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第六章 クリス ボフミエ皇帝?になる

テレーゼ王女はボフミエに派遣されることになりました

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テレーゼ王宮にてアント商会の顛末をアメリア王女が女王に報告していた。
その後ろにはわざわざ呼ばれたヨークシャー公爵サイラスが70超えたとは思えぬはつらつとした容姿をして聞いていた。

「アント商会の始末は以上です」
アメリア・テレーゼは母のオリビア女王に報告した。
「ん、よくやった。アメリア、あのアントがそのような不届きの事をしていたとはの」
オリビアは残念そうに言った。
「本人は灰塵と化しておりますが」
「聖女クリスの天罰か。予を差し置いて聖女とは片腹痛いの」
忌々しそうにオリビアは言って後ろのヨークシャーを見る。
それを残念なものでも見るようにサイラス・ヨークシャー公爵は見ていた。
サイラス公爵の孫娘がクリスに当たるのだ。
「サイラス。何かあるのか」
サイラスの態度にオリビアが聞く。
「いえいえ、女王陛下。何もございませんぞ。
ただ、孫娘はかわいいですからの。いくら陛下がお美しいとはいえ、爺馬鹿には残念に思えてしまうので」
「サイラス。貴様今私に向かって年を取ったなと言いましたね」
サイラスの言葉にオリビアは食いつく。
「まさか、滅相もありません。何しろ陛下は私よりも20もお若いのですぞ。そのような方に年寄りなどとはいえる訳もございません」
「貴様の孫娘は更に20も若かろう」
「正確には30近く」
「サイラス。何か言ったか」
益々オリビアは機嫌が悪くなる。

「母上、年齢の話はどうでも良いのです。私が欲しいのはボフミエに今回の賠償を求めるかどうかです」
思わずアメリアが間に入る。
「ムカつくサイラスに免じて、当然請求しよう」
「陛下。それでは全く免じておりませんぞ。
そもそもそれでなくても聖女クリスと尊ばれている孫娘からの食糧援助依頼を袖にし続けた陛下が問題なのです。
孫は粥しか食べておりませんで涙ながらに食料援助を頼みに来たのに会いもせずに追い返すなど悪逆非道の女王と巷では」
「ちょと待て。サイラス。クリスは一度も来ておらんぞ。我が国は無視して妹のドラフォードへ行ったのじゃ」
「何と陛下は心の狭い。来ないからと言って無視するなぞ、悪魔のすることですぞ」
「別に直接頼まれてはいないから無視しただじゃ」
「儂が涙ながらに毎日お願い申し上げたのに、この忠臣サイラスの願いを全く無視されて」
「何が涙ながらにじゃ。孫は10代でお肌つるつるとか、それに比べて女王は目にしわが出てきただの散々けなしおってからにそんなので援助する訳なかろう」
「なんと狭量な。孫娘は殺されかけた王弟ですら許して聖女とたたえられておりますのに、
そんな事だから年増のいじわる女王がいじめているとか世間に言われるのです」
「サイラス。貴様が言っているだろうが」
「公爵、お控えなされ」
切れた女王にさすがに横から侍女頭も声をあげる。

「事実を申しただけですのに」
悪びれもせずにサイラスは言い切った。

それをオリビアが睨みつける。
「母上、サイラスの相手よりも私の相手をしてください」
いつまでたってもらちが明かないので思わずアメリアは話を続けようとする。

「その方も20を過ぎてから気が短くなったの」
ボソリとオリビアは呟いた。
「母上。私を年寄り扱いしないでいただきたい」
23になってまだ婚約者のいないアメリアは行かず後家とそろそろ宮廷でも噂され出して気にしていた。

「まあそう怒るな。
アマダから押収した金貨は2000万枚にものぼろう。そのうち4分の一をボフミエに迷惑料として払ってやれ」
「500万枚もですか」
アメリアは驚いた。通常ならそれで50万トンの食糧が買えた。ボフミエの3年分の食糧だ。

「まあ、ボフミエにはその方のいとこのジャンヌやオーウェンもいる。トップはそのむかつくヨークシャーの孫だしな。恩を売っておいて損はない。
その代わり、今マーマレードとボフミエの共同開発したスカイバードをこのテレーゼに設置してもらうように交渉せよ」
「御意」
アメリアは頷く。
「ついでにその方も2年くらいボフミエにて勉強してくるのじゃ」
「私もですか」
「世界各地から王族が大挙して研修に訪れようとしているらしい。
その方もそこで婿を捕まえてくるのじゃ」
「は?」
思わずアメリアは変な声を出した。

「その方ももう23、そろそろ相手を見つけよ。
国内に相手がおらねば海外で見つけるしかあるまい。
ボフミエにはGAFAの邪魔が無くなったので各地の優秀な王侯貴族の子弟が集まりだしているらしい。
その方よりも若いジャンヌもオーウェンも相手はいるようじゃぞ。年上のお前も負けておれまい」
「陛下!」
文句を言おうとしたがそれをオリビアは止める。
「まあ、各国の王侯貴族と交流するのも良かろう。
そこで相手が見つからねばその時は強引にあてがう事になろうと思うがサイラスどう思う」
「さようでございますな。オリビア様もエリザベス様もキャロライン様もご結婚されたのは20の後半。
それから見るとまだ、姫様はお若いですが」
「そんなこと言って相手がいなくなってはどうするぞ」
オリビアは言う。
「まあ、この国では姫様はお山の大将。他国で同じような方々に囲まれていろいろと揉まれるのも良いかもしれませんな」
笑ってサイラスも言う。
その二人を忌々しそうにアメリアは見ていた。
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