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第六章 クリス ボフミエ皇帝?になる

食料が足りなくて飢饉になりそうなことが発覚しました

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「ふんっ魔導師団長さんよ。今アマダの手のものを弾き飛ばしたけど、
いくら力が強くても米が無きゃ、皆飢え死にするしかないんだけど」
元気だった女が言った。

「米が無い?」
ジャンヌは何のことか判らなかった。
「ええ、地方では米が無くて飢え死にしている人も出始めているんです」
アデリナが言った。
「ライラ、聞いているか」
「いえ、初耳です」
ジャンヌらにとってその話は初耳だった。
「お姫さんはお気軽でいいね。いつ死ぬかも判らない民が何万人といるのに」
女の声にジャンヌは唖然とした。


「何ですって。金貨100万枚の借金があるんですって」
思わずクリスは大声を上げていた。
深窓令嬢と思われて大人しい印象のクリスが声をあげるなんて余程の事だった。
閣議の他の者も驚いたが、それ以上にメルヒオールの報告は衝撃的だった。

「GAFAに100万枚もの借金があるってどういう事だ」
喧嘩腰にオーウェンが言う。
「そうおっしゃられても皇帝陛下が」
「それは良い。なんで前回言わなかった。これですべてなのか」
「大きなものはそれで全てです」
「食料半年分買える金額ですな」
「それも月に1割とは高利ですな」
皆次々に話す。

「アレクサンドル様。先日ご相談した事ですが、もしこれを放棄した場合どのような事になりますか」
クリスが聞いた。
「メリットとしては借金が帳消しになるという事です。
デメリットとしては1つ目は2度と金を貸してもらえなくなること。
2つ目は世界の流通の7割をGAFAが押さえていると言います。
物資が手に入りにくくなります」
アレクがスラスラ話す。
「判りました。オーウェン様。GAFAとの交渉決裂で被害の出そうな物をリストアップしてもらえますか」
「判りました」
オーウェンが頷く。

「オーウェン様。オーウェン様の方は何か緊急に議論に上げなければいけないことが見つかりましたか?」
「気になるのは、食糧事情です。少し調べただけですが、食料の備蓄がほとんどないのではないかと思うのですが」
オーウェンが報告する。

「それは一大事ではないかと思うのですが、どんな感じなのですか」
クリスが慌てて聞く。

「詳しい事はまだ。現在内務省を上げて精査しているところです。
ただ、金貨100万枚の借金があることを鑑みますと、食料の多くを軍資金にするために売り払ったのではないかと懸念されます」
「判りました。
アレクサンドル様。これは内々ですが、食料の援助を依頼した場合、どれくらい集められるか、少し探って頂けますか。我々もお手伝いしますので」
「それ程ひどいのか」
アレクはオーウェンに聞いた。
「うーん。何とも言えないが、財務卿。何か知っておられるか」
オーウェンが聞く。

「いや、卿は詳しくは。ただ、借金の担保に3万トンの食糧を提供はしているのではないか」
「何!そう言う事はサッサと言えよ」
オーウェンが切れていった。
「じゃあ100万枚踏み倒したら3万トンの食糧がパーなのか」
アレクもいきり立つ。
「他にも何か隠ししているだろう」
オーウェンがメルヒオールに掴みかからんとせんばかりに近付く。
アレクも詰め寄った。
傲慢なメルヒオールもさすがに青くなった。

その時その頭上に突然3人が転移してきた。

「ギャアアア」
メルヒオールとオーウェンが下敷きになる。
アレクはさっとよけていた。

「クリス大変だ。飢饉が起こっている」
メルヒオールとオーウェンをクッションにしてショックを弱めたジャンヌは閣議の中でクリスを見つけて叫んでいた。

「えっジャンヌお姉様。どういうことですか」
思わず閣議にもかかわらず、思わずお姉さま呼びをしてしまったクリスも動揺していた。
「おいっお前ら退け」
元気な女とアデリナの下敷きで苦しんでいたオーウェンが言う。
訳が判らず、「ちょっと来い」
と言われて転移させられてきた二人は呆然としていたが、慌ててオーウェンとメルヒオールの上から退く。
メルヒオールは白目を剥いて気絶していた。


それからは大変だった。
奴隷の売買と人攫いが横行しており、兵士も共犯者が多数いる事が判明してジャスティンとドラフォード第一師団の第一大隊、マーマレードのジャンヌ中隊とグリフィズが中心になって綱紀の粛正を行う事になった。ジャスティンらの怒りはすさまじく、牢につながれた兵士の数は全軍の3分の一にも及んだ。

そこはジャスティンらに任せて、オーウェンを中心に直ちに食糧計画の精査を始めた。
2日間の半徹夜状態でオーウェンが計算した貯蔵量は絶望的だった。

「全人口100万人の年間必要量は米18万トン。来年の9月までで、14万トン。
でも、一般家庭にある分も含めて2万トンも無い
種餅1万トン含めても3万トンだ」
「11万トンの不足だ。木の実とか何とかいろんなものを採ったとしても6万トンは不足している。」
「種もみ1万トンは必要だわ。7万トン
1ヶ月に必要な米の量は1.5万トン。何としても早急に1万トン入れる必要があるわ」

「沿岸のGAFAの倉庫には約4万トンが保管してあるらしい。それを手に入れられれば多少は何とかなるな」
「でも、お金はすぐに返せって言っているんですよね。お米を貸してくれるなんて難しいのでは」
「マーマレードに願いしたら2万トンくらい融通してくれるのでは」
ジャンヌが言う。
「そんなに備蓄をまわしてくれるとは思えませんが」
クリスが言う。
父は娘を溺愛しているが公私混同はしないはずだ。備蓄も今年の穀物は少し不作で備蓄が減っているはずだ。そこまで融通してくれるとは思えなかった。
「ノルディンは5千トンくらいかな。それなら確約できるよ」
アレクが言った。
いくらケチな皇帝とはいえ、ここは名前を売るチャンスだと思ってそれくらいなら融通してくれるだろう。
とアレクは思った。

「ノルディンが5千トンならドラフォードは1万トンかな」
オーウェンが言う。
「ノルディンの属国にも頼んでみるよ。1万トンくらいは何とかなるんではないかな」
アレクが言う。
「ノルディン方面が1万トン。マーマレードは5千トン。ドラフォードが1万トン。で2.5万トンしかないですね」
オーウェンの下にいるヘルマン・ゲーリング元王子が計算した。
「残り4.5万トンか。どうしてもGAFAの食糧は手に入れるしかないな」
アレクが言った。
「制圧するならすぐにできるが」
ジャンヌも言う。
「まあ、お姉さま。ここはとりあえず、まず交渉してみましょう」
武力行使したがる二人をクリスが抑えた。
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