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第十三章 全能神の逆襲

結局外務次官は帝国皇子と皇女と一緒に皇帝の館に忍び込むことになりました。

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「全員手を上げろ」
魔術師の一人が叫んでいた。

「どういうつもりだ。私がボリス皇子だと知っての狼藉か」
ボリスが魔術師に文句を言った。

「これは殿下失礼いたしました。私は皇帝直属機関の魔術部隊でございます」
「暗部ね」
エカテリーナが言った。
「左様でございます。今、殿下の携帯から敵ボフミエ魔導国宛に電波が発信されるのを確認いたしました。そして、ここに敵国の外務の人間も確認いたしました」
男はペトロを顎で指していった。

「いつからボフミエ魔導国は敵国になったのだ。私は聞いてないぞ」
ボリスが言う。

「それは3時間前に皇帝陛下がご決断されたのです」
「知らなかったのだから仕方がないだろう」
「左様でございますな。そのボフミエの人間をお渡し頂ければ」
男は指さしていった。

「ボフミエが敵国になったということは皇太子殿下も捕まられたのか」
「お兄様も捕まったの?」
ボリスの言葉にエカテリーナも聞く。

「さあ、それはわかりかねます」
男も口を割らなかった。

「そうか。で、この男は地下監獄行きなのか」
「まあ、当然そうなりますな」
「お兄様もそうなの」
「さあ、そこは判りかねます」
男は彼らの手に乗らなかった。

「まあ、いいや、じゃあペトロを渡せば良いんだね」
「お願いできますか」
男は喜んだ。ペトロは驚いた顔をしてボリスを見めとボリスが片目をウインクした。
ペトロははっとする。

そのボリスから卵型のものが暗部のトップの男に無造作に投げられた。

「えっ」
男たちの反応が一瞬遅れた。

しかし、男が爆裂魔術をその卵に向けて放つ。

その瞬間、凄まじい閃光が起こった。

それは目眩ましだつた。

ペトロは目をつむると、強引に手を引かれた。
「こっちだ」
地下通路に放り込まれる。ペトロは危うく脚を骨折しそうになった。

かろうじて着地する。
軽やかにエカテリーナがその横に着陸する。

「こっちだ」
ボリスが駆け出す。
それにエカテリーナが続き、閃光を少し見てしまったペトロは少し目が見えにくくなっていて
なんとかよたよたと駆け出した。

通路は複雑に入り組んでおり、それをボリスが次々に曲がっていく。

「ボリス、足手まといがついて来ていないわよ」
「えっ、本当ですか。参ったな」
ボリスは慌てて止まった。
そこへよたよたペトロが走ってきた。
「ペトロ遅いわよ」
エカテリーナが怒って言った。

「ごめん、ちょっと見えにくくて」
ふうふう言いながらペトロが言い訳した。

「止むを得ない」
ボリスはそう言うと、傍の小さい部屋に天井の通気口を開けて入った。

「この汚い部屋は何なの?」
「僕の隠れ部屋ですよ」
ボリスが答える。

「そうか、お兄様に呼ばれた時にここに逃げていたのね」
「姉様。ものには言いようがあるでしょ」
ボリスがブツブツ文句を言う。

「ふんっ、で、どうするのよ」
「まずお兄様の場所を調べないと」
ボリスが言った。

「地下監獄じゃないみたいよね」
「地下監獄って何ですか」
ペトロの問にボリスが手に持っている装置を操作して空間に立体の地図を投影した。

「えっ、すごいですね」
普通はこんなことは中々出来ない。

「まあ、僕も命がけだったからね」
ボリスが謙遜して言う。

「この宮殿の端の地下にある。政治犯が閉じ込められるところだ。僕も昔閉じ込められた事があるんだ」
いまいましげにボリスが言った。

「何やったのよ」
「クリス様とウィルを助けたんだよ」
「ああ、あなたがマーマレードに利敵行為したっていうあれね」
訳知り顔でエカテリーナが頷く。

「えええ?、でも、あれはアレクお兄様と一緒にやったんですけど」
「嘘おっしゃい。お兄様がそんな事するわけ無いでしょ」
エカテリーナが否定するが、

「えっ、やっぱり聞いていないんだ」
「どういうことよ。言いなさいよ」
ボリスにエカテリーナが凄んだ。

「君らのお母様をアレク兄様が、恋人の敵だって殺したんだ」
「えっ、嘘!」
エカテリーナはショックを受けたみたいだった。

「アレク様がご自身の母親を手に掛けたってこと?」
ペトロは驚いて聞いた。

「そうだ。まあ、叔母様はニタニタ笑いながら、アレク兄様の恋人を彼の父親らに傷物にさせて殺させたみたいなんだ」
「えっ、皇帝陛下が」
「違うよ。アレク兄様とエカテリーナ姉さまはは第一王子マクシム兄様とアフロディア様のお子なんだ」
「えっ、皇帝の息子との不倫の子だというのか」
ペトロは驚いた。
「公然の秘密だけどね」
ボリスが言う。その言葉にエカテリーナも驚いていないみたいで、事実なのだとペトロは察した。

「まあ、お母様は本当に淫乱だったから、そうかなとは思っていたのよ。お母様は本当に人権の屑だだったから、それはお兄様に殺されても仕方がないわ」
「そうなのか」
ペトロは唖然と聞いていた。

「まあ、母親が別の僕が言う事じゃないけれど、お姉様の言うとおりだと思うよ」
ボリスも頷いた。

「そうなんだ」
ペトロはもはや頷くしか出来なかった。

「で、アレク様はどこにいると思う?」
「うーん宮殿にいるのならば、皇帝のスペースじゃないかな。皇帝専属の宮殿の建物がこれ」
「これか、めちゃくちゃ大きいじゃないか」
ペトロはボリスに図示されたものを見て言った。
ボフミエの宮城全ての大きさくらいあった。

「探すなら、仕方がないから潜り込むしかないよ」
ボリスは言った。
「えっ、でも、警備が厳しいんだろ」
ペトロが躊躇して言った。

「じゃあ君は地下監獄に入るのか。このままじっとしていてもいずれ見つかるぞ。そして、一度入ったら出られないけど」
ボリスは脅した。

「えっ、本当ですか」
「ボフミエの外務次官を簡単に返してくれるとでも思うの? 拷問にかけられて洗いざらいボフミエのことは課されるんじゃないの? まあ、それでも良いけど」
ボリスが突き放した。

「ここまで来たらあれく兄様を開放して一緒に逃げるほうが確率は上がるよ」
「仕方がないわね。私も行くわ」
躊躇するペトロより前にエカテリーナが頷いた。

「でも、危険ですよ」
「あんたら二人よりも魔力は私のほうがあるんだから頼りになるはずよ。どの道私も追われているし。いざとなったら見捨てるからね」
「まあ、それはお互い様ということで」
そう言うとボリスは外に出ていった。
「じゃ行くわよ」
エカテリーナが続いた。

「えっ、ちょっとまってくださいよ」
置いていかれてはたまらないとペトロも慌てて追いかけるしか無かった。

これは絶対に生きて帰れないのでは・・・・・
そう思いながら、もううまくいくことに賭けるしか無かった。
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