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第六章 クリス ボフミエ皇帝?になる

クリスは人間ロケットに乗ることにしました

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翌日、クリスは熱も下がっていた。
朝一番でジャルカの執務室に行く。
「これはこれはクリス様。体調は大丈夫ですか?」
「すいません。ジャルカ様。ご迷惑おかけしてしまって」
クリスが頭を下げる。
「いやいや、無理をさせているのは私どもですからのう。
食糧問題もミハイル卿がいろいろご協力いただけるみたいで、何とかなりそうですぞ」
「本当ですか?」
クリスが食いついた。
今までそれが気になってほとんどご飯も喉を通らなかったのだ。
ここ10日間、本当につらかった。
「全ては援助は無理でも、最悪は米を貸してくれるそうです」
ジャルカが言う。
「そうですか。良かったです。本当に」
半分涙ぐんでクリスが言った。
「姫もたまには役に立つみたいですな」
「ジャンヌお姉さまがいろいろお骨折りして頂いたのですね」
クリスが感動して言う。
「いやいや、クリス様のお父様がいろいろ動いて頂いたからです。
姫はその手がかりを付けただけですわ」
ジャルカは苦笑いをした。
(エルンストが意地悪するからクリスが心労で倒れたと言っただけですからの)
ジャルカは心の中で思う。

「そうですか。お父様が…」
公私混同になるからとクリスは父には連絡しなかったのだが、代わりにジャンヌが動いてくれたのだ。
「これであなたたちの村が飢える事も無くなるわ」
クリスが後ろにいたアデリナに語り掛ける。

「ありがとう御座います。クリス様」
後ろでついていた侍女のアデリナがクリスに礼をする。
「私は何もしていません。ジャンヌお姉さまやお父様にはあとでお礼を言っておきます。
でも、これもみんなが頑張ってくれたからです」
「いえ、縁もゆかりもないクリス様たち皆さんが頑張って頂けたからです」
平伏しそうな勢いでミアも言う。
「皆さんが頑張っていろいろとして頂けたからですよ」
涙ぐむ2人を振り返ってクリスが言う。

「でも、なおの事、ここからが大切ですね。
ジャルカ様。オーウェン様が農業指導者派遣の交渉に行かれたそうですが、私もお手伝いに行きたいのです

「なるほど。いつの間にかそれだけオーウェン様に惹かれるようになったという事ですかな」
にこりと笑ってジャルカが言う。
「いえ、そんなことはありません」
はっきりとクリスが否定する。

「そうですか。オーウェン様も報われませんな。クリス様の気を引くために必死にやっているというのに」
ジャルカが残念そうに言う。
「オーウェン様はドラフォードの皇太子殿下です。
私以上にふさわしい人はいらっしゃるはずです」
クリスが言い切る。

「そうですかの。聖女クリス様程オーウェン様にふさわしい方は中々いらっしゃら無いように思いますが」
「まあ、ジャルカ様はお上手ですね」
クリスはジャルカの心からの誉め言葉もお世辞としか見ていなかった。

「オーウェン殿もなかなか報われませんな」
小さな声でジャルカが言う。
「何か言われましたか」
クリスがそれを聞きとがめて言うが、
「いえいえ、何も。それよりクリス様。マーマレードとボフミエの共同開発した乗り物がこの度出来ましての。
ドラフォードにはセールス兼ねて是非ともそれで行って頂きたいのですが」
ジャルカが提案する。

「ちょっと待った。ジャルカ爺」
後ろからウィルが慌てて前に出てきた。
「それこの前オーウェンが飛ばされた人間ロケットじゃないのか」
「そうですよ。そのような危険な物にクリス様をお乗せするのは無理でしょう」
アルバートもジャルカに詰め寄る。

「何を他人ごと宜しく言っているのですか。
当然あなた方にも乗って頂きます」
ジャルカが言う。
「えっ俺たちも」
ウィルとアルバートが絶句した。
「オーウェン様が乗られたのはあれは兵器でしたが、それをクリス様が乗られても大丈夫なように改良いたしました。
訓練した魔導士が操縦するために乗りますからな。安全性も何度も実験しておりますし、問題は無いですぞ

ジャルカは笑って言った。
「いやっ絶対に違うでしょう」
「オーウェン様はもう少しで死ぬところだったと」
ウィルとアルバートはなおも抵抗する。

「ジャルカ様。その乗り物はどれくらいでドラフォードに行けますの」
クリスが尋ねた。
「王都の側の港町ハイリンゲンまで2時間くらいですな」
「そんなに早く行けるのですか」
クリスは驚いて言った。

「だから姉様。とんでもない物だって」
「そうです。クリス様。絶対に命懸けですって」
ウィルとアルバートが必死に止めようとする。
「うーん、でも時間が短縮できるなら良いことですし、それならオーウェン様に追いつけますよね。
それにこれが他国に売れるとボフミエも利になりますよね」
クリスが言う。
「そうなのです。ドラフォードのイエーナとマーマレードの首都マーレ、それとボフミエの帝都ナッツァを結べばナッツァはもっと発展するのは目に見えています。
まだしばらくは高級なものになるとは思われますが、うまくいけば今回借りる食料の借りを返せるやもしれません」
ジャルカがここぞとばかりにクリスに言った。
「判りました。私が実験台で良ければ乗ってみます」
クリスは決意した。

「そんな姉様。危険だよ」
「そうです。クリス様。そんな無茶は」
ウイルとアルバートが必死に止めようとするが、
「あなたたちが嫌なら、他の人についてきてもらうわ」
クリスが言う。

「えっ」
「そんなことできる訳ありません」
「そうです。姉様が乗られるなら僕も乗ります」
二人は慌てて言いきった。
「ジャルカ様は安全だとおっしゃるんですもの。絶対大丈夫よ」
笑ってクリスは言った。

(ジャルカが笑って勧める事は絶対に大丈夫では無い)
とウィルとアルバートは心の中で叫んでいた。
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