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第十三章 全能神の逆襲
暴風王女は赤い死神が心配のあまり戦神のことなど無視し、トリポリ国王は呆然としました
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シャラザールを欲求不満のまま強制転移させる少し前、クリスがやられてオーウェンが悲鳴を上げていた頃、テレーゼ女王オリビアは徐々に魔力をその魔道具に注入しだした。
「本当にこの魔道具に魔力を注入するだけでこの魔道具は作動するのか?」
半信半疑ながらオリビアは注入する。
「取扱説明書にはそう書かれていますわ。お母様」
アメリアが説明書を読みながら言う。
「ヘルマンは元気にしておるのか」
いきなりオリビアはアメリアの婚約者候補のヘルマン元ボフミエ魔導国第三皇子の事を持ち出した。
「えっ、まあ、はい」
「何故今回連れて来なんだ?」
「今は非常事態です。ヘルマンも作業があって無理でした」
「ふんっ、恋人の実家帰りにも付き合わずしてなにが王配候補だ」
アメリアの返答にオリビアは不満を漏らす。
「だから、お母様。ボフミエは人材不足なのです。本来ならば私も作業せねばならなかつたのですが、お母様にお願いするという最重要課題がありましたので、来ただけで」
「ふんっ、どの道作業の大半はオーウェンが一人でやっておろう」
「確かに指示はオーウェンがしてますが、ヘルマンの能力も日々上がっていますわ。なんでしたらお母様の文官の一人でも派遣頂けましたら、そのあたりの事もよく分かるかと思いますが」
「そうじゃな。5人ばかり派遣しよう」
そうじゃな、そうすればもっとアメリアの様子も判ることだし、オリビアは頭の中で計算する。
「ありがとうございます」
なんか監視されるみたいで嫌だったが、人が足らないのは現実だったので、素直にアメリアは受けることにした。
「しかし、アメリア、孫は婚姻が終わってからにしてくれよ」
「何を仰るのにです。まだキスさえしたことはございません」
そう言ってアメリアは真っ赤になった。何を話させるのだこの母は。
「ほう、そうなのか。それはそれで少し奥手すぎんか」
「うるさいですわ。ほっておいてください」
ああ言えばこう言う母にアメリアは翻弄された。
一方のオーウェンはクリスが倒れたが、シャラザールが出てきたのでほっとした。これで作戦は成功するはずだ。
今もライトニングブラスターでゼウスを弾き飛ばすのがはっきり見えた。
「なあ、オーウェン。このままじゃ、完全に勝ってしまうんじゃないか」
ヘルマンがぼそっと言った。
「いや、そんな訳はなかろう」
「しかし、シャラザール様は完全にゼウスを圧倒しているようにみえるが」
「しかし、作戦は作戦だ。メイたちの様子も気になるし、ここはトリポリに戻す必要があろう」
そこで信号弾が、2発上がるのが見えた。
「オーウェン。一応、アレクを確保した」
魔導電話が鳴ってジャンヌが報告してきた。
「内務卿。こちらも完了した」
ジャスティンも報告してくる。
「よし、最終作戦開始する」
オーウェンが指示を出した。
「女王陛下よろしくお願い致します」
オーウエンがオリビアに頭を下げた。
「後1分で魔力量注入はマックスになるぞ」
オリビアから返答があった。
「繰り返す。作戦は完了した。これより撤収する」
画面からはジャンヌが命じていた。
「うーん、戦神様はご納得されるのかな」
ボソリとヘルマンが言った。
「えっ」
オーウェンは慌てて画面を見た。
なにか戦神が叫んでいるが見えた。
戦神としてはもっと戦いたそうだった。
「このまま帰すとまずいのではないか」
「ヘルマン、ここまで来たらもうどうしようない」
オーウエンが言いきった。
「うーん、納得されるのかな」
「それは知らん」
そもそも、シャラザールが強すぎるのがいけないのだ。ジャルカの話ではゼウスと同等の力ということではなかったのか。でも画面を見る限りでは圧倒的にシャラザールの方が強かった。まあ、後はトリポリでなんとかしてくれるだろう。オーウェンは巻き込まれるトリポリ王のことなど全く考えていなかった。
その時オーウェンの携帯がなった。
「これはこれはオーウエン様」
トリポリ国王だった。
「何だ国王。今忙しいのだが」
ぶすっとしてオーウエンが答える。
「あのう、オーウェン様。戦神様がなにかお怒りのようだとお聞きしたのですが」
「な、なんじゃと。まだ余は全然戦っておらんぞ」
画面の上でシャラザールが叫んでいた。
画面の横でシャラザールが怒っているのが見えた。国王の横にも同じ画面があるはずだ。
「ああ、もう、うるさいな、ちょっと待て」、言うとオーウェンはジャンヌに聞いた。
「ジャンヌ。シャラザール様はまだ、戦い足りないとおっしゃっているが」
一応報告はしておく。
「はんっ、何を言っている。アレクの様子が心配だ。今はシャラザール様の我儘に付き合っている暇はない」
アレクに付き添って心配しているジャンヌは取り付く島もなかった。
「と言うことだ。トリポリ国王。後はよろしく頼む」
「えっ、そんな、オーウエン様、ちょっと・・・・ブチ」
まだなにか叫んでいるトリポリ国王の電話をオーウェンは強引に切った。
そして、その場にいなくて良かったとオーウェンは心底安堵したのだった。
「えっ、そんな、オーウェン様・・・・・」
トリポリの地で国王は呆然と立ち尽くすしか無かった。
「カウントダウン、3,2,1」
ジャンヌはトリポリ国王の心配など一顧だにせず容赦なくカウントダウンをすると起動ボタンを押したのだった。
「本当にこの魔道具に魔力を注入するだけでこの魔道具は作動するのか?」
半信半疑ながらオリビアは注入する。
「取扱説明書にはそう書かれていますわ。お母様」
アメリアが説明書を読みながら言う。
「ヘルマンは元気にしておるのか」
いきなりオリビアはアメリアの婚約者候補のヘルマン元ボフミエ魔導国第三皇子の事を持ち出した。
「えっ、まあ、はい」
「何故今回連れて来なんだ?」
「今は非常事態です。ヘルマンも作業があって無理でした」
「ふんっ、恋人の実家帰りにも付き合わずしてなにが王配候補だ」
アメリアの返答にオリビアは不満を漏らす。
「だから、お母様。ボフミエは人材不足なのです。本来ならば私も作業せねばならなかつたのですが、お母様にお願いするという最重要課題がありましたので、来ただけで」
「ふんっ、どの道作業の大半はオーウェンが一人でやっておろう」
「確かに指示はオーウェンがしてますが、ヘルマンの能力も日々上がっていますわ。なんでしたらお母様の文官の一人でも派遣頂けましたら、そのあたりの事もよく分かるかと思いますが」
「そうじゃな。5人ばかり派遣しよう」
そうじゃな、そうすればもっとアメリアの様子も判ることだし、オリビアは頭の中で計算する。
「ありがとうございます」
なんか監視されるみたいで嫌だったが、人が足らないのは現実だったので、素直にアメリアは受けることにした。
「しかし、アメリア、孫は婚姻が終わってからにしてくれよ」
「何を仰るのにです。まだキスさえしたことはございません」
そう言ってアメリアは真っ赤になった。何を話させるのだこの母は。
「ほう、そうなのか。それはそれで少し奥手すぎんか」
「うるさいですわ。ほっておいてください」
ああ言えばこう言う母にアメリアは翻弄された。
一方のオーウェンはクリスが倒れたが、シャラザールが出てきたのでほっとした。これで作戦は成功するはずだ。
今もライトニングブラスターでゼウスを弾き飛ばすのがはっきり見えた。
「なあ、オーウェン。このままじゃ、完全に勝ってしまうんじゃないか」
ヘルマンがぼそっと言った。
「いや、そんな訳はなかろう」
「しかし、シャラザール様は完全にゼウスを圧倒しているようにみえるが」
「しかし、作戦は作戦だ。メイたちの様子も気になるし、ここはトリポリに戻す必要があろう」
そこで信号弾が、2発上がるのが見えた。
「オーウェン。一応、アレクを確保した」
魔導電話が鳴ってジャンヌが報告してきた。
「内務卿。こちらも完了した」
ジャスティンも報告してくる。
「よし、最終作戦開始する」
オーウェンが指示を出した。
「女王陛下よろしくお願い致します」
オーウエンがオリビアに頭を下げた。
「後1分で魔力量注入はマックスになるぞ」
オリビアから返答があった。
「繰り返す。作戦は完了した。これより撤収する」
画面からはジャンヌが命じていた。
「うーん、戦神様はご納得されるのかな」
ボソリとヘルマンが言った。
「えっ」
オーウェンは慌てて画面を見た。
なにか戦神が叫んでいるが見えた。
戦神としてはもっと戦いたそうだった。
「このまま帰すとまずいのではないか」
「ヘルマン、ここまで来たらもうどうしようない」
オーウエンが言いきった。
「うーん、納得されるのかな」
「それは知らん」
そもそも、シャラザールが強すぎるのがいけないのだ。ジャルカの話ではゼウスと同等の力ということではなかったのか。でも画面を見る限りでは圧倒的にシャラザールの方が強かった。まあ、後はトリポリでなんとかしてくれるだろう。オーウェンは巻き込まれるトリポリ王のことなど全く考えていなかった。
その時オーウェンの携帯がなった。
「これはこれはオーウエン様」
トリポリ国王だった。
「何だ国王。今忙しいのだが」
ぶすっとしてオーウエンが答える。
「あのう、オーウェン様。戦神様がなにかお怒りのようだとお聞きしたのですが」
「な、なんじゃと。まだ余は全然戦っておらんぞ」
画面の上でシャラザールが叫んでいた。
画面の横でシャラザールが怒っているのが見えた。国王の横にも同じ画面があるはずだ。
「ああ、もう、うるさいな、ちょっと待て」、言うとオーウェンはジャンヌに聞いた。
「ジャンヌ。シャラザール様はまだ、戦い足りないとおっしゃっているが」
一応報告はしておく。
「はんっ、何を言っている。アレクの様子が心配だ。今はシャラザール様の我儘に付き合っている暇はない」
アレクに付き添って心配しているジャンヌは取り付く島もなかった。
「と言うことだ。トリポリ国王。後はよろしく頼む」
「えっ、そんな、オーウエン様、ちょっと・・・・ブチ」
まだなにか叫んでいるトリポリ国王の電話をオーウェンは強引に切った。
そして、その場にいなくて良かったとオーウェンは心底安堵したのだった。
「えっ、そんな、オーウェン様・・・・・」
トリポリの地で国王は呆然と立ち尽くすしか無かった。
「カウントダウン、3,2,1」
ジャンヌはトリポリ国王の心配など一顧だにせず容赦なくカウントダウンをすると起動ボタンを押したのだった。
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