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第十二章 婚活と雪女

南国皇太子はクリスの騎士達によって、自分がいかにお山の大将であったか身を以て思い知らされました

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クリスは慌ててオーウェンに駆け寄った。

「オウ、大丈夫!オウ!」
クリスがオーウェンを抱き起こす。

「姉様。オーウェンは大丈夫だから」
「そうです。あんな攻撃でびくともしているわけはありません。いつもシャラザール様にもっとひどい扱いを受けていますから」
ウィルとアルバートがフォローするがクリスは全く聞いていない。

クリスが揺り動かすもオーウェンは全く目を覚まさなかった。

「オウ!」
クリスの胸に抱かれて何故か幸せそうな顔をしている。

「スピーーー」
そして、そのオーウェンから幸せそうな寝息が聞こえてきた。
ウイルとアルバートは目を見合わせた。
「何、寝ているの」
ほっとしてクリスが言う。

「まあ、このところ王妃様がいらっしゃる準備等で睡眠時間を切り詰めておられましたから」
内務次官代理のシュテファンが言う。

「グリフィズ様。今後訓練場ではこのような決闘は禁止します。訓練も勝負ついたと思ったら即座に審判が止めるように」
「えっ、そんなの姉上、やってられない・・・・」
「何か言った、ウィル!」
ウィルは低いクリスの声にビクッとした。

「何でもないです」
慌ててウィルは首を振った。こんな声を出す姉に逆らってよかった例はなかった。

「あの馬鹿皇太子への対処はいかが致しますか」
イザベラが聞いてきた。

「イザベラ。あれでも一応、他国の皇太子殿下です。言葉遣いには気をつけて。魔力を暴発したのは私のミスですので、明日、落ち着かれたら謝罪の場をセッティングして下さい。私が謝ります」
「そんな姉上が謝る必要なんてないよ」
「そうですクリス様。けんかを売ってきたのはあちらです。なんでしたらこれから絞めておきますから」
ウィルとアルバートが言うが、言うが、

「悪いことをしたら謝るのは当然のことです。余計なことはしないように」
クリスは釘を刺した。

「えっ」
「まあ」
二人は笑って誤魔化した。絶対に余計なことをしそうだったが、まあ、井の中の蛙に世間を知らせるのも必要かもしれないとクリスは無視することにした。

そして、城壁に叩きつけられてニヒラニヒラ笑っているチャドウィックを見つけた側近たちは気が触れたのか訝しんだ。

しかし、チャドウィックは自分の世界に入り込んでいただけで、元気だった。

「ふふん、ボフミエも大したことないな。俺が一番なんて」
助け起こされたチャドウィックは胸を張って自慢した。

そのチャドウィックめがけて投げられた剣の鞘が頭に激突する。

もう一度チャドウィックは城壁に激突していた。

「おのれ誰だ投げたのは」
チャドウィックは叫んでいた。

「何ふざけたことを言っているんだ。オーウェンの腕前はボフミエでは手指の数に入っていないんだよ」
ウィルがチャドウィックの前に転移して言った。

「そうか、そう言うことは俺がボフミエでトップか」
細かいことは聞いていなかったチャドウィックだった。

「何聞いてやがる」
そのチャドウィックの頭を殴ろうとしてチャドウィックは躱す。

「何をする小僧」
「自慢するのは俺に勝ってからにしな。口先皇太子」
「クリスの弟相手にやりたくないんだが」
「姉さまを呼び捨てにするな」
剣を振り下ろしたウィルの剣筋をチャドウィックが間一髪で避ける。

「ふんっ、やるか」
チャドウィックは剣を抜いた。

「行くぞ」
ウイルはいきなり衝撃波を放った。

チャドウィックはそれを間一髪で避けるがそこに模擬剣が迫っていた。

一瞬でチャドウィックは剣で殴り倒された。

「卑怯だぞ。魔術を使うなんて」
チャドウィックは叫んでいた。

「何言っている、南の皇太子さんよ。ここはボフミエ魔導国だ。魔術を使うのが当然なんだよ」
ウィルはそう言うともう一度剣でチャドウィックを弾き飛ばしていた。

チャドウィックは地面とキスしていた。口の中に砂が入る。

「おのれ」
頭を振りながらなんとかチャドウィックは立ち上がった。

「ふん、南の皇太子よ。剣だけが良ければ私がお相手しよう」
ウイルの横に出て来たアルバートが剣を抜き放っていった。

「参られよ」
剣を構える。

「おのれエエエ」
チャドウィックはいきり立って剣を振りかぶって斬りつけてた。

それを軽くアルバートは躱す。

次々に斬りつけてくるチャドウィックの剣を全て躱した。

「はっはっはっ」
チャドウィックは息が荒くなってきた。

「では参る」
攻守所を変えた。アルバートは言うや、流れるような速さでチャドウィックに斬りかかった。

チャドウィックは必至に躱そうとしたが、少し足りずに顔面を思いっきり叩かれて地面に叩きつけられた。

アルバートの剣は強烈だった。地面に這いつくばらされたチャドウィックの頭の中を天使が舞っていた。

アルバートには全くチャドウィックては太刀打ちできなかった。

上には上がいるのがチャドウィックには初めて判った。


「あら、皇太子殿下。もう終わりですか」
地面に這いつくばっているチャドウィックに、不気味な笑みを浮かべたナタリーとメイが立っていた。チャドウィックは初めて女に背を向けて逃げたくなった。

その日、チャドウィックは自分がいかにお山の大将であったか、自分がぼろぼろにされてやっと自らの身を以て知ったのだった。

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ここまで読んで頂いてありがとうございました。続きは明日朝更新予定です。
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