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第二部 帝国の逆襲
帝国皇帝視点3 破壊の魔女に燃やされてしまいました
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「な、何だと」
俺はズンダーラ教の教皇が、破壊の魔女の小娘を誘拐するのに失敗したとの報告を唖然と聞いていた。
「ドワイヤンが破壊の魔女の娘を誘拐しようとしたというのか?」
「はい」
ビスマークが汗水をタラタラと流しながら報告していた。
「そのようなことを指示した覚えはないが」
「何でも娘に馬鹿にされてドワイヤンが勝手に行動したようです」
もうビスマークも青くなっていた。
「基本的に、娘本人に手を出すようなことはするなと申しておいたよな」
「はっ、搦手からは攻めるように話しましたが、直接誘拐など以ての外だと指示していたのですが、娘に馬鹿にされてドワイヤンが暴走したようです」
ビスマークが報告する。
「俺は何も知らんぞ。そもそも今回の件はドワイヤンの暴走だ」
そうだ、部下が勝手にしたことだ。それで誤魔化そうと俺は思ったのだ。
「それでうまくいくでしょうか」
不安そうにビスマークが聞いてくる。
そうだ。相手は怒ると何をするか判らない破壊の魔女だ。そんな言い訳がうまくいくとは思っていなかった。
「全軍を帝都に集結させろ」
「全軍をでございますか」
ビスマークは驚いて聞いてきた。
前回は1個師団が壊滅させられた。今回は10個師団以上あればなんとかなるだろう。
「しかし、集めるのにどんなに急いでも1ヶ月以上かかりますが」
そうだ。帝国軍は国境沿いに多くの軍勢がいる。集めるのに時間がかかるのだ。
「よし、やむを得まい。取り敢えず都をもっと北に遷都しよう」
「遷都でございますか?」
更に驚いてビスマークが聞いてきた。
「そうだ。北の国境近くに都を移せば中々破壊の魔女は来れまい」
「そうでしょうか? 破壊の魔女は転移できると聞いております。北極圏に作れば流石に追ってこないかもしれませんが、それでは北にしすぎて帝国を全て掌握していくのは難しくなるかと」
「構わん。少しでも破壊の魔女から離れるのじゃ。ノーザンピークあたりが良いのではないか」
俺は焦って言った。確か北極圏にある港町だ。破壊の魔女の領地からはだいぶ離れることになろう。流石にあそこまでは追ってこないだろう。
「しかし、遷都は実行するのにどんなに急いでも1年以上は確実にかかるかと」
「取り敢えず、我々だけで移動すれば良い。残りはおいおい整えればよかろう」
もう俺は破壊の魔女から一刻も早く離れることしか頭になかった。何しろあいつは最強の我が第二師団を壊滅させて、俺の頭を燃やし、薄くなリ始めた髪の毛をハゲにし、その後、あろうことかこの皇帝の俺様を巨大龍に命じて、湖にポイ捨てさせた張本人なのだ。
その上、俺に土下座をさせて許しを乞わせた映像を全世界に配布しやがったのだ。
その与えられた屈辱を晴らそうとしたのがそもそもの失敗だった。
あいつは言ったことは必ず実行するのだ。王国留学時代にどれだけ煮え湯を飲まされたことか。
と言うか、あいつは二度目はないと言い切ったのだ。
このままでは絶対にまずい。まずいのだ。
「何をしておる。直ちに移動を開始するぞ」
「しかし・・・・」
文官達は呆然としていた。未だに俺が言っている事が理解できていないらしい。
しかし、破壊の魔女は一度目はあっさりとこの前の王宮に潜入したのだ。
その時燃やされた宮殿を造り直してまだ数日とは経っていまい。
でも、そんなのは関係ないのだ。
何しろあいつは本当に言ったことは必ず実行するのだ。
娘が帝国の関係者に誘拐されそうになったと今頃は報告を受けているはずだ。
切れたあいつが何をするか、判ったものではない。
それとあいつは言ったのだ。
『二度目はない』と
ズカーーーーン
その時だ凄まじい爆発音がした。
「キャーーー」
そして悲鳴が聞こえた。
「も、申しあげます。王宮の門が何者かに破られました」
兵士が報告してきた。
「き、来た・・・・」
俺は真っ青になった。
「直ちに陛下をお守りしろ。全軍に招集を」
新しく任命された近衛師団長が叫んでいる。
でも、遅い、もう終わりだ。
ドカーーーーン
次の瞬間、宮殿の建物の壁一面が吹っ飛んでいた。
俺は慌てて伏せる。
中にいた者の多くは飛んできた石の下敷きになっていた。
そして、そこには怒りのオーラ全開の破壊の魔女が立っていたのだ。
「あ、アンナ、これは違うぞ。俺はお前の娘の誘拐の指示はしていない」
俺は顔を上げて破壊の魔女に言い訳した。
「似たような指示は出したんでしょ」
「いや、待てそんな事は・・・・」
俺は必死に言い訳しようとした。でも、破壊の魔女は聞いてもくれなかった。
「地獄の閻魔様に言い訳はしなさい」
そう言うや、その手からは巨大な火炎魔術が俺様に襲いかかったのだ。
俺様が防げるわけもなかった。俺はその瞬間地上から消滅したのだ。
************************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
明日の朝更新で完結です。
新作始めました
『推しの悪役令嬢を応援していたら自分がヒロインでした』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/904668301
これもおすすめのお話です。ぜひともお読み下さい。
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「ドワイヤンが破壊の魔女の娘を誘拐しようとしたというのか?」
「はい」
ビスマークが汗水をタラタラと流しながら報告していた。
「そのようなことを指示した覚えはないが」
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「基本的に、娘本人に手を出すようなことはするなと申しておいたよな」
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ビスマークが報告する。
「俺は何も知らんぞ。そもそも今回の件はドワイヤンの暴走だ」
そうだ、部下が勝手にしたことだ。それで誤魔化そうと俺は思ったのだ。
「それでうまくいくでしょうか」
不安そうにビスマークが聞いてくる。
そうだ。相手は怒ると何をするか判らない破壊の魔女だ。そんな言い訳がうまくいくとは思っていなかった。
「全軍を帝都に集結させろ」
「全軍をでございますか」
ビスマークは驚いて聞いてきた。
前回は1個師団が壊滅させられた。今回は10個師団以上あればなんとかなるだろう。
「しかし、集めるのにどんなに急いでも1ヶ月以上かかりますが」
そうだ。帝国軍は国境沿いに多くの軍勢がいる。集めるのに時間がかかるのだ。
「よし、やむを得まい。取り敢えず都をもっと北に遷都しよう」
「遷都でございますか?」
更に驚いてビスマークが聞いてきた。
「そうだ。北の国境近くに都を移せば中々破壊の魔女は来れまい」
「そうでしょうか? 破壊の魔女は転移できると聞いております。北極圏に作れば流石に追ってこないかもしれませんが、それでは北にしすぎて帝国を全て掌握していくのは難しくなるかと」
「構わん。少しでも破壊の魔女から離れるのじゃ。ノーザンピークあたりが良いのではないか」
俺は焦って言った。確か北極圏にある港町だ。破壊の魔女の領地からはだいぶ離れることになろう。流石にあそこまでは追ってこないだろう。
「しかし、遷都は実行するのにどんなに急いでも1年以上は確実にかかるかと」
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もう俺は破壊の魔女から一刻も早く離れることしか頭になかった。何しろあいつは最強の我が第二師団を壊滅させて、俺の頭を燃やし、薄くなリ始めた髪の毛をハゲにし、その後、あろうことかこの皇帝の俺様を巨大龍に命じて、湖にポイ捨てさせた張本人なのだ。
その上、俺に土下座をさせて許しを乞わせた映像を全世界に配布しやがったのだ。
その与えられた屈辱を晴らそうとしたのがそもそもの失敗だった。
あいつは言ったことは必ず実行するのだ。王国留学時代にどれだけ煮え湯を飲まされたことか。
と言うか、あいつは二度目はないと言い切ったのだ。
このままでは絶対にまずい。まずいのだ。
「何をしておる。直ちに移動を開始するぞ」
「しかし・・・・」
文官達は呆然としていた。未だに俺が言っている事が理解できていないらしい。
しかし、破壊の魔女は一度目はあっさりとこの前の王宮に潜入したのだ。
その時燃やされた宮殿を造り直してまだ数日とは経っていまい。
でも、そんなのは関係ないのだ。
何しろあいつは本当に言ったことは必ず実行するのだ。
娘が帝国の関係者に誘拐されそうになったと今頃は報告を受けているはずだ。
切れたあいつが何をするか、判ったものではない。
それとあいつは言ったのだ。
『二度目はない』と
ズカーーーーン
その時だ凄まじい爆発音がした。
「キャーーー」
そして悲鳴が聞こえた。
「も、申しあげます。王宮の門が何者かに破られました」
兵士が報告してきた。
「き、来た・・・・」
俺は真っ青になった。
「直ちに陛下をお守りしろ。全軍に招集を」
新しく任命された近衛師団長が叫んでいる。
でも、遅い、もう終わりだ。
ドカーーーーン
次の瞬間、宮殿の建物の壁一面が吹っ飛んでいた。
俺は慌てて伏せる。
中にいた者の多くは飛んできた石の下敷きになっていた。
そして、そこには怒りのオーラ全開の破壊の魔女が立っていたのだ。
「あ、アンナ、これは違うぞ。俺はお前の娘の誘拐の指示はしていない」
俺は顔を上げて破壊の魔女に言い訳した。
「似たような指示は出したんでしょ」
「いや、待てそんな事は・・・・」
俺は必死に言い訳しようとした。でも、破壊の魔女は聞いてもくれなかった。
「地獄の閻魔様に言い訳はしなさい」
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俺様が防げるわけもなかった。俺はその瞬間地上から消滅したのだ。
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