持って来いって」
「えっ、そんな事できるの?」
私が驚いて聞いた。
「出来るみたいよ」
「そうなんだ」
「そいつ、生徒会長に呼ばれて絞られるんだろうな」
アルフの言葉に、2、3人顔がひきつっているものがいる。
「いや、生徒会長もそうだけど、それよりもやばいのはフィルだよ」
「フィル様が?」
バートの言葉に私は聞き返した。
「だってこの前、ベッティル先輩がアンに食べさせてもらおうとしただけで、口の中に辛子のチューブ放り込まれていただろう」
「あ、本当だ」
「その後、イングリッドに水を頭からかけさせていたし」
「さらに温風で火傷させそうにしていたよな」
アルフとバートで何か色々言っているけれど、最初の理由はなにか変だけど。
「アンの教科書がビリビリに破かれていたなんて知ってみろ。確実に親が呼び出しだよな」
「えっ、王太子に親が呼び出されるの? そうなったら、大変じゃないか」
「本当よね。王太子に睨まれたなんてなったら、お嫁にもいけなくなるんじゃない?」
「王太子に目をつけられるんだから、下手したら修道院送りになるんじゃないのか」
「えっ、それは」
私が話そうとする口をイングリッドに防がれた。
「も、申し訳ありません」
「お許しください」
「そんな事になったらうちの家はやっていけません」
ディオーナ伯爵令嬢、キャロリーナ子爵令嬢、ヨセフィーナ男爵令嬢の3人の令嬢たちが真っ青になってエルダに頭を下げてきた。
「あんた達! 何、私に謝っているのよ。謝るならアンでしょ。ちゃんとアンに謝りなさいよ」
「いや、別にエルダ。私は気にしていないから」
「そんなの良い訳ないでしょ。悪いことをしたら謝るのは子供でも知っているのよ」
私とエルダの言葉に3人は顔を見合わせた。ドーソン伯爵令嬢の方も見る。
ふーん、やっぱり黒幕はドーソンさんみたい。まあ、そらあムカつくよね。伯爵令嬢が無視さてモブにすらなれなかった平民の私が王太子殿下の横にずうーっといるんだから。
「みんな、どうしたんだい。集まって」
そこにフィル様が現れたのだ。
3人の令嬢は固まってしまった。哀れみを乞うように私を見てくるのだ。もう顔も蒼白で、今にも倒れそうだった。
「フィル様。教科書が見つかったんです。ノートの影に隠れていました」
私はイングリッドに取り替えられた教科書を見せた。
「えっ、良かったね。でも、アンさんの教科書にしてみれば綺麗すぎない?」
「そんな事ないですよ。まだあまり勉強していないのでこんなものです」
私は誤魔化してあげた。教科書を破いたのは許せないけれど、それで修道院送りはさすがに可哀相だ。
フィル様に見えないように3人に頷く。
ほっとした3人にイングリッドがなにか話している。3人はコクコクとただ頷いていた。釘を刺してくれているみたいだった。
まあ、イングリッドもこの国の侯爵令嬢だ。逆らって良い訳はなかった。
これでいじめはなくなるかなと私は安心した。
でも、信じられないことに、これでいじめは無くなりはしなかった。ほんの一時無くなっただけだったのだ
私はこれを見て切れてしまった。
「な、私の、私の教科書が・・・・メチャクチャ高かったのに!」
「えっ、そこを気にするの?」
エルダが驚いて聞いてきた。女達の妬みがいかに激しいかはわかったけれど、私には高い教科書を買い直さないといけないことのほうが気になったのだ。
「そうよ。教科書はあなたみたいなお貴族様にしてみたら大した事はないかもしれないけれど、私のような庶民にしてみたら貴重で高いのよ。私の食費20回分くらいよ。私に餓死しろって言うの!」
「いや、あなた、そんな餓死しそうになったら我が家に来ればいいから。というか、教科書古いので良ければお兄様のもらって来てあげたから」
エルダがカバンから教科書を出してくれた。2年前でも中身は同じはずだ。
「うそ、エルダありがとう」
私はエルダの優しさに感謝した時だ。
「えっ、アン、ずるい。私のきれいな教科書と替えてあげるわ」
イングリッドが私のもらった教科書と自分の教科書を強引に替えてくれたのだ。
「ちょっと、イングリッド何するのよ!」
「だって良いじゃない。私の教科書まだ何も書き込みしていないもの。何しろ、これはイェルド様のお使いになられた教科書なんでしょ。それ使って勉強したほうが、余程賢くなる気がするのよね」
イングリツドが教科書に頬ずりしている。
「えっ、じゃあ、イングリッド、あなたもお兄様の教科書もらってきてよ。あなただけずるいわよ」
エルダが怒って言った。
「ええええ! でも、あんた2冊も教科書いらないでしょ」
「あんたが怒って破いたことにするわ」
「ちょっとなんで私が悪者になる必要があるのよ。破くんなら他の者にやらせなさいよ」
「そう? あなた達わかっているわね。アンの教科書破いたの誰だか判らないけど、次は私の教科書を破きなさいよ」
エルダが理不尽なことで怒っている。いや、自分の教科書を破けって、何言っているのよ!
「エルダ、いくら高位貴族が沢山いるこのAクラスとはいえ、公爵令嬢の教科書を破く勇気のある奴なんているわけ無いだろう! それもお兄様があの厳しい生徒会長なんだから、犯人は草の根分けても探し出されて断罪されるの確実だろう。それ判っていて、やる奴なんているわけ無いだろうが」
アルフが言いきった。
確かに。さすがにこの国二番目の地位の公爵家令嬢を虐めようとするやつはいないだろう。
「あ、アルフ良いこと言ってくれたわ。忘れるところだった。お兄様が言っていたの。教科書が見つかったら魔力の痕跡を調査して誰がやったか調べるから持って来いって」
「えっ、そんな事できるの?」
私が驚いて聞いた。
「出来るみたいよ」
「そうなんだ」
「そいつ、生徒会長に呼ばれて絞られるんだろうな」
アルフの言葉に、2、3人顔がひきつっているものがいる。
「いや、生徒会長もそうだけど、それよりもやばいのはフィルだよ」
「フィル様が?」
バートの言葉に私は聞き返した。
「だってこの前、ベッティル先輩がアンに食べさせてもらおうとしただけで、口の中に辛子のチューブ放り込まれていただろう」
「あ、本当だ」
「その後、イングリッドに水を頭からかけさせていたし」
「さらに温風で火傷させそうにしていたよな」
アルフとバートで何か色々言っているけれど、最初の理由はなにか変だけど。
「アンの教科書がビリビリに破かれていたなんて知ってみろ。確実に親が呼び出しだよな」
「えっ、王太子に親が呼び出されるの? そうなったら、大変じゃないか」
「本当よね。王太子に睨まれたなんてなったら、お嫁にもいけなくなるんじゃない?」
「王太子に目をつけられるんだから、下手したら修道院送りになるんじゃないのか」
「えっ、それは」
私が話そうとする口をイングリッドに防がれた。
「も、申し訳ありません」
「お許しください」
「そんな事になったらうちの家はやっていけません」
ディオーナ伯爵令嬢、キャロリーナ子爵令嬢、ヨセフィーナ男爵令嬢の3人の令嬢たちが真っ青になってエルダに頭を下げてきた。
「あんた達! 何、私に謝っているのよ。謝るならアンでしょ。ちゃんとアンに謝りなさいよ」
「いや、別にエルダ。私は気にしていないから」
「そんなの良い訳ないでしょ。悪いことをしたら謝るのは子供でも知っているのよ」
私とエルダの言葉に3人は顔を見合わせた。ドーソン伯爵令嬢の方も見る。
ふーん、やっぱり黒幕はドーソンさんみたい。まあ、そらあムカつくよね。伯爵令嬢が無視さてモブにすらなれなかった平民の私が王太子殿下の横にずうーっといるんだから。
「みんな、どうしたんだい。集まって」
そこにフィル様が現れたのだ。
3人の令嬢は固まってしまった。哀れみを乞うように私を見てくるのだ。もう顔も蒼白で、今にも倒れそうだった。
「フィル様。教科書が見つかったんです。ノートの影に隠れていました」
私はイングリッドに取り替えられた教科書を見せた。
「えっ、良かったね。でも、アンさんの教科書にしてみれば綺麗すぎない?」
「そんな事ないですよ。まだあまり勉強していないのでこんなものです」
私は誤魔化してあげた。教科書を破いたのは許せないけれど、それで修道院送りはさすがに可哀相だ。
フィル様に見えないように3人に頷く。
ほっとした3人にイングリッドがなにか話している。3人はコクコクとただ頷いていた。釘を刺してくれているみたいだった。
まあ、イングリッドもこの国の侯爵令嬢だ。逆らって良い訳はなかった。
これでいじめはなくなるかなと私は安心した。
でも、信じられないことに、これでいじめは無くなりはしなかった。ほんの一時無くなっただけだったのだ
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