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第八章 ボフミエ王宮恋愛編
陳国軍の嫌がらせでシャラザール来臨しました
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その後が大変だった。
戦う気満々だったジャンヌらは1戦もせずに戦いが終わって拍子抜けしていた。
しかし、降伏したノルディン帝国の6個師団の生き残り5万人強を拘束するだけで大変だった。
また、城壁を大きく壊してしまったクリスは我に返るとただひたすら子伯爵に謝った。
ノルディンの6個師団の降伏を知った陳国王は慌てて飛んできて、クリスの前に平伏していた。
そして、国境沿いに展開していた陳国5個師団も慌てて宋城に集まり、今は祝勝の宴会が開かれていた。
「ええ、本日はボフミエ帝国の皆様のご活躍により、ノルディン帝国の6個師団が無事に降伏してくれました。陳国を救って頂き本当に有難うございます。国王として感謝の言葉もございません」
国王が礼を言った。
依然王女も感涙に涙して何度もクリスにお礼を言っていたし、子伯爵と悠然も同じだった。
しかし、陳国軍部では1戦もせずにノルデインが降伏したことについて鬱憤が溜まっていた。まともに戦っても勝てない相手だとは戦う前から判っていた。そのように戦う前は恐怖が軍部の大半を覆っていたのだが、こうもあっさりノルディンが降伏したことで陳国軍でも戦えば勝てたのではないかという見当違いの意見が盛り返していた。また、アレクあたりが元々企んでやったヤラセではないかと、心無い幹部たちは噂していた。そして、そのあたりの事を探ろうといろいろ画策していた。
陳国王の次に乾杯の合図をアレクがすることにした。
「陳国の諸君。この度の武勲は第一に筆頭魔導師様のお心を動かした依然王女にある。
そして、馬鹿な愚弟が筆頭魔導師様のお怒りを買ったことが全てだ。今君たちがここで生きていられるのは全て筆頭魔導師様のおかげでもある。ここに筆頭魔導師様に感謝の乾杯をしたいと思う。
筆頭魔導師様に乾杯」
「いえ、ちょっとアレク様。勝ったのは皆様のお力で」
クリスの言い訳を
「乾杯」
ジャンヌらの大声がかき消した。しかし、否定された陳国軍部の連中は面白くなかった。
そして、絶対にソフトドリンクにしろとアレクから言われていたにもかかわらず、クリスのグラスにはワインが注がれていた。クリスがアルコールに弱いとのことで、意趣返しの意味もあってアルコールにすり替えられていたのだ。そして、不幸にもアレクらはそれに気付いていなかった。
その陳国軍の心無いものの悪戯によって、彼らはクリスによって命を救われたことを身を以て知らされることになった。
ダンッ
クリスがグラスを一口飲んだ瞬間、凄まじい音がしたと誰もが思った。
そして、凄まじい気が会場を制圧していた。
アレクは最悪の事が起こったことに気付いた。恐る恐る後ろを振り返るとそこには憤怒の形相のシャラザールが仁王立ちしていた。
「アレク、貴様良くも余に土下座わさせたな」
「えっ、いや、私がさせたわけでは」
アレクは走ってくるシャラザールに恐怖を感じる間もなかった。
次の瞬間シャラザールの怒りの鉄拳がアレクを直撃凄まじい音と供にアレクは林の中に飛んでいった。
皆唖然と見ていた。あの赤い死神が一瞬にして弾き飛ばされたのだ。大半のものが何が起こったのか理解していなかった。
「陳国のクズ将軍ども」
そこには可憐なクリスの姿はどこにもいず、歴戦の勇将戦神シャラザールが怒りに仁王立ちしていた。
「貴様らのその腐った根性、1から叩き直してやるわ。全員剣を構えろ」
シャラザールは剣を構えた。
「えっいや、そんな」
「おらおら、早くせい」
シャラザールは剣を構える前から次々に将軍達を弾き飛ばしていく。
「えっクリス、どうしたの?」
何も知らなかったオーウェンは唖然とした。
「貴様が軟弱皇太子か」
「えっ」
そこにはクリスとは似ても似つかぬ建国の戦神シャラザールが剣を構えていた。
「戦神シャラザール」
そうそこには何度も肖像画で目にしたことのある建国の戦神シャラザールがいた。
「軟弱な貴様などクリスにはもったいないわ。どうしてもクリスが欲しければ、剣を構えて余に打ちかかってこい」
「えっ、いや」
「余に打ち勝てんうちはクリスを嫁にははやれんぞ」
オーウェンは驚いた。何がどうなって建国の戦神がクリスに成り代わって立っているのか判らないが、クリスの為になるならばやるしかあるまい。オーウェンは覚悟を決めて、戦神に撃ちかかっていった。
しかし、アレクでも瞬殺されているのに、オーウェンでは叶うはずもなく、一瞬で地面に叩きつけられていた。そのあまりの衝撃の強さに息が詰まる。ゆっくりと立ち上がった。
「ふんっ。少しは骨があるのか」
「行くぞ」
再度斬りかかるが、一瞬で弾き飛ばされる。
それを重ねること二十数度、オーウェンは立っているので精一杯だった。
「降参するのか」
「何を」
オーウェンは最後の悪あがきをすることにした。ここまで十年以上、ただひたすらクリスの事を思ってきたのだ。駆け出すや、剣に魔力の全てをまとわせて、シャラザールに叩きつけていた。
シャラザールはそれを剣で受けて、オーウェンに叩きつける。
オーウェンは弾き飛ばされて林の中に叩きつけられ気を失っていた。
「ふんっまだまだ、軟弱じゃな。しかし、少しは見込みがあるか」
オーウェンの飛んでいった方をみてシャラザールが呟いた。
「おらおら、お前ら。何ぼうっと突っ立っておる」
シャラザールの力は有り余っていた。
捕まったはずのノルディンの兵らも連れ出され、死の訓練がシャラザールよってなされたのは言うまでもなかった。
そして、ノルディンの連中も陳国の連中もアレクが何に恐れをなしていたか身を以て初めて正確に知ったのだった。その場にいた連中は誰もが、絶対に逆らってはいけないものがいることを身を以て知ったのだった。
陳国王は心に誓った。絶対にボフミエだけには逆らわないようにしようと。
宋城の近くの河原では桜の花が風で散っていた。
しかし、生きる屍とかした兵士たちはそれを見る余裕のあるものなど一人も残っていなかった。
戦う気満々だったジャンヌらは1戦もせずに戦いが終わって拍子抜けしていた。
しかし、降伏したノルディン帝国の6個師団の生き残り5万人強を拘束するだけで大変だった。
また、城壁を大きく壊してしまったクリスは我に返るとただひたすら子伯爵に謝った。
ノルディンの6個師団の降伏を知った陳国王は慌てて飛んできて、クリスの前に平伏していた。
そして、国境沿いに展開していた陳国5個師団も慌てて宋城に集まり、今は祝勝の宴会が開かれていた。
「ええ、本日はボフミエ帝国の皆様のご活躍により、ノルディン帝国の6個師団が無事に降伏してくれました。陳国を救って頂き本当に有難うございます。国王として感謝の言葉もございません」
国王が礼を言った。
依然王女も感涙に涙して何度もクリスにお礼を言っていたし、子伯爵と悠然も同じだった。
しかし、陳国軍部では1戦もせずにノルデインが降伏したことについて鬱憤が溜まっていた。まともに戦っても勝てない相手だとは戦う前から判っていた。そのように戦う前は恐怖が軍部の大半を覆っていたのだが、こうもあっさりノルディンが降伏したことで陳国軍でも戦えば勝てたのではないかという見当違いの意見が盛り返していた。また、アレクあたりが元々企んでやったヤラセではないかと、心無い幹部たちは噂していた。そして、そのあたりの事を探ろうといろいろ画策していた。
陳国王の次に乾杯の合図をアレクがすることにした。
「陳国の諸君。この度の武勲は第一に筆頭魔導師様のお心を動かした依然王女にある。
そして、馬鹿な愚弟が筆頭魔導師様のお怒りを買ったことが全てだ。今君たちがここで生きていられるのは全て筆頭魔導師様のおかげでもある。ここに筆頭魔導師様に感謝の乾杯をしたいと思う。
筆頭魔導師様に乾杯」
「いえ、ちょっとアレク様。勝ったのは皆様のお力で」
クリスの言い訳を
「乾杯」
ジャンヌらの大声がかき消した。しかし、否定された陳国軍部の連中は面白くなかった。
そして、絶対にソフトドリンクにしろとアレクから言われていたにもかかわらず、クリスのグラスにはワインが注がれていた。クリスがアルコールに弱いとのことで、意趣返しの意味もあってアルコールにすり替えられていたのだ。そして、不幸にもアレクらはそれに気付いていなかった。
その陳国軍の心無いものの悪戯によって、彼らはクリスによって命を救われたことを身を以て知らされることになった。
ダンッ
クリスがグラスを一口飲んだ瞬間、凄まじい音がしたと誰もが思った。
そして、凄まじい気が会場を制圧していた。
アレクは最悪の事が起こったことに気付いた。恐る恐る後ろを振り返るとそこには憤怒の形相のシャラザールが仁王立ちしていた。
「アレク、貴様良くも余に土下座わさせたな」
「えっ、いや、私がさせたわけでは」
アレクは走ってくるシャラザールに恐怖を感じる間もなかった。
次の瞬間シャラザールの怒りの鉄拳がアレクを直撃凄まじい音と供にアレクは林の中に飛んでいった。
皆唖然と見ていた。あの赤い死神が一瞬にして弾き飛ばされたのだ。大半のものが何が起こったのか理解していなかった。
「陳国のクズ将軍ども」
そこには可憐なクリスの姿はどこにもいず、歴戦の勇将戦神シャラザールが怒りに仁王立ちしていた。
「貴様らのその腐った根性、1から叩き直してやるわ。全員剣を構えろ」
シャラザールは剣を構えた。
「えっいや、そんな」
「おらおら、早くせい」
シャラザールは剣を構える前から次々に将軍達を弾き飛ばしていく。
「えっクリス、どうしたの?」
何も知らなかったオーウェンは唖然とした。
「貴様が軟弱皇太子か」
「えっ」
そこにはクリスとは似ても似つかぬ建国の戦神シャラザールが剣を構えていた。
「戦神シャラザール」
そうそこには何度も肖像画で目にしたことのある建国の戦神シャラザールがいた。
「軟弱な貴様などクリスにはもったいないわ。どうしてもクリスが欲しければ、剣を構えて余に打ちかかってこい」
「えっ、いや」
「余に打ち勝てんうちはクリスを嫁にははやれんぞ」
オーウェンは驚いた。何がどうなって建国の戦神がクリスに成り代わって立っているのか判らないが、クリスの為になるならばやるしかあるまい。オーウェンは覚悟を決めて、戦神に撃ちかかっていった。
しかし、アレクでも瞬殺されているのに、オーウェンでは叶うはずもなく、一瞬で地面に叩きつけられていた。そのあまりの衝撃の強さに息が詰まる。ゆっくりと立ち上がった。
「ふんっ。少しは骨があるのか」
「行くぞ」
再度斬りかかるが、一瞬で弾き飛ばされる。
それを重ねること二十数度、オーウェンは立っているので精一杯だった。
「降参するのか」
「何を」
オーウェンは最後の悪あがきをすることにした。ここまで十年以上、ただひたすらクリスの事を思ってきたのだ。駆け出すや、剣に魔力の全てをまとわせて、シャラザールに叩きつけていた。
シャラザールはそれを剣で受けて、オーウェンに叩きつける。
オーウェンは弾き飛ばされて林の中に叩きつけられ気を失っていた。
「ふんっまだまだ、軟弱じゃな。しかし、少しは見込みがあるか」
オーウェンの飛んでいった方をみてシャラザールが呟いた。
「おらおら、お前ら。何ぼうっと突っ立っておる」
シャラザールの力は有り余っていた。
捕まったはずのノルディンの兵らも連れ出され、死の訓練がシャラザールよってなされたのは言うまでもなかった。
そして、ノルディンの連中も陳国の連中もアレクが何に恐れをなしていたか身を以て初めて正確に知ったのだった。その場にいた連中は誰もが、絶対に逆らってはいけないものがいることを身を以て知ったのだった。
陳国王は心に誓った。絶対にボフミエだけには逆らわないようにしようと。
宋城の近くの河原では桜の花が風で散っていた。
しかし、生きる屍とかした兵士たちはそれを見る余裕のあるものなど一人も残っていなかった。
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