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第十二章 婚活と雪女

雪女は自らの肌の色に絶叫しました

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ドラフォード王妃キャロラインとマーマレード王妃エリザベスとクリスの母のシャーロットはお茶をしていた。今日も穏やかと言うか亜熱帯のボフミエは暑かった。

こちらに来て5日目だ。5日目ともなると忙しいのか子供たちはもう相手もしてくれなかった。

唯一、オリビアだけは今日もアメリアとヘルマンに連れられて義務教育の小学校を見学に行っていた。アメリアとヘルマンは女王の心象を良くするのに必至だった。
ボフミエの閣僚たちはまあ、教育省の視察ならば問題ないと、諦めていた。それに資金の多くをテレーゼが出してくれているのも事実だったし、その資金源がクリスが撃破したGAFAの資産だとしてもだった。


「母上もそろそろお帰りになられてはどうですか」
キャロラインは息子とクリスの婚約の話は何の進展もないまま、息子のオーウェンからは冷たく帰れと言われる始末だ。

執務室での息子らの働きを見ていると確かに自分らが邪魔しているようにも見える。

オーウェンにしてもクリスにしても忙しそうに働いていた。毎日1回は食事は一緒にとってはくれているのだが、子供たちの邪魔はしているのは事実だった。ここは新興国で組織は出来上つておらず、ドラフォード本国よりも数倍は忙しそうだった。

息子とクリスのことは心配だったが、彼らは今はそれどころではないみたいだった。

もっともオーウェン自身は母のことは無視するくせにクリスの母のシャーロットには好印象を持ってもらいたいらしく、暇を見つけては訪ねてきた。その度にすぐに文官達が迎えに来るというのもパターンだった。


「お義母様。こちらにいらっしゃいましたか」
そして、もう一人、毎日訪ねてくるのがアレクだった。

「外務卿。私はまだ義母ではありませんよ。まあ、ジャンヌを貰ってくれるのならばこんなに嬉しいことはありませんが・・・・」
エリザベスが言った。
暴風王女と呼ばれて恐れられているジャンヌもらってくれるものは中々いないはずだった。
北の仮想敵国の皇太子ということを除けば即座に婚姻を認めているところだった。

「しかし、毎日のように私達を相手してもらって宜しいのですか」
キャロラインが聞く。

「何をおっしゃいます。私はこの国の外務卿なのです。
ボフミエの最重要同盟国のドラフォードとマーマレードの王妃様と筆頭魔導師様の母上のお相手をするのは当然のことではありませんか」
如才なくアレクは笑みを浮かべて言った。

確かに3人の相手をするのは外務卿の役目だし、彼女らにしても赤い死神として恐れられているノルディン皇太子と仲良くなるということは今後の国の運営にプラスにはなるだろう。

まあ、こんな短時間で赤い死神の本性を知れるとは思っていなかったが、今後の外交上はプラスになるのは確実だった。それに、彼が入婿としてマーマレードに入るならば本当に親戚づきあいが始まってしまうのだ。

足繁く王妃達の所に通うアレクに対する王妃達の心証は良かった。

将を得るならばまずその母からだとアレクは肝に銘じていた。

「うっ」
そのアレクを見ながらシャーロットは何故か悪寒が走った。
それはアレクも同じであったらしい。

慌てて二人はあたりを見渡す。

「どうかしたの」
キャロラインが聞いてくる。

「いえ、気のせいかと」
シャーロットはそうは言ったが、確実に何か良からぬものが近くに来たことを掴んでいた。

「何か良からぬものが忍び込んだようですな。シャーロット夫人。こちらをお任せしても宜しいですか」
アレクがそう頼み、周りの護衛騎士らに合図すると転移していった。


「どうした、ジャンヌ」
王宮の指揮室ではジャンヌらが監視カメラの画像を見ていた。

「うん、判らないが、何かが転移で忍び込んだに違いない」
「グリフィズ、何か見つかったか」
クリフィズは監視カメラを次々に切り替えて探している。
「今はまだ」
「ロルフ、何か見つけたか」
ジャンヌが魔導電話で聞く。魔力の大きさの判るロルフが王宮の展望室から王宮を見下ろしていた。

「いえ、まだ何も」
「絶対に何かいるはずだ。監視を強化させろ。魔導師の可能性がある。幻影で誤魔化している可能性もある。王宮内の全魔道士に警戒態勢を」
ジャンヌは全員に魔導電話で指示を飛ばす。


その頃雪女は転移したもののそのむっとした暑さに閉口していた。
この暑さは即座に逃げ帰りたい暑さだった。

木の茂みの中に入り、周りの温度を下げる。

「ふうーー。何とか生き返ったぞ。確か、この辺りにチャドウィックの気配を感じたのだが」
雪女は木陰から周りを見渡した。

そして、その視界に女の子に必至に声をかけているチャドウィックを捕まえていた。

チャドウィックはシャラザールにボコボコにされてから、クリスを妻に迎えるのは流石に諦めた。代わりに女魔導士に片っ端から声をかけ始めたのだ。そして、それは今では女なら誰でも良いというふうに変わっていたのだが、中々捕まる女性がいなかった。

そして、その目の前に黒髪に白い衣装を着た女が現れてチャドウィックは喜んだ。

なんとその女性はこちらに向かって歩いてくるではないか。

女から凄まじい冷気が漂ってくるし、何故か女の足元が凍っていて、絶対に怪しいのだが、チャドウィックはお構いなしに自ら進んで女に近づいた。

「ヘーイ。お嬢さん。そちらの椅子でナムでも飲まない」
怪しすぎる黒人が訳のわからないものを飲めと言っているので女達は引いていたのだが、その女はニヤリと笑った。

「おおお、お嬢さん。その笑顔とてもきれいです。その黒光りしている頬もつるつるしてとても良いよ」
チャドウィックは褒めたつもりで言った。

雪女は褒められ慣れていたので、いつものことだと微笑もうとして失敗した。

「黒光りする頬???」
何だそれは。雪女の肌は白いはずだ。
白い美しい肌が雪女の象徴で自慢だった。

「お肌も黒くてきれいだよ。でも完全な黒じゃなくて、君ってハーフなの」
チャドウィックの言葉に雪女は絶句した。

そして、恐る恐る地面の氷に映る自分の顔を見た。

「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

その絶叫は宮殿中に響き渡った。
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