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第七章 魔王復活
トリポリ国王はアレクに嵌められました。
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トリポリ国王ホフマン・トリポリは久々に機嫌が良かった。
隣国クロチアが1日でモルロイの魔王カーンに占拠された事に恐怖を感じていたが、なんとか、ボフミエの筆頭魔導師のクリスティーナにいざという時の援助の確約をもらえたのだ。
赤い死神のアレクと違って魔王に攻撃されたら即座に援軍を送ってくれるはずだ。
前の会談で話した通りに1週間に1度ボフミエとの間でスカイバードも飛び出した。
ボフミエへ送り出した魔導師の育成も順調に進めば毎日飛び出すはずだ。
ホフマンにとっては自国の魔導師の能力も上げてくれてこれほどうれしいことは無かった。
ボフミエとの協力体制は搾取だけでなくてトリポリ自体の国力も上げようとしてくれていた。
5000トンの食糧など安いものだった。
今まではノルディン帝国に搾取されるだけだったが、ボフミエとの協力体制は国家の存続の可能性も上げてくれるものでありがたかった。
ドラフォードとも同盟は結べたし、マーマレードとテレーゼの次期国王とも顔つなぎは出来た。
更に息子も留学させてさらに確固たる繋ぎも出来るだろう。
「儂もやっと運が向いて来たぞ」
ホフマンは自分を褒めたかった。
「さようでございますな。陛下のお力によってボフミエ国とも援助協定が結べましたし」
「そうだろう。ボフミエの筆頭魔導師様は義に厚いお方だ。
いざという時は必ずお助けいただける。アレクサンドロ殿下ではいざという時は裏切られる可能性があるからな」
「誰が裏切るって」
いきなり転移して来たアレクはニコニコして言った。
「閣下」
椅子にふんぞり返っていたホフマンが驚いて椅子ごとひっくり返っていした。
「私が貴様を裏切ったことがあったか」
地の底から聞こえるような声でアレクが言う。
「いえいえ、滅相もございません。言葉の綾でございますよ」
慌ててホフマンが否定する。
戦場に置き去りにされたり囮にさせられたことは一度や二度ではないが。
「言葉の綾だと」
「ヒィィィぃ」
アレクの言葉にホフマンは震えあがった。
「まあ良い。実はその方に頼みがある」
「はっ何でございましょうか」
またとんでもない事を頼まれるのではないかとホフマンはおっかなびっくりで聞いた。
「何、大したことは無い。モルロイの使者が来た時に今のように尊大な態度で対応してほしいのだ」
何でもない事のようにアレクが言う。
「はいっ?」
目を見開いてホフマンはアレクを見つめる。
「そのような事をしては私が魔王カーンに睨まれますが」
慌ててホフマンが言う。
「何を恐れる。貴様の後ろには我々がいるのだぞ。私では信用ならなくてもクリスティーナ様は自愛のお方。貴様を見捨てる事は絶対になさるまい」
アレクは断言した。
「いやいや、閣下を信用していないわけではございませんが、このような依頼をなさるから…」
「このような依頼?」
「いえいえ、しかし、使者がカーンであった場合はクロチアのようにそのまま殺される可能性がございますが」
怯えてホフマンは言う。
「ふんっ。傲慢なカーンが再び使者などなるものか。貴様にはカーンの使者を愚弄して馬鹿にしてもらいたい。もし、カーンが現れたなら、クリスティーナ様が自愛の鉄拳雷撃でカーンを攻撃して頂けよう」
「本当でございますか」
多少疑わしそうにホフマンが聞く。
「カーンはクリス様の雷撃は恐れておるわ。その証拠にそれ以降このボフミエには手を出して来ん」
「さようでございますか」
「そうだ。頭に来たカーンが攻め込んできた時に我々が待ち構えてモルロイを殲滅するのだ」
「本当にすぐに来ていただけるのですか」
なかなか信じようとせずにホフマンは食い下がる。何しろ本当に今までアレクには散々ひどい目にあわされてきたのだ。
「そのためのスカイバードであろう。この地には1時間もあれば到着する。それに私ならばこのように瞬時にここまで来れる。ジャンヌ、ウィルとクリス様の4人ならば即座にこの地に来ることも可能だ」
「さようでございますか。それならば喜んでさせて頂きましょう」
ホフマンはやっと頷いた。
「そうか。やってくれるか。クリスティーナ様もお喜びになられるだろう」
「はい。このホフマンにお任せください」
ホフマンは胸を叩いた。
それを鋭い目つきでアレクは見ていた。
(例え遅れたとしても必ず仇は必ず取ってやるよ。その時は息子を必ず王にしてやるしな)
そのアレクの思惑をホフマンが知らないのはホフマンにとって幸いだった。
********************************************************
人物紹介
ウィリアム・ミハイル15 クリスの弟 ミハイル侯爵家の次期当主
今はジャンヌの下の魔導師団所属。クリスの護衛の騎士も兼ねている。
3年前のノルディン戦はクリスを守って12歳で従軍。
転移が出来る。魔力量はジャンヌの下だがマーマレードでは最年少騎士。
騎士の誓いはクリスに捧げている。
「姉を泣かせるものは叩っ切る」と。
前皇太子のエドがクリスと婚約破棄した時エドに剣を向けているとんでもないシスコン…
隣国クロチアが1日でモルロイの魔王カーンに占拠された事に恐怖を感じていたが、なんとか、ボフミエの筆頭魔導師のクリスティーナにいざという時の援助の確約をもらえたのだ。
赤い死神のアレクと違って魔王に攻撃されたら即座に援軍を送ってくれるはずだ。
前の会談で話した通りに1週間に1度ボフミエとの間でスカイバードも飛び出した。
ボフミエへ送り出した魔導師の育成も順調に進めば毎日飛び出すはずだ。
ホフマンにとっては自国の魔導師の能力も上げてくれてこれほどうれしいことは無かった。
ボフミエとの協力体制は搾取だけでなくてトリポリ自体の国力も上げようとしてくれていた。
5000トンの食糧など安いものだった。
今まではノルディン帝国に搾取されるだけだったが、ボフミエとの協力体制は国家の存続の可能性も上げてくれるものでありがたかった。
ドラフォードとも同盟は結べたし、マーマレードとテレーゼの次期国王とも顔つなぎは出来た。
更に息子も留学させてさらに確固たる繋ぎも出来るだろう。
「儂もやっと運が向いて来たぞ」
ホフマンは自分を褒めたかった。
「さようでございますな。陛下のお力によってボフミエ国とも援助協定が結べましたし」
「そうだろう。ボフミエの筆頭魔導師様は義に厚いお方だ。
いざという時は必ずお助けいただける。アレクサンドロ殿下ではいざという時は裏切られる可能性があるからな」
「誰が裏切るって」
いきなり転移して来たアレクはニコニコして言った。
「閣下」
椅子にふんぞり返っていたホフマンが驚いて椅子ごとひっくり返っていした。
「私が貴様を裏切ったことがあったか」
地の底から聞こえるような声でアレクが言う。
「いえいえ、滅相もございません。言葉の綾でございますよ」
慌ててホフマンが否定する。
戦場に置き去りにされたり囮にさせられたことは一度や二度ではないが。
「言葉の綾だと」
「ヒィィィぃ」
アレクの言葉にホフマンは震えあがった。
「まあ良い。実はその方に頼みがある」
「はっ何でございましょうか」
またとんでもない事を頼まれるのではないかとホフマンはおっかなびっくりで聞いた。
「何、大したことは無い。モルロイの使者が来た時に今のように尊大な態度で対応してほしいのだ」
何でもない事のようにアレクが言う。
「はいっ?」
目を見開いてホフマンはアレクを見つめる。
「そのような事をしては私が魔王カーンに睨まれますが」
慌ててホフマンが言う。
「何を恐れる。貴様の後ろには我々がいるのだぞ。私では信用ならなくてもクリスティーナ様は自愛のお方。貴様を見捨てる事は絶対になさるまい」
アレクは断言した。
「いやいや、閣下を信用していないわけではございませんが、このような依頼をなさるから…」
「このような依頼?」
「いえいえ、しかし、使者がカーンであった場合はクロチアのようにそのまま殺される可能性がございますが」
怯えてホフマンは言う。
「ふんっ。傲慢なカーンが再び使者などなるものか。貴様にはカーンの使者を愚弄して馬鹿にしてもらいたい。もし、カーンが現れたなら、クリスティーナ様が自愛の鉄拳雷撃でカーンを攻撃して頂けよう」
「本当でございますか」
多少疑わしそうにホフマンが聞く。
「カーンはクリス様の雷撃は恐れておるわ。その証拠にそれ以降このボフミエには手を出して来ん」
「さようでございますか」
「そうだ。頭に来たカーンが攻め込んできた時に我々が待ち構えてモルロイを殲滅するのだ」
「本当にすぐに来ていただけるのですか」
なかなか信じようとせずにホフマンは食い下がる。何しろ本当に今までアレクには散々ひどい目にあわされてきたのだ。
「そのためのスカイバードであろう。この地には1時間もあれば到着する。それに私ならばこのように瞬時にここまで来れる。ジャンヌ、ウィルとクリス様の4人ならば即座にこの地に来ることも可能だ」
「さようでございますか。それならば喜んでさせて頂きましょう」
ホフマンはやっと頷いた。
「そうか。やってくれるか。クリスティーナ様もお喜びになられるだろう」
「はい。このホフマンにお任せください」
ホフマンは胸を叩いた。
それを鋭い目つきでアレクは見ていた。
(例え遅れたとしても必ず仇は必ず取ってやるよ。その時は息子を必ず王にしてやるしな)
そのアレクの思惑をホフマンが知らないのはホフマンにとって幸いだった。
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人物紹介
ウィリアム・ミハイル15 クリスの弟 ミハイル侯爵家の次期当主
今はジャンヌの下の魔導師団所属。クリスの護衛の騎士も兼ねている。
3年前のノルディン戦はクリスを守って12歳で従軍。
転移が出来る。魔力量はジャンヌの下だがマーマレードでは最年少騎士。
騎士の誓いはクリスに捧げている。
「姉を泣かせるものは叩っ切る」と。
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