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王太子視点 婚約者の腰巾着が逆らってくれたので、婚約者を絶対に許さないと心に誓いました
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俺は完全にぷっつん切れていた。
リディアーヌの腰巾着の一人が俺様を暴漢呼ばわりしてくれたのだ。
リディアーヌには腰巾着が3人いる。ボルツアーノ王国の伯爵家の息子のレックスと第二騎士団長の息子のアーチボルト、それと1年下の学年でインスブルクと国境を接するノール辺境伯の息子のハワードだ。
この3人の中でもリディアーヌを崇拝しきっているのがこのハワードだ。
こいつが王都にいたら今後の婚約破棄計画に差し障ると思ったので、トレント公爵に示唆して辺境領の魔物を少し活性化させて、ハワードを呼び戻させたのだ。
しかし、帰ってこなくても良いのに、ハワードは徹夜で馬を飛ばして帰ってきて、卒業式の会場に現れてくれた。そこで早速、俺様のことを暴漢呼ばわりしてくれたのだ。
俺様は調子に乗っていたリディアーヌの鼻っ柱をたたき折ってやっただけなのに、何故暴漢呼ばわりされないといけない?
俺が現れたらハワードを刺激するだけなので出来れば出たくなかったが、我慢できずにハワードに反論した。
「何を騒いでいるのだ」
俺は王太子然としてハワードに注意してやったのだ。
しかし、だ!
「これはこれは王太子殿下。最近は婚約者がいらっしゃるにもかかわらず、淫乱な女を連れ歩いているという噂ですが、本当だったのですな」
ハワードの野郎は俺とアラベラを見比べて大声で叫んでくれたのだ。
「何を言う。俺はクラスメートと一緒にいるだけだ」
「ほおおおお、殿下はクラスメートと手をつないで歩かれるので?」
「それはアラベラが転けそうになったのでやむを得ず」
「はああああ! 最近はずうーっと公爵令嬢は転けられそうになっていらっしゃるのですか? 相当か弱い方のですな」
ハワードはアラベラを馬鹿にしてくれた。
「あなた、二年生の分際で私を淫乱と申しましたね」
切れたアラベラが食ってかかったが、
「当然でしょう」
「何ですって!」
「婚約者のいる男にベタベタくっつくなど淫乱女と言われても仕方があますまい。公爵家ではどのような教育をされていたのですか。親の顔が見てみたいですな」
アラベラは真っ赤になって下を向いていた。おのれ、未来の王妃に恥をかかせるなど、許さない。俺は心に決めたのだ。
卒業証書をもらう時もだ!
「「「「リディアーヌ様!」」」」
とあちこちから声が上がり卒業式の雰囲気をぶち壊してくれたのはリディアーヌの仲間内だろう。腰巾着らを使って何をしてくれるのだ。母上が目をつり上げていたぞ。まあ、これで断罪する罪が一つ増えただけだが……
声をかけるなら王太子である俺様の所でやれと俺は言いたかった!
学園長は俺の指示通り、いかにリディアーヌが俺の婚約者にふさわしくないかを祝辞で述べてくれた。
これで後は俺の後継者の生徒会長がリディアーヌをけなしてアラベラをたたえてくれれば、後は俺が答辞でいかにアラベラが素晴らしいかを言えば第一部は終わりだ。俺の婚約者にアラベラこそがふさわしくて、リディアーヌがふさわしくないと皆もよく判るだろう。
俺がほくそ笑んだときだ。
「続いて在校生の送辞。在校生代表ハワード・ノールさん」
「はい!」
「えっ?」
俺は唖然とした。何故、送辞を読むのが生徒会長ではないのだ?
俺は後で生徒会長を問い詰めたら、決死の形相で迫ってきたハワード相手に命の危険を感じて譲ったというのだ。何をしてくれたのだ!
ハワードの話は当然のごとくリディアーヌ賛歌で、いかにリディアーヌが文武両道で素晴らしいかという話だった。俺に剣術でコテンパンにやられて、テストの成績は万年最下位を取っているリディアーヌのどこが文武両道なのだ! 嘘も休み休みに言えと俺は言いたかった。歴史の点数にしても絶対にその科目だけで、それもその時限りの点数に違いない。
その上、ハワードの野郎はあろうことかリディアーヌが成績で俺の上に立つのが良くないからわざと一番下の最下位の位置にいるなんて抜かしやがったのだ。元々脳筋のリディアーヌがそんなわけ無かろうが!
俺はよほど怒鳴り散らしてやりたかった。
しかし、終わった瞬間、剣術部の面々が盛大に歓声を上げて拍手してくれたのだ。
会場は何故か感動の渦に巻き込まれて、俺様は言葉をなくしてしまった。
なんたることだ!
皆の感動したこの後にリディアーヌをけなす話など出来ないではないか!
俺はリディアーヌにしてやられたのを知った。
あいつはのほほんとしているように見えていろいろ策を練ったらしい。
俺はやむを得ず、答辞では当たり障り無い話をすることにした。
「学園内では身分は問われないが、身分無きところにも礼儀ありという。組織だった嫌がらせが一部の者にされているという報告もあった……」
「ほう、確かアラベラ様が取り巻き令嬢を連れてリディアーヌ様を虐めていらっしゃいましたな」
ハワードの野郎が大声で呟いて俺様の話を邪魔してくれた。
俺様の話を邪魔するなどもう絶対に此奴は許さない。俺が王になったときはこの男を断罪して追放してやると俺は決めたのだ。
結局俺の答辞はぐちゃぐちゃになってしまった。
おのれ、ハワードはじめ剣術部の連中め。覚えておけよ。
そして、リディアーヌめ、俺様にたてついたことを目に物見せてくれるわ。
俺は俺様に婚約破棄されて泣き叫ぶリディアーヌを思い浮かべることで溜飲を下げたのだ。
*************************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
次は卒業パーティーです。
リディの運命やいかに?
今夜更新予定です
リディアーヌの腰巾着の一人が俺様を暴漢呼ばわりしてくれたのだ。
リディアーヌには腰巾着が3人いる。ボルツアーノ王国の伯爵家の息子のレックスと第二騎士団長の息子のアーチボルト、それと1年下の学年でインスブルクと国境を接するノール辺境伯の息子のハワードだ。
この3人の中でもリディアーヌを崇拝しきっているのがこのハワードだ。
こいつが王都にいたら今後の婚約破棄計画に差し障ると思ったので、トレント公爵に示唆して辺境領の魔物を少し活性化させて、ハワードを呼び戻させたのだ。
しかし、帰ってこなくても良いのに、ハワードは徹夜で馬を飛ばして帰ってきて、卒業式の会場に現れてくれた。そこで早速、俺様のことを暴漢呼ばわりしてくれたのだ。
俺様は調子に乗っていたリディアーヌの鼻っ柱をたたき折ってやっただけなのに、何故暴漢呼ばわりされないといけない?
俺が現れたらハワードを刺激するだけなので出来れば出たくなかったが、我慢できずにハワードに反論した。
「何を騒いでいるのだ」
俺は王太子然としてハワードに注意してやったのだ。
しかし、だ!
「これはこれは王太子殿下。最近は婚約者がいらっしゃるにもかかわらず、淫乱な女を連れ歩いているという噂ですが、本当だったのですな」
ハワードの野郎は俺とアラベラを見比べて大声で叫んでくれたのだ。
「何を言う。俺はクラスメートと一緒にいるだけだ」
「ほおおおお、殿下はクラスメートと手をつないで歩かれるので?」
「それはアラベラが転けそうになったのでやむを得ず」
「はああああ! 最近はずうーっと公爵令嬢は転けられそうになっていらっしゃるのですか? 相当か弱い方のですな」
ハワードはアラベラを馬鹿にしてくれた。
「あなた、二年生の分際で私を淫乱と申しましたね」
切れたアラベラが食ってかかったが、
「当然でしょう」
「何ですって!」
「婚約者のいる男にベタベタくっつくなど淫乱女と言われても仕方があますまい。公爵家ではどのような教育をされていたのですか。親の顔が見てみたいですな」
アラベラは真っ赤になって下を向いていた。おのれ、未来の王妃に恥をかかせるなど、許さない。俺は心に決めたのだ。
卒業証書をもらう時もだ!
「「「「リディアーヌ様!」」」」
とあちこちから声が上がり卒業式の雰囲気をぶち壊してくれたのはリディアーヌの仲間内だろう。腰巾着らを使って何をしてくれるのだ。母上が目をつり上げていたぞ。まあ、これで断罪する罪が一つ増えただけだが……
声をかけるなら王太子である俺様の所でやれと俺は言いたかった!
学園長は俺の指示通り、いかにリディアーヌが俺の婚約者にふさわしくないかを祝辞で述べてくれた。
これで後は俺の後継者の生徒会長がリディアーヌをけなしてアラベラをたたえてくれれば、後は俺が答辞でいかにアラベラが素晴らしいかを言えば第一部は終わりだ。俺の婚約者にアラベラこそがふさわしくて、リディアーヌがふさわしくないと皆もよく判るだろう。
俺がほくそ笑んだときだ。
「続いて在校生の送辞。在校生代表ハワード・ノールさん」
「はい!」
「えっ?」
俺は唖然とした。何故、送辞を読むのが生徒会長ではないのだ?
俺は後で生徒会長を問い詰めたら、決死の形相で迫ってきたハワード相手に命の危険を感じて譲ったというのだ。何をしてくれたのだ!
ハワードの話は当然のごとくリディアーヌ賛歌で、いかにリディアーヌが文武両道で素晴らしいかという話だった。俺に剣術でコテンパンにやられて、テストの成績は万年最下位を取っているリディアーヌのどこが文武両道なのだ! 嘘も休み休みに言えと俺は言いたかった。歴史の点数にしても絶対にその科目だけで、それもその時限りの点数に違いない。
その上、ハワードの野郎はあろうことかリディアーヌが成績で俺の上に立つのが良くないからわざと一番下の最下位の位置にいるなんて抜かしやがったのだ。元々脳筋のリディアーヌがそんなわけ無かろうが!
俺はよほど怒鳴り散らしてやりたかった。
しかし、終わった瞬間、剣術部の面々が盛大に歓声を上げて拍手してくれたのだ。
会場は何故か感動の渦に巻き込まれて、俺様は言葉をなくしてしまった。
なんたることだ!
皆の感動したこの後にリディアーヌをけなす話など出来ないではないか!
俺はリディアーヌにしてやられたのを知った。
あいつはのほほんとしているように見えていろいろ策を練ったらしい。
俺はやむを得ず、答辞では当たり障り無い話をすることにした。
「学園内では身分は問われないが、身分無きところにも礼儀ありという。組織だった嫌がらせが一部の者にされているという報告もあった……」
「ほう、確かアラベラ様が取り巻き令嬢を連れてリディアーヌ様を虐めていらっしゃいましたな」
ハワードの野郎が大声で呟いて俺様の話を邪魔してくれた。
俺様の話を邪魔するなどもう絶対に此奴は許さない。俺が王になったときはこの男を断罪して追放してやると俺は決めたのだ。
結局俺の答辞はぐちゃぐちゃになってしまった。
おのれ、ハワードはじめ剣術部の連中め。覚えておけよ。
そして、リディアーヌめ、俺様にたてついたことを目に物見せてくれるわ。
俺は俺様に婚約破棄されて泣き叫ぶリディアーヌを思い浮かべることで溜飲を下げたのだ。
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リディの運命やいかに?
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