上 下
136 / 444
第五章 ボフミエ皇帝誘拐する

ボフミエ最終戦3 魔導帝国皇帝は最後まで卑怯な手を使いました

しおりを挟む
「何だと!魔人が一発で倒されただと」
それを唖然とアーベルは見ていた。

何しろ魔人を1人作り出すのにボフミエ1000年の歴史がかかっているのだ。
昔の薬は魔人と化した人間は1日ともたなかった。
それを改良に改良を加えて、やっと3年くらいは生きていられるようにしたのだ。
それがあっさり小娘の張り手一発で倒される、それも良く見ると絶対に元に戻らない死ぬときは跡形も残らないほどにクジュグジュの肉塊になって朽ち果てるはずなのに、元の人に戻っているではないか。
ボフミエ帝国1000年の歴史が小娘一人に否定されたように感じた。

「クリス様」
ジャスティンは慌てて駆けよってきた。

「ジャスティン。魔人は私が倒します。魔人までの道を作ってください」
クリスがジャスティンに向かって言った。

「えっ、しかし」
ジャスティンは戸惑った。
かよわいクリスに魔人の相手をさせて良いものだろうか。

「今の見ましたよね。何故か判りませんが、魔人には私のやり方が有効です。
だからさあ!」
クリスは凛として命令する。

「了解しました」
ジャスティンが次の魔人を見た。

攻撃魔法をその魔人の前にいる魔導師らに向けて放つ。
魔導師たちは障壁で受けた。
しかし、次の瞬間にはジャステイン自体が抜剣して飛び込んできた。

その斬撃に耐えらずに次々に弾き飛ばされる。

その後をクリスがトテトテと走る。
そのスピードに合わせながらクリスに向かってくる魔導師を次々に倒して言った。
そして、魔人の前に出ると
「クリス様」
と言って道をクリスに譲る。

これが騎士として本当に良いのかと疑問に思いながら。
本来ならば自ら先頭を切ってクリスより先に魔人と切り結び、隙をついてクリスが倒すのが良いと思うのだが。
ジャスティンが切り結んでいるとクリスの邪魔になるのだ。
次の魔人はクリスが飛び上がって来たので、障壁で防ごうとするが
「人間に戻りなさあああい」
クリスの魔力を秘めたグーの手はその障壁をものともせずに一瞬で破壊し呆然とする魔人の顔にそのグーの手を突き出したまま飛び込んでいた。

すさまじい光の爆発が起こり、落ちてくるクリスをジャスティンが受け取る。
その爆発の後にはヒクヒクと断末魔のように痙攣する魔導師が倒れていた。
「次に行きましょう!」

次の標的を指さしてクリスが言う。
「はっ」
次の魔人に向けてジャスティンは駆け出した。

ジャスティンはクリスの手が何故魔人に効くのか全く判らなかった。
魔人と化した者の対処法は殺すしかないはずだった。
しかし、クリスの鉄拳というか殴打、見た目は女の子の遊びの殴打で次々に魔人が人間に戻っていく。
奇跡だった。

それはドラフォードの兵士たちもそう思った。
魔人を1人倒すのには1個大隊では足りないと言われた。
1個師団を壊滅させた魔人も過去にいたと。
そもそも魔人化した人は人間がコントロールするすべなどないはずだった。
それを軍事化しているボフミエもすごい。
魔人の数は8人。
これだけいればうまくいけば1国を壊滅するのも可能のはずだった。
ボフミエはおそらく世界に対して戦争をおっぱじめるつもりだったのだろう。

これだけの戦力がいれば東方第一師団も下手したら壊滅したてかもしれなかった。
しかし、クリスが次々に魔人を無効化していくので魔導師団と互角の戦いが出来ていた。
というか押していた。

「よし、全軍もっと前に押し出せ」
ミューラーが叫んだ。
ボフミエの魔導士たちが攻撃してくるがこちらも百戦錬磨のドラフォード最強師団。
ボフミエほどではないが、魔導師の数も多い。
魔人さえいなければ負けるわけは無かった。


「皇帝陛下。このままでは危ないです」
魔導師の一人が進言する。
アーベルは自らが作り出した最強の魔導部隊の魔人が次々にクリスの前に倒されていくのを呆然と見ていた。
そのアーベルの目にこちらを向いて指さすクリスが目に付いた。

「ジャスティン」
クリスが指示する。

抜剣したジャスティンが本陣に向かって駆けだした。
皇帝の周りにはもう20人もいなかった。
5人の親衛隊の騎士がジャスティンの前に立ちふさがろうとしたが、
「退け!」
ジャスティンの一閃で騎士たちは弾き飛ばされていた。

ジャスティンは皇帝をきっと睨むと皇帝に向けて駆けだす。

「ひいいい」
思わず皇帝は腰砕けになった。


しかし、ジャスティンの前にはサロモンが立ちふさがる。
サロモンはジャスティンに対して衝撃波を放つが後ろにいたクリスが障壁で防ぐ

次に振り下ろしたジャスティンの剣はサロモンの障壁で防がれた。
二人が魔術と魔術を纏った剣でやり合う。
片やボフミエ最強の魔導師、片やボフミエ最強の魔導騎士だった。
ファイヤーボールを次々にサロモンは放つがジャスティンは剣で弾き飛ばす。
その隙をついてジャスティンが剣で衝撃波を発するがそれはサロモンの障壁で防がれた。

二人は互角に戦う。

しかし、そこにドラフォード軍が迫って来た。
魔人もいず魔導師だけになったボフミエ軍は防ぎきれなかった。

散り散りに敗走して迫って来る。
そしてその後ろにドラフォードの1個師団が大挙して迫って来た。

さすがにそれを見てサロモンは諦めかけた。

皇帝アーベルは最後の賭けに出た。
アーベルは傍に縄で後ろ手に縛られた途中で捕まえた女を引き起こして、その女に剣を突き付けて叫んでいた。
「動くな!動くとこの女にの首をはねるぞ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

【書籍化】ダンジョン付き古民家シェアハウス

猫野美羽
ファンタジー
※書籍化しました。 電撃の新文芸(KADOKAWA)にて1巻刊行中・2巻は2024年6月17日刊行予定 ※書籍化にともない、アルファポリスさまのサイトでは非公開とさせていただきます。 お手数ですが、今後はカクヨムでお読みいただけると嬉しいです。 大学を卒業したばかりの塚森美沙は内定していた企業が潰れ、ニート生活が決定する。 どうにか生活費を削って生き延びねば、と頭を抱えていたが、同じように仕事をなくした飲み仲間三人と祖父母から継いだ田舎の古民家で半自給自足のシェア生活を送ることに。 とりあえずの下見に出掛けた祖父母宅の古びた土蔵の中に、見覚えのないドアが直立していた。 開いた先に広がるのは、うっすらと光る不思議な洞窟。転がり込んだそこは、どうやらダンジョンらしくーーー? 貧乏生活もダンジョンのおかげで乗り越えられる?  魔法を駆使して快適生活。レベルアップした身体で肉体労働どんとこい! ドロップアイテムで稼ぐには? 男女四人の食い気はあるが色気は皆無な古民家シェアハウスの物語。

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

【R18】幼馴染の魔王と勇者が、当然のようにいちゃいちゃして幸せになる話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜

ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……? ※残酷な描写あり ⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。 ムーンライトノベルズ からの転載です。

モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~

古里@電子書籍化『王子に婚約破棄された』
恋愛
前世コミュ障で話し下手な私はゲームの世界に転生できた。しかし、ヒロインにしてほしいと神様に祈ったのに、なんとモブにすらなれなかった。こうなったら仕方がない。せめてゲームの世界が見れるように一生懸命勉強して私は最難関の王立学園に入学した。ヒロインの聖女と王太子、多くのイケメンが出てくるけれど、所詮モブにもなれない私はお呼びではない。コミュ障は相変わらずだし、でも、折角神様がくれたチャンスだ。今世は絶対に恋に生きるのだ。でも色々やろうとするんだけれど、全てから回り、全然うまくいかない。挙句の果てに私が悪役令嬢だと判ってしまった。 でも、聖女は虐めていないわよ。えええ?、反逆者に私の命が狙われるている?ちょっと、それは断罪されてた後じゃないの? そこに剣構えた人が待ち構えているんだけど・・・・まだ死にたくないわよ・・・・。 果たして主人公は生き残れるのか? 恋はかなえられるのか? ハッピーエンド目指して頑張ります。 小説家になろう、カクヨムでも掲載中です。

【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 前話 【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...