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第九章 ザール教騒乱

ザール教は最後の攻撃に出ました

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ケビンは真っ暗闇の中を歩いていた。

いくら歩いても暗闇のままだった。

しかし、更に少し歩くと左手に光が見えた。その光に向かって歩いていくと、闇のトンネルを抜けられた。

そこは色とりどりの花が咲き誇っている広大なお花畑だった。

そして、その真中に花輪を作っているアデリナがいた。

「アデリナ。会いたかった」
思わずケビンは言った。

「ケビン、久しぶり。ちょうど良かったわ。この花環をあなたにあげるわ」
アデリナは作ったきれいな花輪を頭からかけてくれた。

「有難う、アデリナ」
ケビンは嬉しかった。二度とアデリナに会えるとは思ってもいなかった。あんな事をしたケビンを許してもらえるとも。

そして、自分のしたことを思い出してこれが夢だということに気付いた。だってアデリナとその母親を奴隷に売ったケビンらをアデリナが許してくれるはずもなかったから。

そして、はっとケビンは我に返った。

「ほう、まだ、正気があるのか」
驚いてアードルフ・ナッティネン教皇は言った。

「もう廃人になるのも時間の問題です」
マウノ・アールネ教皇魔導師団長が言う。

「その方のおかげでボフミエのスパイがあぶり出せた。感謝するぞ」
教皇は笑って言った。

「殺せ」
絶望に包まれてケビンは言った。そうだ。ケビンはパラウェイをうたれて折角ボフミエのために
情報を教えてくれた人々を売ってしまったのだった。彼らはケビンの前で男は麻薬の実験台となり、女は陵辱されて奴隷に落とされた。

ケビンはまた裏切ってしまったのだった。折角挽回の機会を与えられたにもかかわらず、また裏切ってしまった。

もう、ケビンには絶望しかなかった。

「ふふふ、そんなに死にたいか」
「ああ、殺せ」
「では最後にこんな目に合わせた筆頭魔導師を自ら葬り去れ」
「な、何を言う。クリス様は我々を助けて頂いた聖女様。そのようなことは聞けん」

「ほう、まだ正気があるのか。しかし、この場に貴様を送り込んできたのはその聖女だろうが。」
「違う。俺が名誉を挽回するために自ら志願してきたのだ」
「その挙げ句が貴様らが作り出した組織の崩壊か」
教皇は笑って言った。

「この者にもっとパラウェイを」
「しかし、猊下」
「構わん。最悪植物人間になっても構わん」
「はっ、判りました」
ケビンは更にパラウェイを注射されて意識が混濁した。もう、アデリナのことも判らなくなっていた。





男は路上に座ってぼうっと兵士の詰め所を遠くから見ていた。
男は好奇心からパラウェイに手を出してしまって、ハマってしまった。
男は国都の兵士だったが、筆頭魔導師がハイランドシア公爵家を急襲、ザール教を制圧、次々とパラウェイの販売網を暴いてきたので、危険を感じて逃げ出したのだ。

ファントマ商会の秘密店舗に匿われていたが、次第に捜査の目は絞られているみたいだった。
この状況を何とかするために、男はジャスティンをアジトまで案内することを命じられていた。
その詰め所にはジャスティンが毎日訪問することを男は知っていた。

10人ほどの騎士が詰め所に入るのを男は確認した。その中にはジャスティンが確かにいた。男はそれを確認するとゆっくりと詰め所に向かって歩き出した。


一方王宮の執務室はザール教の枢軸卿がいいわけに現れたと取り継がれて騒然としていた。
「言い訳など嘘であろう。最後のあがきに暗殺に現れたに違いない」
オーウェンがもっともな理由を上げた。
「まあ、当然でしょうな」
コレキヨも認める。
「まあ、そうは言っても奴隷になったボフミエ人を3人も連れているとのことです。会わざるを得ないでしょう」
クリスが言った。

「しかし、危険だ」
オーウェンが危惧する。

「ザール教も私に手を出すとどうなるかは知っているでしょう」
「いや、奴らは馬鹿だから知らないと思うぞ」
クリスの言葉をオーウェンは否定した。

「その時はその時です。」
クリスは立ち上がった。
「私が会います」
「えっクリス、でも」
「危険ですからオーウェン様は後方で待機下さい」
「そんな事ができるわけ無いだろ。俺も行くよ」
クリスの言葉にオーウェンも立ち上がった。


一方魔導学園ではアレクが、訓練に駆り出されていた。
みっちり魔導コースの最終学年組に稽古をつけた後、帰ろうとしたところで
「アレクサンドル先生」
男たち4人の生徒にアレクは囲まれていた。
アレクは舌打ちした。これは絶対に厄介事だ。


ジャンヌは急いで歩いていた。見回りしつつ、集合場所に急いでいた。ちょっと屋台のクレープ屋の親父とのやり取りに時間がかかってしまったのだ。というか、親切な親父がジャンヌにクレープの大盛りをくれたので、食するのに時間がかかっただけだったが・・・・
ライラが聞いたらジャンヌだけずるいと怒りそうだった。

「ジャンヌ様」
急ぎ足で歩くジャンヌに男が声をかけてきた。顔がいかつく、見た限りヤクザと思しき男だった。
「すまん。急いでいて時間がないんだ」
ジャンヌはそう言うや駆け出した。
「えっ、ジャンヌ様、待って」
男は慌てた。急いでジャンヌを追いかけようとした。
その時にその男に急激な魔導反応が起こった。

「えっ」
ジャンヌは慌てて振り返った。

その瞬間男は爆発した。
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