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第六章 クリス ボフミエ皇帝?になる

クリスはなじみの商店から食料を借りました

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結局GAFAと交渉しても全く進展しなかった。
「申し訳ありません。クリス様。せっかく交渉したのに、全く譲歩を引き出せませんでした。」
珍しく杓子定規にオーウェンが謝った。
「オーウェン様。私も一緒に交渉させていただいたのです。
失敗したのは私の責任でもあります」
「しかし、クリス嬢」
「少なくてもここは私が責任者なのです。
全ての責任は筆頭魔導師に属するのです」
クリスが言い切った。
「少なくとも私を担保に出せば6万トンは貸して頂けることが判りました。それだけでもプラスです」
「クリス。何回も言うようにそれは俺は認めないよ」
オーウェンが地を出してクリスに向かって言う。敬語も何もかも吹っ飛んでいた。
「まあ、最悪私を犠牲にすればボフミエの民は救われるのです。最悪の事態がどういうものか判って良かったではありませんか」
クリスは言うと
「しかし」
オーウェンが言う。
「なら、そうならないようにお力を貸してください」
「何でもするよ」
オーウェンが言う。
「ではもう一つ、商店を呼んでいるのでお会い頂けますか」
「当然だ」

ノックの音に扉が開いてナタリーが顔を出す。
「エスター商店様がいらっしゃいました」
「お通しして」
クリスが頷く。

入ってきたのは40代の精悍な面構えの男だった。
「エスター、お久しぶり」
「お久しぶりです。クリス様。いつもご活躍を陰ながら応援いたしておりました。
この度はこの国の筆頭魔導師にお成りになられたそうで」
「まあ、なぜかわからないけどこうなってしまって」
「クリス様のお力によるものです。
クリス様はこれまでも多くの者をお救いなされました。
この度もこのボフミエの民を救おうとなされているとお伺いしております」
「私の力はまだまだなのだけれど、皆に助けてもらって何とかやっているの。
そして、あなたにもお願いしたいことがあるの。とても無理なお願いだけど聞いてもらえるかしら」
クリスが首をかしげて聞いた。
「このやつがれがここに生きていられるのはクリス様のおかげです。
クリス様の為ならばどのような事もやりましょう」
エスターが頷く。
「ごめんなさい。出来るだけで良いの。それであなたのお店がつぶれたら元も子もないから」
「で、米何トン用立てれば宜しいですか」
さらりとエスターは聞いてきた。
「よく判ったわね」
驚いてクリスが聞いた。
「ボフミエの窮状はしれてますからね。GAFAが何か暗躍していることもね」
笑ってエスターが言った。
「出来れば米5千トン。貸してほしいの。出来るだけ早く返すという約束のみで」
「クリス様には命を救われました。また、お父上の侯爵様にもいろいろお世話を頂いております。
1万トンお貸しいたしましょう」
「えっ1万トンも。GAFAがいろいろ妨害してくると思うの。あなたそれでやって行けるの」
クリスが驚いて言った。
「元々ノルディン戦で死んでいた身です。それにGAFAと言えどもマーマレードではそんな力はございません。マーマレードでクリス様に逆らって商売できる者もおりませんよ」
「私の力はそこまでないと思うけど」
「またまた御冗談を」
エスターは笑って言った。
マーマレードでクリスに救われた者は多い。クリスの為と言われれば馳せ参じる者も多い。
逆にクリスの逆鱗に触れたとなれば商売するのは難しいだろう。
そもそもマーマレードは科学立国。魔道具等を多く輸出している方が多く、商人としては縁を結びたい国なのだ。世界商店のGAFAと言えど同じで、マーマレードから取引禁止にされた方が余程手痛い事になるのだ。
GAFAはクリスの影響力を理解していないのか、あるいは傲慢にもクリス人気よりもGAFAの方が力があると考え違いをしているのか判らないが。
エスターはクリスに喜ばれたという事の方が余程商売にプラスになった。
食料1万トンなどその影響力を考えれば絶対に大したことは無かった。
もっとも多くの食料はGAFAが押さえているから手配するのが大変だったが、1万トンくらいなら何とかなるだろう。
とエスターは目途を建てていた。

「エスター殿。ドラフォードへ来られることがあればこれを」
オーウェンは懐から鑑札を取り出して渡した。
「ドラフォードの宮廷ご用達の鑑札だ」
「しかし、皇太子殿下。このようなものを頂いては」
「1万トンの利息だと思って欲しい。この度は困っていてな。我らを助けてくれたその方の心に答えたい。もっともドラフォードに来なければ使いようがないが」
オーウェンは言った。
「いえいえ、必ず使わせていただきます」
エスターは笑って言った。
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