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第十一章 パレルモ王国の陰謀
閑話 大国王妃とクリスの母の婚活電話で二人がボフミエに来ることになりました
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シャーロットはその日、クリスに届いた釣書を選り分けていた。
クリスに対する釣書は最近は新大陸からも多く届くようになっていた。
しかし、クリスの婚約者を選ぶのも中々大変だった。帯に短し襷に長しで中々良い縁は見つからなかった。
クリスは今はボフミエ魔導国の筆頭魔導師をしている。ボフミエ魔導国の筆頭魔導士の地位は、魔導国だけあって国のトップだ。それも何故か、自国マーマレードを始め、南の大国ドラフォード、北の大国ノルディン、隣の同盟国テレーゼ、東の島国のジパグの皇太子と、東の大国陳王国の王女を配下に従えていた。その他にも配下の皇太子、王子王女の数は両手の指の数を超えた。
マーマレードの一侯爵家の令嬢に過ぎない娘の配下にだ。通常ならばあり得ないことだった。まあ、最強の戦神であり、シャラザール帝国の始祖シャラザールが憑依しているからでもあったが。
母としては自国の貴族と婚姻を結ぶというもっと平穏な結婚生活をしてほしかったのだが、こうなると中々難しかった。
自国のマーマレードの皇太子の婚約者にさえ、本来はなってほしくなかった。普通の幸せな結婚をしてほしかったのだが。
そのクリスの配偶者となると、今はそのボフミエ魔導国の王配的立場だ。中途半端な地位や爵位の者では潰れるのは確実だった。何しろ配下に従えているのは大国の皇太子、それも個性派揃いなのだ。
一番良いのは、今のボフミエ魔導国の閣僚すなわち皇太子の誰かが貰ってくれることだが、それもいろんな国際問題を呼ぶのは確実だった。
「あら、この方は良いかもしれないわね」
そんんなことを考えながら釣書の山を見ているとその中のひとりに目を向けた。
ドラフォードの南部に位置するサウス王国。大きさはマーマレード王国の半分くらいの大きさの黒人国家だが、その軍の強さは下手したら世界最強かもとドラフォード王国にも一目置かれている国だ。その皇太子、チャドウィックからの申し込みがあったのだ。
年も26とクリスとは7つ違い。精悍な体つきはクリスの守護者としては最適かもとシャーロットは思ってしまった。
一国の皇太子を娘の守護者と思ってしまうのもどうかとは思ったが、そこに魔導電話が鳴った。
「これはこれはキャロライン様」
画面に出てきたのはドラフォードの王妃だった。
「シャーロット、元気にしていた?」
「はい。おかげさまで。王妃様もお元気ですか?」
「それが少し、精神的に参ってるのよ。あなたに助けてほしくて電話したんだけれど」
「私など役に立つとは思えませんが」
シャーロットは不吉な予感しかしなかった。が、ここは冷静に返した
「何を言ってるのよ。私の悩みなんて判っているでしょ。国内の貴族の奥様連中から圧力が半端ないのよ。早く決めろって。あなたが頷いてくれたらそれで済むんだけれど。そろそろどうかしら?」
小首をかしげる。
男性ならばそれでころりと行くかもしれないが、それを私にされてもとシャーロットは戸惑いながらも同じく小首をかしげる。お互いに旦那ならそれで一発かもしれないが、元王女とその侍女でやっても意味がないのではないかとシャーロットは思った。
「キャロライン様。オーウェン様とクリスのことですか」
諦めてシャーロットが口に出す。
「そう、いい加減に頷いていただけないかしら」
顔は笑っても目は笑っていなかった。
「しかし、娘は公の場で自国の皇太子殿下に婚約破棄された身ですし・・・・」
「その言い訳はもう良いわよ。聞き飽きたし。もう時効よ。今やクリスはボフミエ魔導国の筆頭魔導師様なのよ。魔王を退治して、ノルディン帝国を攻撃した英雄じゃない」
「英雄???。それほめ言葉ですか。単なるお転婆と言うかどうしようもないということですよね」
キャロラインの言葉にシャーロツとは食いついた。女性に対する褒め言葉では絶対にない。本来は男性がそう呼ばれたら喜ぶ言葉だ。
「まあまあ、始祖シャラザールはそう呼ばれていたんだから。そうか女帝だったっけ。戦神シャラザールの通った跡にはペンペン草ですら生えないだったっけ・・・・」
慌てて言い直すが、まったく婚活する女性への褒め言葉ではなかった。
「そう呼ばれる女性を嫁に取りますか。それ、普通、皆、避けますよね」
怒ってシャーロットは言う。
「まあまあ、ありとあらゆる国から婚姻の申込みも来ているでしょう。私の国では役不足かしら」
「何をおっしゃっていらっしゃるやら。ドラフォードは超大国ではないですか。我が娘では、到底宮廷内での諸々の事に対処しきれないかと」
「何を言っているのよ。クリスは今でも、各国の皇太子を顎で使っているのよ。うちの宮廷なんて問題もないでしょう」
「顎で使うなんてとんでもありませんわ」
「だってノルデインの皇太子に向かってノルディン帝国の陳国への出兵を取りやめるように命令したんでしょ」
「王妃様、そこはクリスはアレクサンドル様に土下座してお願いしたと聞いておりますが」
「それを見て赤い死神は真っ青になって頼むから止めてくれって土下座し返したって聞いたけれど」
キャロラインは面白そうに言った。
「個性の強い皇太子連中をまとめていけるんだから十分よ」
「でも、ドラフォードは大きな国で、貴族の方々もたくさんいらっしゃいますし、小国の侯爵家出身の娘ではなかなか厳しいかと・・・・」
「何言っているのよ。ミハイル家は元々しゃラザール帝国の筆頭侯爵家。シャラザール様の第一子が嫁がれたと言われる家柄よ。それにあなたはテレーゼの公爵家出身じゃない。家柄的には全然問題はないわ。それにこの前来た時に反対派の貴族たちの大半を賛成派に変えたのはクリスよ。筆頭公爵家を先頭に。軍部なんてうちの陛下よりも掌握しているじゃない。今もうちの最強の東方第一師団があなたの娘の下にいるんだけれど。うちの陛下は、陛下の命令よりもクリスの命令を聞くってお冠なんだから」
「舅様と上手く行かないと問題では」
「大丈夫よ。その母親をクリスは完全に籠絡しているじゃない。私は未だに認めてもらっていないのに。大姑と姑が味方なんだから、陛下は何も文句は言えないわよ」
そもそもドラフォード国王といえども、クリスに憑依しているシャラザールに逆らえるわけはなかったのだが。
シャーロットもそこまで言われると言葉の返しようもなかった。基本は娘が決めることだが、というか、既に娘の身分はボフミエ魔導国の国主であり、地位的には父や母よりも高かった・・・
「ちょっと、シャーロットあなた、その手の男、サウスの皇太子じゃない」
いきなりキャロラインがシャーロットの手元を見て声を上げた。
「えっ、これは」
シャーロツとは慌てて隠そうとしたが遅かった。
「あのサウス王国め。余計な手を出して。こうしてはいられないわ。シャーロット!私は縁談をまとめにボフミエに参ります」
いきなりキャロラインは積極的に動き出した。
「しかし、キャロライン様・・・・」
「サウス国には先を越されるわけには行かないわ。あなたも久しぶりに娘の所に遊びにいらっしゃい。詳しいことはボフミエで話しましょう」
「えっ、ちょっとキャロライン様」
シャーロットが声をかけた時にはもう電話は切られた後だった。
「本当にキャロライン様は言い出したら聞かないんだから」
シャーロットは元々キャロラインの侍女だったので、キャロラインのことはよく判っていた。
こうなっては仕方がない。シャーロットも早急にボフミエに行こうと動き出したのだった。
************************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
この二人の入国を中心に月曜日から新章開始です。
クリスとオウの二人の間はどうなるのか。
新たなライバルが出現して話は展開します。
クリスに対する釣書は最近は新大陸からも多く届くようになっていた。
しかし、クリスの婚約者を選ぶのも中々大変だった。帯に短し襷に長しで中々良い縁は見つからなかった。
クリスは今はボフミエ魔導国の筆頭魔導師をしている。ボフミエ魔導国の筆頭魔導士の地位は、魔導国だけあって国のトップだ。それも何故か、自国マーマレードを始め、南の大国ドラフォード、北の大国ノルディン、隣の同盟国テレーゼ、東の島国のジパグの皇太子と、東の大国陳王国の王女を配下に従えていた。その他にも配下の皇太子、王子王女の数は両手の指の数を超えた。
マーマレードの一侯爵家の令嬢に過ぎない娘の配下にだ。通常ならばあり得ないことだった。まあ、最強の戦神であり、シャラザール帝国の始祖シャラザールが憑依しているからでもあったが。
母としては自国の貴族と婚姻を結ぶというもっと平穏な結婚生活をしてほしかったのだが、こうなると中々難しかった。
自国のマーマレードの皇太子の婚約者にさえ、本来はなってほしくなかった。普通の幸せな結婚をしてほしかったのだが。
そのクリスの配偶者となると、今はそのボフミエ魔導国の王配的立場だ。中途半端な地位や爵位の者では潰れるのは確実だった。何しろ配下に従えているのは大国の皇太子、それも個性派揃いなのだ。
一番良いのは、今のボフミエ魔導国の閣僚すなわち皇太子の誰かが貰ってくれることだが、それもいろんな国際問題を呼ぶのは確実だった。
「あら、この方は良いかもしれないわね」
そんんなことを考えながら釣書の山を見ているとその中のひとりに目を向けた。
ドラフォードの南部に位置するサウス王国。大きさはマーマレード王国の半分くらいの大きさの黒人国家だが、その軍の強さは下手したら世界最強かもとドラフォード王国にも一目置かれている国だ。その皇太子、チャドウィックからの申し込みがあったのだ。
年も26とクリスとは7つ違い。精悍な体つきはクリスの守護者としては最適かもとシャーロットは思ってしまった。
一国の皇太子を娘の守護者と思ってしまうのもどうかとは思ったが、そこに魔導電話が鳴った。
「これはこれはキャロライン様」
画面に出てきたのはドラフォードの王妃だった。
「シャーロット、元気にしていた?」
「はい。おかげさまで。王妃様もお元気ですか?」
「それが少し、精神的に参ってるのよ。あなたに助けてほしくて電話したんだけれど」
「私など役に立つとは思えませんが」
シャーロットは不吉な予感しかしなかった。が、ここは冷静に返した
「何を言ってるのよ。私の悩みなんて判っているでしょ。国内の貴族の奥様連中から圧力が半端ないのよ。早く決めろって。あなたが頷いてくれたらそれで済むんだけれど。そろそろどうかしら?」
小首をかしげる。
男性ならばそれでころりと行くかもしれないが、それを私にされてもとシャーロットは戸惑いながらも同じく小首をかしげる。お互いに旦那ならそれで一発かもしれないが、元王女とその侍女でやっても意味がないのではないかとシャーロットは思った。
「キャロライン様。オーウェン様とクリスのことですか」
諦めてシャーロットが口に出す。
「そう、いい加減に頷いていただけないかしら」
顔は笑っても目は笑っていなかった。
「しかし、娘は公の場で自国の皇太子殿下に婚約破棄された身ですし・・・・」
「その言い訳はもう良いわよ。聞き飽きたし。もう時効よ。今やクリスはボフミエ魔導国の筆頭魔導師様なのよ。魔王を退治して、ノルディン帝国を攻撃した英雄じゃない」
「英雄???。それほめ言葉ですか。単なるお転婆と言うかどうしようもないということですよね」
キャロラインの言葉にシャーロツとは食いついた。女性に対する褒め言葉では絶対にない。本来は男性がそう呼ばれたら喜ぶ言葉だ。
「まあまあ、始祖シャラザールはそう呼ばれていたんだから。そうか女帝だったっけ。戦神シャラザールの通った跡にはペンペン草ですら生えないだったっけ・・・・」
慌てて言い直すが、まったく婚活する女性への褒め言葉ではなかった。
「そう呼ばれる女性を嫁に取りますか。それ、普通、皆、避けますよね」
怒ってシャーロットは言う。
「まあまあ、ありとあらゆる国から婚姻の申込みも来ているでしょう。私の国では役不足かしら」
「何をおっしゃっていらっしゃるやら。ドラフォードは超大国ではないですか。我が娘では、到底宮廷内での諸々の事に対処しきれないかと」
「何を言っているのよ。クリスは今でも、各国の皇太子を顎で使っているのよ。うちの宮廷なんて問題もないでしょう」
「顎で使うなんてとんでもありませんわ」
「だってノルデインの皇太子に向かってノルディン帝国の陳国への出兵を取りやめるように命令したんでしょ」
「王妃様、そこはクリスはアレクサンドル様に土下座してお願いしたと聞いておりますが」
「それを見て赤い死神は真っ青になって頼むから止めてくれって土下座し返したって聞いたけれど」
キャロラインは面白そうに言った。
「個性の強い皇太子連中をまとめていけるんだから十分よ」
「でも、ドラフォードは大きな国で、貴族の方々もたくさんいらっしゃいますし、小国の侯爵家出身の娘ではなかなか厳しいかと・・・・」
「何言っているのよ。ミハイル家は元々しゃラザール帝国の筆頭侯爵家。シャラザール様の第一子が嫁がれたと言われる家柄よ。それにあなたはテレーゼの公爵家出身じゃない。家柄的には全然問題はないわ。それにこの前来た時に反対派の貴族たちの大半を賛成派に変えたのはクリスよ。筆頭公爵家を先頭に。軍部なんてうちの陛下よりも掌握しているじゃない。今もうちの最強の東方第一師団があなたの娘の下にいるんだけれど。うちの陛下は、陛下の命令よりもクリスの命令を聞くってお冠なんだから」
「舅様と上手く行かないと問題では」
「大丈夫よ。その母親をクリスは完全に籠絡しているじゃない。私は未だに認めてもらっていないのに。大姑と姑が味方なんだから、陛下は何も文句は言えないわよ」
そもそもドラフォード国王といえども、クリスに憑依しているシャラザールに逆らえるわけはなかったのだが。
シャーロットもそこまで言われると言葉の返しようもなかった。基本は娘が決めることだが、というか、既に娘の身分はボフミエ魔導国の国主であり、地位的には父や母よりも高かった・・・
「ちょっと、シャーロットあなた、その手の男、サウスの皇太子じゃない」
いきなりキャロラインがシャーロットの手元を見て声を上げた。
「えっ、これは」
シャーロツとは慌てて隠そうとしたが遅かった。
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いきなりキャロラインは積極的に動き出した。
「しかし、キャロライン様・・・・」
「サウス国には先を越されるわけには行かないわ。あなたも久しぶりに娘の所に遊びにいらっしゃい。詳しいことはボフミエで話しましょう」
「えっ、ちょっとキャロライン様」
シャーロットが声をかけた時にはもう電話は切られた後だった。
「本当にキャロライン様は言い出したら聞かないんだから」
シャーロットは元々キャロラインの侍女だったので、キャロラインのことはよく判っていた。
こうなっては仕方がない。シャーロットも早急にボフミエに行こうと動き出したのだった。
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