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第五部 小国フィーアネンの試練編

【これラノ2023ノミネート記念】宝剣のを振り下ろそうとしたら、男爵達は勝手に子爵を捕まえてくれて降ろせませんでした

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私は中々来ない仲間を待っていた。
大半の馬車は着いたのだが、アルマンやバンジャマンら走っている連中が中々着かなかったのだ。

そこへ、騎士たちを引き連れた偉そうな男がやって来るのが見えた。

「お前らはそこで何をやっているのだ」
偉そうな親父が私に食ってかかってきた。

「あなたがジスランさんのお父上ですか?」
私がその男に聞いた。

「ジスランは私の息子だが」
その横から誠実そうなおじさんが答えた。その髪の色といい顔の形といいジスランそっくりだった。

「初めまして。私は王立学園の一年E組でジスランさんのクラスメートのフランです。今ジスランさんには了解を得たのですが、私達、ここにキャンプさせていただくことになったのです」
私はしおらしく猫を被って挨拶したのだ。

「男爵、君の息子はE組なんていう平民クラスに居るのかね」
偉そうな親父が変な所をお父様に聞いていた。

「いや、息子は何分にも筆無精でして詳しくは聞いていないのですが」
ジスランのお父様は戸惑っていた。
まあ、普通は男爵家の息子ならB組だ。そういうところを見るとこの親父も学園卒らしい。

「まあ、あなたは始祖のおっしゃられた学園にいる間は皆平等に接せよという、方針に逆らわれるというのですか?」
私が白い目で男を見ると

「ふんっ、平民の小娘が偉そうに。そのような戯言建前であろうが」
「まあ、だから心の汚い大人は嫌なのよ。始祖は心の底からそれが正しいと思われてその様に学則を定められたのに」
私は盛大に溜息をついてやったのだ。
横でメラニーが頭を押さえているんだけど。変なことは言っていないはずだ。

「何を言う。小娘風情が始祖様を語るな」
男が怒ってきたんだけど。

「あああら、私のその意見は国王陛下にも認めて頂けたのだけど、あなたは国王陛下の言葉も認めないわけ」
「ええい、嘘をつくな! 陛下が平民の貴様の言葉など聞かれるわけはなかろう」
男は怒った顔で私を睨みつけてきた。
周りの男達も頷いている。

「父上、どうしたのですか」
そこにジスランが帰ってきたのだ。

「ジスランか、こちらのフランさんとか言う人が陛下に声をかけられたと言っておられるのだが」
「何のことかわからないけれど、フラン様は陛下と普通に話されるよ。だって第一王子殿下の婚約者様だから」
「何を言う、第一王子殿下の婚約者様はフランソワーズ・ルブラン様だぞ」
横の威張った親父が言ってくれたんだけど。

「そうですよ。バリエ子爵。こちらがそのフランソワーズ様なんですけど」
「「「えっ」」」
周りの大人達が固まるのがわかった。

「貴方様がルブラン公爵令嬢のフランソワーズ様で」
ジスランのお父様が驚いて頭を下げようとした。

「いや、男爵。私自身は爵位も何も持たない者ですからそんなに新たまっていただかなくても」
私が慌てて手を振った。

「そうだぞ。アベラール男爵。我々は爵位を持っているのだ。たとえ公爵家の娘であろうと今は我々の方が爵位は上だ」
「いや、しかし、バリエ子爵様。未来の王妃様に失礼な態度を取るわけには」
ジスランの父親は首を振ってきた。

「それはあくまでも未来の話であろうが。それよりもフランソワーズ嬢。その足元の黒いものは何だ」
子爵が話題を変えて聞いてきた。

「ああ、これはそこの泉に埋まっていた呪いの十字架の残骸よ」
私は平然と言ってやったのだ。

「な、なんということをしてくれたのだ。それはこの疫病で汚れたこの地を浄化する聖なる十字架だぞ。それをこのようにするとは」
「本当よ。神をも怖れぬ行為とはあなたのしたことを言うのよ。あなたの行為のおかげでオドラン司祭様が死にかけておられるのよ」
子爵とその配下の女修道女のような者が言ってくれるんだけど。

「な、なんだって」
「司祭様が倒れられたのか」
その言葉に周りの大人達が動揺しているんだけど。

「良く嘘ばっかり言えるわね。この十字架からは凄まじい呪いを感じたわ。帝国教の連中がこれを水源に埋めて皆を病気にかからせたんでしょう。そうよね。オーレリアン」
「はい。帝国教のいつもの常套手段です。すでに王都には報告が行っていますので、騎士団がすぐにも到着するかと」
オーレリアンが如才なく話題を合わせてくれた。

「な、何を言うの」
「そうだ。そんなの出任せだ」
子爵達は叫ぶ。

「ええい。騎士たちよ。直ちにその女たちを捕まえよ」
子爵が自分の騎士に命じていた。

「ふんっ、別に良いわよ。帝国の手先として葬られたいのなら相手になってあげるわ」
私は宝剣エクちゃんを抜いたのだ。

「ま、まさか、フランソワーズ様。その剣はエルグランの至宝、宝剣エクスカリバーでは」
その時だ。男爵が私のエクちゃんを見て大声で叫んできた。

「えっ、そうだけれども」
私がその声に戸惑うと

「な、何と、貴方様が宝剣をお持ちということは貴方様は全エルグランの指揮を取る大将軍と同じ地位のはずです」
そう叫ぶと男爵は慌てて平伏したのだ。

「も、申し訳ありません。今までの無礼の数々お許し下さい」
そして、大声で叫んでくれた。
残りの連中はその姿に唖然としていた。

「ええい、貴様ら何を突っ立っているのだ。エルグラン王国の大将軍様の御前ぞ。この剣をお持ちの方に逆らうのは反逆罪で処刑されても何も言えないのだぞ。ええい、頭が高い。控えおろう」
大音声で水戸黄門宜しくやってくれたのだ。

言われた私も唖然としていたけれど、周りの騎士たちも男爵の勢いに思わず平伏してしまったのだ。

立っているのは我がクラスの面々と子爵と女修道女だけになったんだけど……

「お前ら、何をしている。直ちにこの女たちを捕まえるのだ」
子爵が叫ぶが、

「ええい、何をしている。大将軍様に剣を向ければ即座に反逆罪で処刑されるぞ。者共、子爵とその従者を直ちに捕らえよ」
男爵が大声で指示したのだ。

何故か子爵の配下の騎士たちが慌てて子爵と女修道女を捕まえてしまったんだけど……
「貴様ら。なにをする。逆らうのか」
子爵達は騒ぎ立てたが、

「ええい、反逆者にされたくなければ、素直にお縄に付け」
大声で叫ぶ男爵の前には何も出来なかったのだ。

聞く所によるとジスランの家系は元々騎士出身で、我がルブランとも先祖のつながりがあるとのことだった。

私は振り上げた剣を降ろすしか無かったのだった…… せっかくまた暴れられると思ったのに……

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ここまで読んでいただいてありがとうございます。

皆様のお陰で『次にくるライトノベル大賞2023』にノミネートされた当物語。
https://tsugirano.jp/

投票は本日6日の17時59分まで
投票まだの方は是非ともよろしくお願いします!
ノミネートの場所は上から5番目です。
古里




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