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第十一章 パレルモ王国の陰謀

ジャルカは最終兵器をお披露目しました

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「まあまあ、おふたりとも、お暑い痴話喧嘩はよそでやっていただかないと」
クリスとオーウェンの閣議室での言い合いにジャルカが仲裁した。

「ジャルカ様。どこが痴話喧嘩なのですか」
「そうだ。ジャルカ殿。クリストは全然うまく行っていないのだぞ」

二人はきっとしてジャルカを睨んだ。

「ほっほっほっ。若いという事は良いものですな」
ジャルカはその二人の発言を無視して笑う。

「で、ジャルカ。お前が私達を敵地に送ってくれるのか」
ジャンヌがもう戦う気満々で聞いてきた。

「まあまあ、姫様。慌てなさるな。明日にはパレルモのクズが参るのですから」
「クズと言っても来るのはサクサ公爵ではなくて皇太子だろうが」
ジャルカの言葉にジャンヌが噛み付いた。

「工作員を連れてテロをする気満々で来るのではありますまいか」
アレクが続く。

「そう、そこで我が国の誇る最終兵器が役に立つのです」
「最終兵器ってなんだ。ジャルカ」
ジャンヌが胡散臭そうに聞く。ジャルカの自慢した人間ロケットはろくな物ではなかった。

「クズどもが自慢するクズの恐怖を逆に味あわせてやるのです」
ジャルカが自信満々に言い切った。

「ゴキブリの恐怖ってなんだ」
「そんなの決まっているでしょ。人が部屋でのんびりとケーキを食べて楽しんでいる時に突然ガサガサと出てくることよ」
ジャンヌの問いにアメリアが悲鳴のように答えた。

「少し違いますぞ。クズに一度付け狙われたら、死ぬまで襲われ続けることです」
「ゴキブリにそんな特徴があったのか」
ジャンヌが感心して言った。

「姫様方。クズやゴキブリでなくて影です」
グリフイズが訂正する。

「ま、汚いことはおんなじだろう」
ジャンヌが言い切った。

影共が聞けばそれだけで襲撃対象になりそうなことをよく言うなと、グリフィズらは呆れ返ったが・・・・

「で、その最終兵器ってどのようなものなのだ」
「アダム・ブラウンが私の考えを具現化してくれたものなのです」
「あの最悪の人間ミサイルを開発したアダムだろう」
胡散臭そうにジャンヌらが言う。

「まあまあ、信頼されないのは勝手ですが、まずはこの魔道具をご覧下さい」
言うとジャルカは見た目は小さな銀のロケットを取り出した。
見たところなんの変哲もない銀色の塊だ。

「クリス様。私に魔術でマーキングをお願いしたいのですが」
「マーキングですか。魔力のある方に見えればよいということですか」
「そうです」
なんとマークするかジャルカがクリスに指示する。

「えっ、こうですか」

ジャルカの頭の上に『世界で一番偉大な大魔道士』とデカデカと文字が踊っていた。

「何だこれは」
ジャンヌが呆れて聞く。

ジャルカはそれを無視して、銀の塊に向かって
「追跡せよ」
と呪文を唱える。

銀のロケットは宙に浮くと、ゆっくりとジャルカの目の前に飛んできて、
「世界で一番偉大な大魔道士様。世界で一番偉大な大魔道士様・・・・」
と何回もリピートを始める。

「なんだ。このしょうもない茶番は」
いかにも馬鹿にしてジャンヌは言った。

「なるほど。姫様にはこの偉大さが解らないのですな」
「判るわけ無いだろう」
ジャルカの言葉に瞬殺する。

「では、姫様に身を持って体験していただきましょう。ではクリス様。今度は姫様にマーキングを」
不吉な笑みを浮かべてジャルカがクリスに依頼する。

「えっ、良いのですか。このような事書いて」
「良いのです。すぐに消えますから」
ジャルカの指示にクリスはジャンヌにマーキングした。

「クリス。暴風王女って何だ」
ジャンヌが食って掛かる。

「すいません。ジャルカ様にそうするようにと言われたので」
「まあまあ、姫様。このゴキブリホイホイの威力を我が身を犠牲にして理解してくだされ」
そう言うとジャルカは銀の塊に「追跡せよ」と呪文を唱える。

銀の塊はすぐにジャンヌに向かって飛んでいった。

「ターゲット。発見。攻撃します」
言うや、雷撃をジャンヌにはなっていた。

「あちっ」
ジャンヌは唖然とした。偉大な暴風王女様とか言われるのか思っていたのに、いきなり攻撃されたのだ。

「ちょっと待て」
ジャンヌが言って避けようとするが次々に雷撃を銀の塊は放つ。

「くそっ」
慌ててジャンヌは転移して部屋から逃げ出した。

しかし、銀の塊も扉から出ていく。

「ギャーーー」
遠くでジャンヌの悲鳴が響くと同時に爆発音がする。


「ジャルカどういうことだ」
真っ黒になりながら、ジャンヌはぼろぼろになった銀の塊を持って入ってきた。

「このようにこの最終兵器は壊されるか相手が死ぬまで攻撃を続けるのです」
ジャルカはボロボロのジャンヌを指差しながら言った。

「死ぬまで攻撃を続けるのですか」
「そう、クズどもの標語でもある一度ターゲットを決めたら死ぬまで攻撃をし続けるというのと同じです。壊されたら次々にこの兵器を送り続けるのです」

「なるほど、今まで相手に与え続けていた恐怖を逆に与えるのですな」
アレクの言葉にジャルカが頷く。

「でも、すぐに壊れるのでは」
「そう簡単に壊れない。私が爆裂魔術を放っても1回は耐えたくらいだ。爆裂魔術1回に、思いっきり剣でたたっ斬ってやっと壊れた」
オーウェンの言葉にジャンヌは忌々しそうに言った。

「ほっほっほっほっ。この兵器が明日にはマーマレードから大量に入りますからな。クズどもが要らないことをすればすぐに地獄まで追いかけさせてやるまでです」
ジャルカは笑って言った。

結局この新兵器をマッドサイエンティストと試したいだけなんじゃないか、誰もが思ったが、実験台にされるを危惧して誰も口にはしなかった。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ここから最終局面に突入です。

自慢のクズども、いやゴキブリ共に未来はあるのか・・・・

今夜更新します
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