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第十三章 全能神の逆襲

【書籍化記念】お祭りのお金を捻出するために赤い死神と暴風王女は演劇をやりました

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すみません。【書籍化記念】と言っても前に書き始めるとご報告した『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/302627913

の書籍化記念です。

人生で初めて、書いた小説がなんと、明日、6月26日に書籍化されるので今は感激のあまり言葉も出ません……本屋さんにならぶのは一日から三日くらい後だそうです。

ネット書店等でも予約販売は始まっていて、皆様方にも手に取って見て頂ければ幸いです。
その本の表紙はその物語に載せています。
フランのお転婆ぶりとピンク頭にまとわりつかれて困惑するアドが見えてとても微笑ましいです?


**************************************
「コレキヨ様。どうやっても数字が合いませんよ」
財務省所属になったステイーブが頭を抱えていた。
「うーん、なんとか出来ませんかね」
財務卿のコレキヨも頭を抱える。

今日も巨大執務室の一角を締める財務部は戦場だった。内務も大変だったが、無い金の算段をする財務部はもっと地獄だった。

財務省の面々は今日も足りない予算をどう辻妻合わせでやるか賢明に頭を悩ませていた。
特に最近は急な出陣が重なって、慢性的な赤字だ。それを財務部の面々が誤魔化し誤魔化し、運用していたのだが、流石に無から有を生み出す訳にはいかない。

「コレキヨ」
「これはアレク様とジャンヌ様、お揃いでどうされたのですか?」
「実はこの前の大文字の送り火がとても好評でな。何か他の祭りでもやらないかと兵士たちが煩いんだけど」
ジャンヌが能天気に言う。

「殿下。そのようなお金がどこにあるのですか? この前のノルディン帝国強襲戦の戦費さえ、どのように誤魔化そうかと悩んでいるのですよ。絶対に無理です」
財務卿の下でやりくりしていたスティーブが叫んでいた。

1平民のスティーブが、マーマレード王国の皇太子のジャンヌにこんな口調で言うなんて普通ならば不敬罪、まあ、クリスがトップに居る限り取られることはないが、に当たると思われるのだが・・・・。

「だそうです。両殿下、申し訳ありませんが、財務状況が危機的でして、資金援助していただける方がいらっしゃいましたら、なんとかなると思いますが」
すまなそうにコレキヨが言う。

普段は強気のジャンヌも、以前国が借金まみれなのが判明した時に、毎日おかゆ三昧にされた昔の記憶があるので、財務部には強気に出れない。それは赤い死神と自国のノルディン帝国内だけにとどまらず他国にも怖れられたアレクにしても同じだ。


「そうか、じゃあ街に降りて探すか」
アレクとジャンヌは久しぶりにホフミエの街に降り立った。



この国に来た時と比べると、比べようがないくらい人通りが多くなっている。昔は閑古鳥が鳴いていたし、いつ国が滅んでもおかしくなかった。それが今や、領土は3倍になり、シャラザール3国は元より、北の大国ノルディン帝国、東方の大国陳国、果ては新大陸まで、あらゆるところと交流があって、国都は大発展していた。

「すごいなアレク、知らぬ間に、街も発展しているぞ」
「まあ、ボフミエの復興具合の凄さは他国からも注目の下だからな」
ジャンヌの言葉にアレクが頷いた。


「なんだかすごい列があるけれど、あれは何だ」
「ああ、あれは今流行りの劇をしているところだろう。あれはエステラがやっているところじやないかな」
「えっ、エステラのところなのか。あんなに流行っているのか」
ジャンヌは驚いた。

「あれだけ儲かっているのならば、少しくらい出してくれるんじゃないか」
「そうだな、行ってみるか」
二人は劇が終わった時間に再度エステラの劇場を訪問した。

「これはジャンヌ殿下に、アレクサンドル殿下。ようこそお越しいただきました」
慌ててエステラ以下、一同が出迎えた。


「いやあ、ものすごく儲けて・・・・痛い」
「いやあ、ものすごく盛況だね」
アレクはジャンヌの脇腹を突っついていた。

「アレク、何も思いっきり突かなくても」
「まあ、ジャンヌ、ここは堪えどころだぞ」
二人が言い合う。


「相変わらず、お二人は仲がよろしいようで、お二人のファンの私としては嬉しい限りです」
それを見て、エステラが笑った。

「いやあ、そんなに仲がよく見えるかい」
アレクが喜んで言う。

「全然仲は良くないぞ」
ジャンヌがぶすっとして言う。

「またまた。今度のアレク殿下の救出作戦も、ジャンヌ殿下のアレク殿下を想われる必死さがクリス様を動かして、財務卿の許可が出たと巷では噂になっております」
「そうか、そこまでジャンヌは思ってくれたのか」
「ふんっ、貴様がいなくなったら、喧嘩する相手がいなくなると思っただけだ」
「本当にジャンヌ殿下もツンデレですね」
その二人の言い合いをエステラが微笑んで見ていた。

「でも、なんで最後にコレキヨが出てくるんだ?」
「いやあ、ボフミエ魔導国は急激に領地を拡大したので、今は先立つ物がなくて、どの部署も必死に財務卿の機嫌を取っておられると噂で聞きました」
「そうだったか、アレク?」
「あいつが頷いてくれたら、街まで金策に来ていないだろう」
ジャンヌの問いにアレクが答える。

「まあ、普通はそうかもしれないが、非常時はクリスさえ納得すればオーケーだぞ。今回はクリスの即決だった」
「まあ、そうなのですね。それで、今回私共をご訪問頂けましたのはどういった件でですか」
「実はこの前の大文字の送り火が好評で、何か祭りをしたらどうかと意見が上がって来たのだが、その財務卿に拒否されてしまってだな」
「金の面で何とかならないかと、エステラに頼みに来たのだ」
「お金ですか」
エステラは少し戸惑った表情をした。

「そんなに大きな金額はかからないとは思うのだが」
ジャンヌが珍しく下手に出る。
「何とかならないかな」
アレクも上目遣いに聞いてくる。

エステラはそれを見て決心したようだった。

「殿下。私達もお手伝いしたいのは山々なんですが、まだ、皆に給与を払うのが精一杯で、中々そこまで出せないと思うのです」
「そうか。お前たちが食えなかったら仕方がないな」
ジャンヌは残念そうに言った。
「でも、今、マーマレードとドラフォードの合弁会社から一つ提案を受けていまして、それならばなんとかなるかなと思うのです」
「どんな事なのだ。私達で何か手伝えることがあれば協力するぞ」
ジャンヌが喜んで聞いてきた。

「以前、クラスで行った演劇を魔導電話を通して全世界に放送したことが会ったではないですか。あれが大盛況でして、ぜひともまたやらないかと言われているのです」
「そんな事があったな」
ジャンヌは懐かしそうに言った。

「ただ、やはりまだこの劇団でやるのは力不足なのです。その時の人気投票で両殿下の戦いのシーンが素晴らしかったとの結果が出ているのです。出来たらもう一度出ていただければと思いまして」
「そんなに良かったのか」
「まあ、あの時は楽しかったが」
「まあ、多少は協力していいぞ」
「ありがとうございます。出来たら今回のノルディン侵攻戦を舞台にお二人主役でして頂けないかなと」
「えっ」
「この前のあれか。俺は何の役にも立っていないが」
嫌そうにアレクが言う。

「お二人の愛が邪神ゼウスに勝ったというテーマでぜひともやりたいのです。これをやることでボフミエ魔導国に正義があるという国威高揚にもなりますし、ゼウス側がいかに卑怯かということを表せると思うのです。これはボフミエ魔導国のためにぜひとも一肌脱いでいただけないでしょうか」

「えっ、そうか?」
アレクは即座に嬉しそうにしが、

「いやでも・・・・」
ジャンヌは少しためらう。

「これはボフミエの民のためでもあるのです。ジャンヌ殿下。宜しくお願いします」

「まあ、そこまで言うなら」
ジャンヌはエステラの熱意に負けてやむを得ず頷いたのだ。
それを後でジャンヌはその事を後悔したのだが、後の祭りだった。

1ヶ月の特訓の後で、その演劇は全世界に公開されたのだ。



「ギャーーーー」
最後のシーンで邪神ゼウスが二人の手に添えた宝剣、草薙の剣で叩き切られて飛んで行った。

二人は剣を落とすと喜びのあまり抱き合ったのだ。

執務室の大画面で皆に見られてジャンヌは真っ赤だった。その横でアレクがニタニタしていた。

画面が夕日のバックになって抱き合う二人がアップになる。

ジャンヌは両手で顔を覆った。このシーン、何回やり直したことやら。エステラは本当に鬼だった。

そして、二人のアップになってジャンヌの唇にアレクの唇が触れたのだ。

「これは」
「キャー」
「凄い」


皆は一斉に二人にやじを飛ばすし、もうジャンヌは真っ赤で手で顔を覆っていた。その横には少し照れるアレクがいた。


演劇は大成功、魔導電話を使った興行でも大成功で、設けの大半はホフミエの財務卿の手に渡って、破綻していたボフミエの財源も多少息をつくことが出来たのだ。

二人の恋愛話は一躍、全世界に広がって二人は暗黒邪神に対抗するヒーローとヒロインに認定されたのだった。
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