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二度と話しかけることはないと言っていたルードが、いきなり私の元にやってきてくれたので、令嬢達に敵認定されてしまったんだけど……

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それからが大変だった。
私の汚物はハイデマリー等がきれいにしてくれた。
粗相したからルードに引っ叩かられたらどうしようと心配したけれど、流石にルードはそこまで鬼畜じゃなかったみたい。
でも、いくら幼馴染とはいえ、イケメンの男の前で吐き出すというのは流石に最悪なことだった。
服の替えとかはハイデマリーが手配して貸してくれたけど。

生まれて初めて乗る転移門も吐いたらダメだと紙袋を持って乗らされた。
少し気分が悪くなったが、なんとか耐えきった。

それを見てルードはホッとしたみたいだったけど。
絶対に今度あったらこの件でバカにされる。
と思ったけれど、その心配はないみたいだ。

「まあ、これでもう話すことはないと思うが、元気でな」
となんともムカつくセリフを吐いて、去っていってくれた。
もっと汚物まみれにしてやればよかったと思ったのは内緒だ。

その後、ハイデマリーが学園の寮まで送ってくれた。

学園は、さすが帝国の唯一の学園だといえる重厚な作りをしていたが、弱っていた私はよく見る暇もなく、自分の部屋に案内されて、あまりにも急に生活環境が変わって疲れ切ったのかその日はすぐに寝れた。



その日は朝からクラス分けのテストだった。
支給されたブラウン系の色の制服を着て、寮を時間の少し前に出て、テスト会場の教室に向かった。
テスト会場には既に20人くらいの生徒がいた。大半の者はクラス分けのテストを2週間も前に受けているとのことだったが、思ったより多い。
テストの時に帝都にいなかった者だ。
私のような属国の者でギリギリに帝都にやって来た者とか、留学生、あるいはテストの時に病気にかかってテストを受けられなかった者が受けるとのことだった。

学園は定員200名に対して、帝国貴族の子共達が約100名、留学生や属国の生徒約20名。その他官僚や裕福な商会の子供たちなど平民階級が80名だった。この学園に通えるのは帝国の未来を背負っていく超エリート集団だ。
そんなところに私なんていて良いのかなと思わないでもなかったけれど、昔ルードを助けた縁で通わせてくれるらしい。それなら素直にその好意を受けようと私は思った。

だって基本的に私は今後は一人でこの世界で生きていかねばならない。
それに、ルードが男爵家を継げるようにしてくれたみたいだけど、本当に継げるかどうかもその時にならないと判らなかった。
あの日和見な外務卿がまた態度を変えるかもしれないし。
ルードにしても何回もカッセルに来てくれるとは思えなかった。
今回来てくれたのは本当に幸運だった。
二度と話しかけることはないとのことだったから今後は話すことはないだろう。
学園での私の唯一人の知り合いなのに、本当に冷たい。
まあ、帝国の高位貴族様と属国の男爵令嬢では地位が違いすぎるのだろう。

ハイデマリーの言葉によると、基本的に帝国のこの学園を卒業したら、その事実だけで就職には困らないとのことだった。最悪どこかに就職の斡旋はしてくれるそうだ。
それを信じて頑張って勉強するしかない。

実家にいたら奴隷と変わらない生活だったのが、もう一度まともな生活が送れるのだから。

前世は東京の私立大学にひとり暮らしで生活していたので、生活費を稼ぐためにバイト三昧の生活だった。そのバイトも私のことだからブラックバイトそのままで、休みも殆どなかった。下手したら授業時間も頼まれてバイトしていた。だから、今世こそは、まともな学生生活を送ってちゃんと勉強しようと私は心に誓った。

でも、あんな事があったから、まともなテスト対策は何も出来なかった。
もうぶっつけ本番だ。
まあ、私は転生者だ。普通はテストなんて前世の知識もあるから楽勝で解けるだろう。何しろ私は旧帝大に1点差で落ちたのだ。テストに自信はあった。
こんな世界の試験なんて楽勝のはずだと私は舐めていたのだ。


ええええ! 何なの、この問題!
でも実際の試験問題を見て私は頭を抱えてしまった。

帝国の歴史がほとんど判らないのだ。
帝国の歴史の概要は私も家の本を隠れて読んでいたから分かっていたけれど、何故か、見ても全然判らない。
そんな簡単な問題は出ずに、もっと細かいところが問題として出て来たのだ。
やばい!

数学は中学レベルだから楽勝だったけれど、理科なんて物理があるんだけど、なんで?
何故ラノベの世界に物理が出てくる?
私はセンターは物理なんて選択していなかった。物理は苦手だから生物受験だったのだ。
それも確かこれは等加速度運動だ。
そんなの前世で公式を覚えているわけないじゃない!
スペルの書き取りとかも書くだけ書いたけれど、ほとんど勉強させてもらえなかった私にはとても難しかった。

そう、転生者なら余裕綽々で出来ると思ったのに、全く出来なかった。


前の席の黒髪の大柄な女の子なんて途中から堂々と机に突っ伏して居眠りしていた。

「えっ、なんで? ゲームの中では電気の問題だったのに?」
寝ている黒髪の前の青髪の女の子がおおきな声で呟いてくれた。

「そこ、静かに」
「すみません」
青髪の女の子は慌てて、先生に謝ったが、私はその子の言葉の中の、『ゲームの中』という言葉がとても気になった。

やっぱりこの世界はゲームの世界なの?
それにあの子も転生者なんだろうか?

テストが終わって私がジロジロ見ていたら白い目で睨み返されてしまった。
ダメだ。怖くて話しかけられない。

その日帰って、ルードに渡された資料見たら、問題の大半はその対策書に載っていた。
私は青くなった。
物理の等加速度運動だけはどこにも載っていずに、代わりに中学の電気の問題が載っていたけれど。
まあ、電気も忘れていたけれど、高校物理の等加速度運動よりはましだ。


そして、その日の夕方に中庭の掲示板を見に行くとクラス分けが発表されていた。
私はAクラスから見ていったが、全然ない。
まあ、あれだけ出来なかったから当然か。
皆やはりもっと出来るみたいだ。

最後のEクラスの一番最後に私の名前があった。
あって良かった。
最初私はそう思った。

でも、これってテストの成績が最下位だっていうことだろうか?
私は青くなった。
こんな点数ばかり取っていたら退学処分になってしまうかもしれない。
退学になって実家に帰されたらどうなるんだろう? 私は戦々恐々とした。

「コンス様。どういうことですか? Eクラスなんて! お父上が聞かれたら嘆き悲しまれますよ」
テストの時に私の前で机に突っ伏していた黒髪の女の子が侍女らしき者に怒られていた。
この子もEクラスみたいだ。

「いや、まあ、父はこんなものだろうと許してくれるさ」
女の子は全然動じていなかった。私はそれを聞いて少し、ホッとした。

「げっ、Eクラスだ」
「最悪だな」
Eクラスの面々は、皆私みたいにAクラスから順に見ていくみたいで、最後まで見てEに名前が出ていてがっかりしていた。

仲間が結構いることで私はほっとした。皆見た目は私よりも賢そうだったけれど。


「おい、クラウ、どういう事だ! Eクラスなんて!」
そこへルードが大きな声で怒鳴り込んできたのだ。

えっ、二度と話しかけるなって言っていたルードが私に話しかけてきたことに私は驚いた。
ちょっと待って! 来ちゃいけないって!
私が思った瞬間だ。

「見て、ルード様だわ」
「ルード様に話しかけられるって、あの子誰なの?」
「なんか田舎じみた姿しているわ」
「それにガリガリだし」
私はあっという間に令嬢達の注目の的になってしまった。
それも悪意の!

ちょっと待ってよ。こうなるのが判っていたから話しかけないんじゃなかったの?
それに気づいてルードも慌てたみたいだ。

「とりあえず、来い」
私は強引に手を引かれてルードにその場から連れ出されたのだ。

「キャッ」
「あの子、ルード様と手を繋いでいるわ」
「一体誰なの?」
「属国から来た礼儀知らずの令嬢じゃない?」
「まあ、なんて図々しいの!」

いや、待って、私は今はルードに連行されているんだから!
文句はルードに言ってよ!

しかし、私の意見は無視された。

周りの皆は、特に女の子は私を睨みつけていた。

いきなり私は針の筵なんですけど……
なんで!

私は手を離そうとしたが、逃亡を恐れたのか絶対にルードは手を離してくれなかったのだ。

あっという間に、私は学年の半分を占める令嬢達に、ルードと親しくしているムカつく女だと敵認定されてしまったのだ!

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