上 下
292 / 444
第九章 ザール教騒乱

暴風王女と赤い死神は戦神の補講を恐れました

しおりを挟む
それからが大変だった。
元々、人間爆弾攻撃は魔王が始め、前回はノルディン帝国がアデリナの母にさせていた。
前回はクリスが浄化魔術をまとった剣でアデリナの母を刺して浄化、魔導爆弾を消滅させていた。しかし、クリスだけが対処できても他のものが出来ないと同時多発テロが起きた時に対処できないと、魔力を持つ閣僚、魔導師を中心に訓練を行ってきた。
そして、何を思ったか、シャラザールが来臨した時にその特訓をさせられて、お互いに魔導爆弾を腹に抱えた状態で徹底的な訓練を、宋国と前回の聖堂でやらされていたのだ。
ジャンヌやアレクは何度も失敗、そのたびに半死半生の状態になったが、そのたびにシャラザールに馬鹿にされながら、治癒魔術をかけられて復活させられて訓練させられるという、最悪の特訓を経てほとんど完璧に出来るようになっていた。

だから今回、アレクは4人相手でも対処できたのだ。

しかし、全てのけが人を運ばれたジャルカは治療に忙殺されてそれどころではなかった。

「本当にこんなに沢山の人の治療をするなど、いい加減にしてほしいですな」
ブツブツ文句を言っていた。

「この前は老婆ばかりと文句を言っていたじゃないか。今回は若い女官がいただろう。彼女に対しては喜んで治療していたくせに」
ジャンヌが言う。

「何をおっしゃいます。姫様。治療は神聖な行為です。そのような邪な思いをして治療をしておりませんぞ」
ジャルカが白々しく言う。

「あっ、そうか。クリスがみんなと違って見目若い女性3人を浄化魔術で浄化して治療できなかったから怒っているのか」
ジャンヌがからかう。確かに今回はクリスは剣で突き刺さずにパワーアップした浄化魔術で3人も魔導爆弾を処理していた。

「何をおっしゃいます。姫様。クリス様の浄化魔術を指導したのは儂ですからの。クリス様が出来て当然です。それよりもお一人だけ浄化魔術の始動に失敗して爆死させた方がいらっしゃいましたな」
ジャルカは意地悪そうな目でジャンヌを見る。

「な、何を言う。あれは急いでいたから、仕方がないだろう」
慌ててジャンヌは言い訳した。
「何をおっしゃいますやら。急いでいても気配を察知して機敏に動くのが魔導師の基本ですぞ。
アレク様を見習いなさい。4人もの生徒の命を助けられたのですから」

「・・・・」

ジャンヌはジャルカの小言に一言も反論できなかった。

「まあ、シャラザール様の特訓の成果かな」
アレクは謙虚に言って引きつった笑いをした。アレクはあの2回の恐怖の特訓のことを思い出していた。何度失敗してジャンヌに爆発させられたことやら。もっとも自分も失敗して何度かジャンヌを爆発させたが・・・・。


「まあ、姫様はまた補講ですかな」
「えっ」
ジャルカの一言にジャンヌとアレクがハモった。
「またやらされるのかよ」
「ちょっと待った。その人間爆弾やらされるの俺じゃないか」
ジャンヌのうんざりした声に、アレクの悲鳴に近い声が続く。

「ほっほっほっ。お二人とも仲がよろしいことで」
「何で仲がいいんだよ」
「ジャルカ爺。その訓練はあんまりやりたくないんですけど」
ジャルカの言葉にジャンヌが噛みつきアレクは嫌そうにする。
ジャルカはそれを見て笑っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera
ファンタジー
※まだまだまだまだ更新継続中! ※書籍の詳細はteraのツイッターまで!@tera_father ※第1巻〜7巻まで好評発売中!コミックス1巻も発売中! ※書影など、公開中! ある日、秋野冬至は異世界召喚に巻き込まれてしまった。 勇者召喚に巻き込まれた結果、チートの恩恵は無しだった。 スキルも何もない秋野冬至は一般人として生きていくことになる。 途方に暮れていた秋野冬至だが、手に持っていたアイテムの詳細が見えたり、インベントリが使えたりすることに気づく。 なんと、召喚前にやっていたゲームシステムをそっくりそのまま持っていたのだった。 その世界で秋野冬至にだけドロップアイテムとして誰かが倒した魔物の素材が拾え、お金も拾え、さらに秋野冬至だけが自由に装備を強化したり、錬金したり、ゲームのいいとこ取りみたいな事をできてしまう。

【完結】婚約破棄?ってなんですの?

紫宛
恋愛
「相も変わらず、華やかさがないな」 と言われ、婚約破棄を宣言されました。 ですが……? 貴方様は、どちら様ですの? 私は、辺境伯様の元に嫁ぎますの。

【完結】「『王太子を呼べ!』と国王陛下が言っています。国王陛下は激オコです」

まほりろ
恋愛
王命で決められた公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢との婚約を発表した王太子に、国王陛下が激オコです。 ※他サイトにも投稿しています。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 小説家になろうで日間総合ランキング3位まで上がった作品です。

至らない妃になれとのご相談でしたよね

cyaru
恋愛
ホートベル侯爵家のファリティは初夜、夫となったばかりの第2王子レアンドロから「相談」をされた。 結婚はしてしまったがレアンドロは異母妹のルシェルを愛しているので、3年後に離縁し再婚したいという。 ただ離縁するだけではだめでファリティに何もしない愚鈍な妃となり、誰からも「妃には相応しくない」と思って欲しいとのこと。 ルシェルとの関係を既に知っていたファリティは渡りに船とばかりにレアンドロの提示した条件を受けた。 何もかもこちらの言い分ばかり聞いてもらうのも悪いというので、ファリティは2つの条件を出した。 ①3年後に何があっても離縁すること、②互いの言動や資産全てにおいて不干渉であること。 レアンドロはその条件を飲み、ただの口約束では揉める原因だと結婚の翌日、次に保管庫が開くのは2人が揃っていないと開けて貰えず、期日も3年後に設定された確実な保管法で正教会にその旨をしたためた書類を2人で保管した。 正教会で「では、ごきげんよう」と別れた2人。 ファリティはその日から宮に帰ってこない。 かたやレアンドロは「模様替え」の最中なのでちょっと居候させてと言うルシェル達を受け入れたけれど…。 タイトルの♡はファリティ視点、♠はレアンドロ視点、★は第三者視点です ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★1話あたりの文字数、少な目…だと思います。 ★10月19日投稿開始、完結は10月22日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。

コスモス・リバイブ・オンライン

hirahara
SF
 ロボットを操縦し、世界を旅しよう! そんなキャッチフレーズで半年前に発売したフルダイブ型VRMMO【コスモス・リバイブ・オンライン】 主人公、柊木燕は念願だったVRマシーンを手に入れて始める。 あと作中の技術は空想なので矛盾していてもこの世界ではそうなんだと納得してください。 twitchにて作業配信をしています。サボり監視員を募集中 ディスコードサーバー作りました。近況ボードに招待コード貼っておきます

侯爵令嬢として婚約破棄を言い渡されたけど、実は私、他国の第2皇女ですよ!

みこと
恋愛
「オリヴィア!貴様はエマ・オルソン子爵令嬢に悪質な虐めをしていたな。そのような者は俺様の妃として相応しくない。よって貴様との婚約の破棄をここに宣言する!!」 王立貴族学園の創立記念パーティーの最中、壇上から声高らかに宣言したのは、エリアス・セデール。ここ、セデール王国の王太子殿下。 王太子の婚約者である私はカールソン侯爵家の長女である。今のところ はあ、これからどうなることやら。 ゆるゆる設定ですどうかご容赦くださいm(_ _)m

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

処理中です...