皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!

第八章 ボフミエ王宮恋愛編

クリス 人間爆弾となったアデリナの母を髪飾りで刺します

ノルディンの侵攻については現状の把握をアレクらに任せて、クリスはアデリナの母に会うために謁見の間に向かった。

そして、ウィルらの帰還の報告がなされた。
ウィルらは奴隷として売られたクリスの侍女のアデリナの母親を伴っていた。

アデリナの母と思しき人が、ウイルに案内されてゆっくりと入ってくる。
「お、お母さん!」
クリスの隣にいたアデリナが思わず叫ぶと、母の方へ駆け出す。。

「アデリナ!」
「お母さん!」
二人は思わず抱き合っていた。アデリナと母の目に涙が光っていた。
その後ろにウィルらが控えていた。

クリスの後ろに控えていたミアが泣いている。
一緒に来たナタリーも泣いていた。
クリスはいつも一生懸命仕事してくれるアデリナに、彼女の母親をやっと見つける事ができてホッとしていた。
皆涙ぐんでいた。

それを見ていた、ウィルの後ろに控えていた商人に扮していたミハイロヴィチはポケットに隠し持っていたボタンを押した。

カチリとアデリナの母の中でスイッチが鳴った。
アデリナの母はゆっくりと顔を上げてクリスを見た。

「筆頭魔導師様」
そう言うとアデリナの母親はゆっくりとクリスの方に歩き出した。
何かに繰られるように。その目はうつろだった。

最初は周りのものも何も不思議には思わなかった。
お礼を言うためにアデリナの母がクリスに歩み寄ったのだと。

クリスも１歩前に出た。
アデリナの母は立ち止まるであろう場所を過ぎて駆け出した。

「えっ」
アルバートらは初動に遅れを取った。
走るアデリナの母にクリスも駆け出した。
クリスの手には頭に挿していた髪飾りを握っていた。
そして、アデリナの母親が大きく手を広げたその腹にクリスは簪を突き刺していた。
簪は金色に光り輝くと、アデリナの母の腹に突き立っていた。

「きゃーーーー」
アデリナの悲鳴が謁見の間に響き渡った。