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第十三章 全能神の逆襲
大国皇太子は筆頭魔導師に積極的にアタックしようと心に決めました
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オーウェンはシャラザールがノルディン帝国の5万人を粉砕するのを見て、慌てて臨時のスカイバードに飛び乗った。
「ちょっとオーウェン、どこに行くんだよ」
「内務卿!」
「えええ、この仕事ほっていくんですか」
ヘルマンやシュテファンが叫ぶ中を無視して飛び出したのだ。
そろそろあいつらだけでも対処できるようにならないといけないはずだ。
機内は医療物資とかクリスの侍女のミアとアデリナを始め、クリスの文官たちを載せていた。
オーウェンは機内でも次々に指示を飛ばし、連絡するところは連絡していく。
まあ、メインは終わったのだし、あのままいる必要もあるまいと思い飛び出したのだ。
一番の理由はクリスが心配だったというのがあるが。
どこに恋人を戦場に送りたい男がいるというのだ。本来ならば絶対に反対だった。でも、戦力的にクリスが行かないと話にもならず、やむを得ず許可したのだ。
本来は自分も行きたかった。しかし、誰が後方を見ると言われると自分しかいなかったのだ。今回はテレーゼ女王のお力も借りたし、オーウエンがいるしか無かった。でも、そろそろ、どんどん移譲していくべきだとは思うのだ。実際にさせてみないと、オーウェンもアレクもコレキヨもいつまでもボフミエの地にはいないのだから。
しかし、クリスが本当に自分のもとに来てくれるのだろうか。そのままボフミエの地に残ると言われたらどうしたら良いのだろうか。
オーウェンは最近、そこが心配だった。
2時間の飛行でスカイバードはボフミエについた。
「これはこれはオーウェン様。ようこそ、このボフミエの地にお越し頂きました」
極秘で出てきたつもりが、腰巾着のトリポリ国王が迎えてくれた。
「この度は色々迷惑をかけたな」
「いえ、そのような滅相もございません。筆頭魔導師様は、王宮の客室にご案内させて頂きました」
さすがトリポリ国王。捕まえなければいけないところはしっかりと把握している。
と言うか絶対に
「シャラザールをだろう」
オーウエンが言う。
「いや、そのようなことはございません。筆頭魔導師様はこのトリポリ国の救世主でいらっしゃいます」
「本当にそう思っているのか」
「当然でございます。何しろアレクサンドル様は野戦病院でございますから」
「それはそれでクリスはまた、自分だけが特別扱いされたと嫌がるのではないか」
「クリス様は過労だけのようですし、明日には元気になられますでしょう。都合が悪ければその時に移動頂ければよいのではないですか」
「まあ、そうだな」
「で、こちらでございますよ」
案内された部屋は特別室のように豪勢な部屋だった。これは絶対に後で嫌がるとオーウェンは思ったが、取り敢えずなら良いだろう。
中の侍女たちがさっと引いていく。
「では、オーウエン様。くれぐれもシャラザール様を怒らすようなことはなさいませんように」
最後に釘を刺してトリポリ国王は出ていった。
「あいつ、好き勝手なことを」
オーウェンはブスリと言った。
オーウエンが好きにしようとしても、シャラザールの怒りが怖くてクリスには中々手は出せなかった。
というか、クリスはとても純情で下手にすると怒って一ヶ月も口を利いてもらえない可能性もあった。
その力加減がとても難しいのだ。
ベッドで寝ているクリスはとても可憐だった。
思わず、オーウェンはクリスの頬に触った。
昔怒って頬をふくらませるクリスの頬をよくつついてからかっていたな、と昔をオーウェンは思い出していた。
クリスが寝返りを打つ。クリスが布団からはみ出したので、布団をかけてやる。
クリスが熱を出して寝込んだ時があって、その時もずうっと傍にいて看病してやったことも思い出していた。
あの頃はクリスは自分のものだったのに、あれからいろいろあってクリスは今や押しも押されぬ筆頭魔導師となっていた。
ライバルも多いし、ムカつくことも多いが、一応自分は大国ドラフォードの皇太子で、今でもクリストは十分に釣り合うはずだった。
オーウェンはそのクリスの頬を撫でる。
クリスが微笑んだように見えた。
布団からはみ出しているクリスの手を握る。
クリスの手は暖かかった。
絶対にクリスを今度こそ、離してはいけない。
クリスの両親やドラフォード国内の外堀はある程度埋めたので、今後はクリスに積極的にアタックしようと、クリスの寝顔を見ながらオーウェンは心に誓ったのだった。
「ちょっとオーウェン、どこに行くんだよ」
「内務卿!」
「えええ、この仕事ほっていくんですか」
ヘルマンやシュテファンが叫ぶ中を無視して飛び出したのだ。
そろそろあいつらだけでも対処できるようにならないといけないはずだ。
機内は医療物資とかクリスの侍女のミアとアデリナを始め、クリスの文官たちを載せていた。
オーウェンは機内でも次々に指示を飛ばし、連絡するところは連絡していく。
まあ、メインは終わったのだし、あのままいる必要もあるまいと思い飛び出したのだ。
一番の理由はクリスが心配だったというのがあるが。
どこに恋人を戦場に送りたい男がいるというのだ。本来ならば絶対に反対だった。でも、戦力的にクリスが行かないと話にもならず、やむを得ず許可したのだ。
本来は自分も行きたかった。しかし、誰が後方を見ると言われると自分しかいなかったのだ。今回はテレーゼ女王のお力も借りたし、オーウエンがいるしか無かった。でも、そろそろ、どんどん移譲していくべきだとは思うのだ。実際にさせてみないと、オーウェンもアレクもコレキヨもいつまでもボフミエの地にはいないのだから。
しかし、クリスが本当に自分のもとに来てくれるのだろうか。そのままボフミエの地に残ると言われたらどうしたら良いのだろうか。
オーウェンは最近、そこが心配だった。
2時間の飛行でスカイバードはボフミエについた。
「これはこれはオーウェン様。ようこそ、このボフミエの地にお越し頂きました」
極秘で出てきたつもりが、腰巾着のトリポリ国王が迎えてくれた。
「この度は色々迷惑をかけたな」
「いえ、そのような滅相もございません。筆頭魔導師様は、王宮の客室にご案内させて頂きました」
さすがトリポリ国王。捕まえなければいけないところはしっかりと把握している。
と言うか絶対に
「シャラザールをだろう」
オーウエンが言う。
「いや、そのようなことはございません。筆頭魔導師様はこのトリポリ国の救世主でいらっしゃいます」
「本当にそう思っているのか」
「当然でございます。何しろアレクサンドル様は野戦病院でございますから」
「それはそれでクリスはまた、自分だけが特別扱いされたと嫌がるのではないか」
「クリス様は過労だけのようですし、明日には元気になられますでしょう。都合が悪ければその時に移動頂ければよいのではないですか」
「まあ、そうだな」
「で、こちらでございますよ」
案内された部屋は特別室のように豪勢な部屋だった。これは絶対に後で嫌がるとオーウェンは思ったが、取り敢えずなら良いだろう。
中の侍女たちがさっと引いていく。
「では、オーウエン様。くれぐれもシャラザール様を怒らすようなことはなさいませんように」
最後に釘を刺してトリポリ国王は出ていった。
「あいつ、好き勝手なことを」
オーウェンはブスリと言った。
オーウエンが好きにしようとしても、シャラザールの怒りが怖くてクリスには中々手は出せなかった。
というか、クリスはとても純情で下手にすると怒って一ヶ月も口を利いてもらえない可能性もあった。
その力加減がとても難しいのだ。
ベッドで寝ているクリスはとても可憐だった。
思わず、オーウェンはクリスの頬に触った。
昔怒って頬をふくらませるクリスの頬をよくつついてからかっていたな、と昔をオーウェンは思い出していた。
クリスが寝返りを打つ。クリスが布団からはみ出したので、布団をかけてやる。
クリスが熱を出して寝込んだ時があって、その時もずうっと傍にいて看病してやったことも思い出していた。
あの頃はクリスは自分のものだったのに、あれからいろいろあってクリスは今や押しも押されぬ筆頭魔導師となっていた。
ライバルも多いし、ムカつくことも多いが、一応自分は大国ドラフォードの皇太子で、今でもクリストは十分に釣り合うはずだった。
オーウェンはそのクリスの頬を撫でる。
クリスが微笑んだように見えた。
布団からはみ出しているクリスの手を握る。
クリスの手は暖かかった。
絶対にクリスを今度こそ、離してはいけない。
クリスの両親やドラフォード国内の外堀はある程度埋めたので、今後はクリスに積極的にアタックしようと、クリスの寝顔を見ながらオーウェンは心に誓ったのだった。
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