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第十一章 パレルモ王国の陰謀
大国皇太子の部下には絶望しか残りませんでした。
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翌日、シュテファンは父が賊に襲撃されたのを知った。
幸いなことに護衛が撃退したのだが、これは警告と見てよいのだろう。
幸か不幸か判らなかったが、まだ、具体的な指示はシュテファンには下っていなかった。
どのみちろくな指示は来ないと思うが。
クリス様でも暗殺せよという事だろうか。
クリスは見た目は弱々しい令嬢で、シュテファンでも簡単に殺せそうに見える。
確かに見た目だけは。
しかし、中身は世界最強の魔導師なのだ。
それを殺すなんて絶対に無理だった。
ナイフで刺し殺すにしてもおそらく近づいただけで障壁で弾き飛ばされる。シュテファンが殺気を出しただけで弾き飛ばされるだろう。
というか、クリスは基本障壁を纏っているのでどんな時にも刺すのは無理だ。
魔術で攻撃してもクリスの障壁は完璧だ。
それに、もし、万が一なにかの間違いで、クリスに命中した所でシャラザールが来臨するだけだからはっきり言ってやるだけ無駄だ。何しろシャラザールは全能神ですら叩き殺したのだ。地上は愚か天界ですら勝てるものはいない。
油断している寝込みを襲っても勝てる気がしなかった。
パレルモは馬鹿なのだ。
黙って静かにしていれば生き延びられたかもしれないのに。
絶対に相手にしてはいけないものを相手にしようとしているのだ。
魔王もザール教も滅ぼされたのだ。例え、パレルモの影が10万人いようと勝てるわけはないのだ。
しかし、シュテファンには逆らうという選択はなかった。例え失敗して殺されると判っていても。妹たちを無残に殺されたくなかった。
おそらくシュテファンは、雷撃を食らって一瞬であの世に行ける。
今までキッツィンゲン家が行ってきた悪事を考えれば仕方のないことだった。
最後に反逆者として汚名を残すのか。
子爵家もお取り潰しだろう。
しかし、今まで子爵家が行ってきた非道を考えると当然の帰結だった。
シュテファンは部屋を出ようとして、扉の隙間に黒い紙が挟まっているのを見た。
その紙には
パレルモ皇太子が来た時に筆頭魔導師の前でオーウェンを殺せ
と書かれていた。
シュテファンはしばらく固まって動けなかった。
その日の閣議も荒れていた。
「ここは先制攻撃でパレルモを制圧するのが良いかと思いますが」
アレクが口火を切って進言する。
「当然だ。いつまでも指を咥えて黙って見ていてやるわけには行かない。アルフェスト卿の暗殺未遂の件もあるのだ。彼奴らも攻撃されても文句は言えまい」
ジャンヌが頷く。
「しかし、まだ、未遂だったとは公表していないのでしょう。泳がしているのよね。ならもう少し待てば良いんじゃない」
「その通りだ。せっかく馬脚を表してくれるのだ。もう少し待とう」
アメリアとオーウェンが言う。
「しかし、黙ってみていると次々にテロが起こるぞ。シュテファンの家族も襲われたのだろう」
皆が一斉にシュテファンを見る。
「えっ、どうされました」
考え事をしていたシュテファンは聞いていなかった。
「おい大丈夫か」
前に座っていたオーウェンが心配して聞いてくる。
「お父様が襲われたのだから心配よね」
依然王女が話しかけてくる。
「あ、すいません。大丈夫です」
シュテファンは笑って誤魔化した。
「今攻撃した所で同じよ。一瞬で殲滅しない限りは焦った影が一斉に襲ってくることを防げないと思うわ」
アメリアが言う。
「その通りだ。ここは敵の出方を見守るべきだ」
オーウェンも言う。
「あのう、すいません」
珍しくクリスが声を挙げた。
「これ以上の被害が出るならばその前に攻撃したほうが良いのではないかと思うのですが」
皆日頃慎重なクリスがアレクらの過激な攻撃論に転じたのを見て驚いた。
「そうだろう。クリスが賛成してくれたのだ。直ちに攻撃を行おう」
その尻馬に乗ってジャンヌが言う。
「えっ、クリス、明日にはパレルモの皇太子が来るんだからその意見を聞いてからでも遅くないんじゃないか」
オーウェンが驚いて言う。
「オーウェン様は自分が攻撃されないからそんなふうに言われるんです」
「な、何を言うんだクリス。アルフェスト卿は私の国の外務卿だし、シュテファンは私の部下だ。欠して他人事ではない」
クリスに言われて驚いてオーウェンは反論した。
「ならばこれ以上被害の出る前に攻撃することに賛成されますよね」
「しかし、せっかく言い訳に来るのだから」
「攻撃にの間違いではないのですか。影の方々もバルトルト様のように苦しんでいらっしゃる方々もいらっしゃると思うんです。愚かな主さえ倒せば解放されるのではないでしょうか」
「それはそうかも知れないが、トップが殺されても地下に潜って抵抗する可能性もある。私はそれを恐れるんだ」
「でもやってみないとわからないじゃないですか。今この瞬間にもテロが行われようとしているんです。それを事前に防ぐ意味でも、今すぐ行動に移すのが良いと思うのです」
シュテファンは二人の論争を聞いていた。
シュテファンとしてはすぐに行動してほしかった。そうすればシュテファンはオーウェンを殺さなくても良くなる。
しかし、オーウエンの説も最もだった。パレルモの影はたとえサクサ公爵が死んでも次が決まっている。次が死んでもその次が。
全世界にある組織がそう簡単に滅ぶとは思えなかった。
ここで、先制攻撃してサクサ公爵を倒したとしても、次の影の長に命じられてシュテファンはオーウェンを殺さなければいけなくなるだろう。
影の血の盟約は絶対だった。
それに逆らえば地の果てまで追われて一族皆殺しだった。
シュテファンには絶望しか残っていなかった。
**********************************************
ついにオーウエンの暗殺???
幸いなことに護衛が撃退したのだが、これは警告と見てよいのだろう。
幸か不幸か判らなかったが、まだ、具体的な指示はシュテファンには下っていなかった。
どのみちろくな指示は来ないと思うが。
クリス様でも暗殺せよという事だろうか。
クリスは見た目は弱々しい令嬢で、シュテファンでも簡単に殺せそうに見える。
確かに見た目だけは。
しかし、中身は世界最強の魔導師なのだ。
それを殺すなんて絶対に無理だった。
ナイフで刺し殺すにしてもおそらく近づいただけで障壁で弾き飛ばされる。シュテファンが殺気を出しただけで弾き飛ばされるだろう。
というか、クリスは基本障壁を纏っているのでどんな時にも刺すのは無理だ。
魔術で攻撃してもクリスの障壁は完璧だ。
それに、もし、万が一なにかの間違いで、クリスに命中した所でシャラザールが来臨するだけだからはっきり言ってやるだけ無駄だ。何しろシャラザールは全能神ですら叩き殺したのだ。地上は愚か天界ですら勝てるものはいない。
油断している寝込みを襲っても勝てる気がしなかった。
パレルモは馬鹿なのだ。
黙って静かにしていれば生き延びられたかもしれないのに。
絶対に相手にしてはいけないものを相手にしようとしているのだ。
魔王もザール教も滅ぼされたのだ。例え、パレルモの影が10万人いようと勝てるわけはないのだ。
しかし、シュテファンには逆らうという選択はなかった。例え失敗して殺されると判っていても。妹たちを無残に殺されたくなかった。
おそらくシュテファンは、雷撃を食らって一瞬であの世に行ける。
今までキッツィンゲン家が行ってきた悪事を考えれば仕方のないことだった。
最後に反逆者として汚名を残すのか。
子爵家もお取り潰しだろう。
しかし、今まで子爵家が行ってきた非道を考えると当然の帰結だった。
シュテファンは部屋を出ようとして、扉の隙間に黒い紙が挟まっているのを見た。
その紙には
パレルモ皇太子が来た時に筆頭魔導師の前でオーウェンを殺せ
と書かれていた。
シュテファンはしばらく固まって動けなかった。
その日の閣議も荒れていた。
「ここは先制攻撃でパレルモを制圧するのが良いかと思いますが」
アレクが口火を切って進言する。
「当然だ。いつまでも指を咥えて黙って見ていてやるわけには行かない。アルフェスト卿の暗殺未遂の件もあるのだ。彼奴らも攻撃されても文句は言えまい」
ジャンヌが頷く。
「しかし、まだ、未遂だったとは公表していないのでしょう。泳がしているのよね。ならもう少し待てば良いんじゃない」
「その通りだ。せっかく馬脚を表してくれるのだ。もう少し待とう」
アメリアとオーウェンが言う。
「しかし、黙ってみていると次々にテロが起こるぞ。シュテファンの家族も襲われたのだろう」
皆が一斉にシュテファンを見る。
「えっ、どうされました」
考え事をしていたシュテファンは聞いていなかった。
「おい大丈夫か」
前に座っていたオーウェンが心配して聞いてくる。
「お父様が襲われたのだから心配よね」
依然王女が話しかけてくる。
「あ、すいません。大丈夫です」
シュテファンは笑って誤魔化した。
「今攻撃した所で同じよ。一瞬で殲滅しない限りは焦った影が一斉に襲ってくることを防げないと思うわ」
アメリアが言う。
「その通りだ。ここは敵の出方を見守るべきだ」
オーウェンも言う。
「あのう、すいません」
珍しくクリスが声を挙げた。
「これ以上の被害が出るならばその前に攻撃したほうが良いのではないかと思うのですが」
皆日頃慎重なクリスがアレクらの過激な攻撃論に転じたのを見て驚いた。
「そうだろう。クリスが賛成してくれたのだ。直ちに攻撃を行おう」
その尻馬に乗ってジャンヌが言う。
「えっ、クリス、明日にはパレルモの皇太子が来るんだからその意見を聞いてからでも遅くないんじゃないか」
オーウェンが驚いて言う。
「オーウェン様は自分が攻撃されないからそんなふうに言われるんです」
「な、何を言うんだクリス。アルフェスト卿は私の国の外務卿だし、シュテファンは私の部下だ。欠して他人事ではない」
クリスに言われて驚いてオーウェンは反論した。
「ならばこれ以上被害の出る前に攻撃することに賛成されますよね」
「しかし、せっかく言い訳に来るのだから」
「攻撃にの間違いではないのですか。影の方々もバルトルト様のように苦しんでいらっしゃる方々もいらっしゃると思うんです。愚かな主さえ倒せば解放されるのではないでしょうか」
「それはそうかも知れないが、トップが殺されても地下に潜って抵抗する可能性もある。私はそれを恐れるんだ」
「でもやってみないとわからないじゃないですか。今この瞬間にもテロが行われようとしているんです。それを事前に防ぐ意味でも、今すぐ行動に移すのが良いと思うのです」
シュテファンは二人の論争を聞いていた。
シュテファンとしてはすぐに行動してほしかった。そうすればシュテファンはオーウェンを殺さなくても良くなる。
しかし、オーウエンの説も最もだった。パレルモの影はたとえサクサ公爵が死んでも次が決まっている。次が死んでもその次が。
全世界にある組織がそう簡単に滅ぶとは思えなかった。
ここで、先制攻撃してサクサ公爵を倒したとしても、次の影の長に命じられてシュテファンはオーウェンを殺さなければいけなくなるだろう。
影の血の盟約は絶対だった。
それに逆らえば地の果てまで追われて一族皆殺しだった。
シュテファンには絶望しか残っていなかった。
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ついにオーウエンの暗殺???
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