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第四部 第四部 古の古代帝国公爵家の野望
アド視点3 婚約者が公国の公子と一緒に補講受けているのが気に食わないので、補講に一緒に出たら婚約者から更に睨まれました
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「殿下、大変です」
休み時間にオーレリアンが俺のところに飛んできた。
「どうした?」
「フラン様が公国のなんとかリックさんと決闘するそうです」
俺は心配して損した。
「ああ、あの男で入試の最低点を叩き出したエーリックだろう」
俺は馬鹿らしくなった。
「心配じゃないんですか」
オーレリアンが言うので、
「何で馬鹿の心配をしなければならないんだ」
「えっ、フラン様がですか」
「お前は何を言っている。エーリックのほうに決まっているだろうが。フランに余計なことを言うなよ。
そもそも何処のどいつが喜んでフランと決闘なんてするんだ。下手したら瞬殺されるぞ」
俺はそこまで言って却って心配になった。
「フランにはくれぐれも手加減してやるように注意しろよ。帝国教の教皇は半身不随になったし、帝国最強の魔術師も全くフランには相手にもならなかったんだからな。エーリックが多少魔術が出来てもフランには絶対に勝てないぞ。まあ、見学者に被害が及ばないよう魔術師団を極秘に数人呼んでおけ」
俺はオーレリアンに指示した。
本当にフランは何をトチ狂って決闘なんて受けたんだか。
これがフェリシー先生にバレたら、補講になるんじゃないか。
そして、俺の予想は的中した。
フランは俺の忠告を聞いて一切攻撃魔術は使わなかったそうだが、エーリックのボケナスが火炎魔術を使って訓練場を壊したらしい。
エーリックの能力は予想以上にあったみたいで、極秘で見ていた魔術師団長が言うには魔術師団長と同じくらいだそうだ。
ま、それでもフランの敵ではないだろう。
しかし、シュタイン公国の公子が魔力量が多いか。
俺はそこになんとなく、不吉なものを感じた。王弟はシュタイン大公の所にも少しの期間滞在していたらしい。
何かキナ臭いものを感じる。父にも言われているので、俺は徹底的に調べることにしたのだ。
そして、案の定フランはフェリシー先生の補講になってしまった。
計算違いなのはそれがエーリックと一緒の補講ということだ。
それも一週間で終わると思っていたのに、いつの間にか二週間に増えているんだけど。
どこの馬の骨とも判らぬ奴とフェリシー先生が一緒とは言ってもフランが一緒にいるが俺には気に食わなかった。
このエーリックが留学してくるから俺の余計な仕事も増えてフランと一緒にいられないのに、このエーリックは俺の婚約者と一緒にいるなど、許せるものではなかった。
「どういう事だ、フラン。更に一週間もエーリックと一緒に補講なんて」
「知らないわよ。文句はエーリックに言ってよ」
不機嫌なフランは言い返してきた。
「元々エーリックとの決闘も見に来なかったくせに」
フランはしつこい。
「仕方がなかっただろう。父に呼ばれていたんだから。それにフランがあんな奴に負けるとは思ってもいなかったし」
俺が当然のように言うと
「そうだ、アドが私の代わりにフェリシー先生の補講に出てくれたらいいのよ」
フランはいきなり矛先を変えてきた。
「そんなの出来るわけないだろう」
俺が言うが、
「だって私は今回は巻き込まれただけよ。エーリックの攻撃は全部障壁で弾き飛ばしただけなんだから。だからアドが代わってくれるって言ったら絶対にフェリシー先生は認めてくれるはずよ」
フランは自信満々に言うが、それはないと俺は思った。フェリシー先生はフランを王妃の意向通りにもっと礼儀作法を磨きたいはずなのだ。俺が代わりに出ると言っても、断られるのが関の山だ。
「良いじゃない。たまには婚約者の頼みを聞いてくれても」
フランは執拗だった。余程嫌なのか。
「それは挑戦してみてもいいが」
「やった、お願い」
フランが更に頼み込んでくる。
ここはやってみるのも良いかも。なにか良いことあるかもしれないし。
「じゃあ、キスしてくれたら考えてもいいよ」
俺は言うだけ言ってみた。
「いや、何言っているのよ。そんなのできるわけないでしょ」
当然のフランの反応だった。
赤い顔のフランも可愛い。
「キスくらい良いじゃないか。フェリシー先生の補講がなくなるのならば」
俺はダメ元で更に言ってみたのだ。
「それもそうね」
でも、何を思ったのかフランが了承したのだ。
本当か?
それだけフェリシー先生の補講が嫌なんだろうか?
なんと、フランはその勢いのまま俺の頬にチュッとキスをしたのだ。
周りから盛大な黄色い悲鳴が上がったのは言うまでもない。
フランは生徒たちの前だというのを忘れていたみたいで、真っ赤に茹で上がっていた。
これは完全に役得だ。
でも、やっぱり俺がいくら言ってもフェリシー先生は聞き入れてくれなかった。
仕方なしにその補講に出ると
「そうです。さすがアドルフさんです。素晴らしいです」
フェリシー先生は俺をフランの前でベタ褒めしてくれた。
「さあ、フランソワーズさんもエーリックさんもアドルフさんを真似てちゃんとやってくださいね」
俺はフランに嫌というほど睨まれたんだけど、これはフランが悪いと俺は思ったのだ。
***********************************************************************************
ここまで読んで頂いて有難うございます。
皆様の応援のおかげで書籍化出来た本物語ですが、出版社からの出荷日が26日に決まりました。
書店に並ぶのはその少し後だと思われます。
もうあと数日でネット書店等で予約はできるようになるはずです。
宜しければ手に取っていただければ嬉しいです!
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「どうした?」
「フラン様が公国のなんとかリックさんと決闘するそうです」
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俺は馬鹿らしくなった。
「心配じゃないんですか」
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「えっ、フラン様がですか」
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俺はオーレリアンに指示した。
本当にフランは何をトチ狂って決闘なんて受けたんだか。
これがフェリシー先生にバレたら、補講になるんじゃないか。
そして、俺の予想は的中した。
フランは俺の忠告を聞いて一切攻撃魔術は使わなかったそうだが、エーリックのボケナスが火炎魔術を使って訓練場を壊したらしい。
エーリックの能力は予想以上にあったみたいで、極秘で見ていた魔術師団長が言うには魔術師団長と同じくらいだそうだ。
ま、それでもフランの敵ではないだろう。
しかし、シュタイン公国の公子が魔力量が多いか。
俺はそこになんとなく、不吉なものを感じた。王弟はシュタイン大公の所にも少しの期間滞在していたらしい。
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そして、案の定フランはフェリシー先生の補講になってしまった。
計算違いなのはそれがエーリックと一緒の補講ということだ。
それも一週間で終わると思っていたのに、いつの間にか二週間に増えているんだけど。
どこの馬の骨とも判らぬ奴とフェリシー先生が一緒とは言ってもフランが一緒にいるが俺には気に食わなかった。
このエーリックが留学してくるから俺の余計な仕事も増えてフランと一緒にいられないのに、このエーリックは俺の婚約者と一緒にいるなど、許せるものではなかった。
「どういう事だ、フラン。更に一週間もエーリックと一緒に補講なんて」
「知らないわよ。文句はエーリックに言ってよ」
不機嫌なフランは言い返してきた。
「元々エーリックとの決闘も見に来なかったくせに」
フランはしつこい。
「仕方がなかっただろう。父に呼ばれていたんだから。それにフランがあんな奴に負けるとは思ってもいなかったし」
俺が当然のように言うと
「そうだ、アドが私の代わりにフェリシー先生の補講に出てくれたらいいのよ」
フランはいきなり矛先を変えてきた。
「そんなの出来るわけないだろう」
俺が言うが、
「だって私は今回は巻き込まれただけよ。エーリックの攻撃は全部障壁で弾き飛ばしただけなんだから。だからアドが代わってくれるって言ったら絶対にフェリシー先生は認めてくれるはずよ」
フランは自信満々に言うが、それはないと俺は思った。フェリシー先生はフランを王妃の意向通りにもっと礼儀作法を磨きたいはずなのだ。俺が代わりに出ると言っても、断られるのが関の山だ。
「良いじゃない。たまには婚約者の頼みを聞いてくれても」
フランは執拗だった。余程嫌なのか。
「それは挑戦してみてもいいが」
「やった、お願い」
フランが更に頼み込んでくる。
ここはやってみるのも良いかも。なにか良いことあるかもしれないし。
「じゃあ、キスしてくれたら考えてもいいよ」
俺は言うだけ言ってみた。
「いや、何言っているのよ。そんなのできるわけないでしょ」
当然のフランの反応だった。
赤い顔のフランも可愛い。
「キスくらい良いじゃないか。フェリシー先生の補講がなくなるのならば」
俺はダメ元で更に言ってみたのだ。
「それもそうね」
でも、何を思ったのかフランが了承したのだ。
本当か?
それだけフェリシー先生の補講が嫌なんだろうか?
なんと、フランはその勢いのまま俺の頬にチュッとキスをしたのだ。
周りから盛大な黄色い悲鳴が上がったのは言うまでもない。
フランは生徒たちの前だというのを忘れていたみたいで、真っ赤に茹で上がっていた。
これは完全に役得だ。
でも、やっぱり俺がいくら言ってもフェリシー先生は聞き入れてくれなかった。
仕方なしにその補講に出ると
「そうです。さすがアドルフさんです。素晴らしいです」
フェリシー先生は俺をフランの前でベタ褒めしてくれた。
「さあ、フランソワーズさんもエーリックさんもアドルフさんを真似てちゃんとやってくださいね」
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