131 / 444
第五章 ボフミエ皇帝誘拐する
ボフミエ王宮攻防戦1 暴風王女と赤い死神は王宮に潜入しようとします
しおりを挟む
さかのぼる事1日前
ボフミエの王宮魔法の塔ではいらいらしながら皇帝アーベル・ゲーリングは報告を聞いていた。
翌朝目覚めると各国から非難の書簡が大量に届きだしたのだ。
皇帝自らが人攫いなされるなど言語道断。
いつから帝国は人攫いの国家になられた。
国主ともあろうものが許されざる行為。
等々非難のオンパレードだった。
各国大使からはもとより国王よりも多くの書簡が届けられていた。
「皇帝自らがたかだか一侯爵令嬢を誘惑するという史上初の壮挙、
更にその様子の一部始終を全世界に配信するという史上初の快挙をなされたことを心よりお祝い申し上げる。
これは全世界にボフミエに逆らえばどうなるかを自ら手を染めて示された
世界を恐怖により支配をしようとする御意志だと感じいっております。
ノルディン帝国皇帝ヤロスロフ・ボロゾドフだと、どういう事だサロモン」
ピキピキこめかみを震えさせながらアーベルは説明を求めた。
「どうやら陛下がクリスに接触される様子が全て撮影されていて、それがリアルタイムで配信されたようです」
頭を下げてサロモンが言った。
「何だと、隠密の魔術をかけていたのにか」
魔力で姿を隠していたはずであった。
「おそらく人は誤魔化せても機械のカメラには隠密の魔術は効かなかったのではないかと。
こちらを」
手に入れた映像をサロモンは流す。
転移した皇帝がクリスに接近して気絶させて転移する様子がはっきりと映っていた。
顔も何もかもがはっきりと。
そしてその後ろにボフミエ皇帝 侯爵令嬢を誘拐の文字が。
「こ、これが全世界に流されたのか」
アーベルは呆然とした。
いつも冷え冷えして臣下を見下ろす瞳はうつろだった。
ノルディンの皇帝に馬鹿にされるまでもなく、とんだピエロだ。
何処の国に皇帝自らが誘拐に手を染める国主がいるのだ。
それも現場をはっきりとさらされるなど。
恐怖の皇帝としてアーベルは国内に恐れられていた。
しかし、現役の皇帝が誘拐をするなど、それも現場を撮影されて全世界に同時に配信されるなど失態以外の何物でもない。
ドラフォード東方第一師団が北上中、漁港キールにはマーマレードの魔導師団が攻撃中、クリスは行方不明と八方ふさがりの状況だった。
しかし、クリスさえ捕まえて魔王を復活させればまだ何とかなるはずだった。
と言うか魔王さえ復活させればこの世界を手に入れる事すら可能だった。
笑い者のボフミエ皇帝が世界を恐怖に支配するのだ。
笑ってくれたノルディン皇帝など恐怖にゆがめた顔を全世界に流しながら公開処刑してくける。
「サロモン。クリスのいる位置は大体は判るな」
「ある程度は絞れますが」
「全魔導部隊を出撃させる」
「城の守りが手薄になりますが」
サロモンは危惧して言う。
「クリスが魔王化さえすればこの城などすぐにでも取り戻せる。
最優先はクリスの確保だ」
「御意」
その日のうちに皇帝以下魔導部隊は魔人と共に南下した。
*********************
一方ジャンヌ達はボフミエの王宮の傍に来ていたが、中々王宮に入り込むのに難儀していた。
「さすが、魔導帝国の王宮、おいそれとは入らせてもらえませんな」
ジャルカが言う。
いろいろ化けて入ろうともしたのだが、なかなか誤魔化しても入れない。
「こうなったら正門ぶった切って正面突破で」
ジャンヌが言う。
「さすがにそれはそのあとの行動が厳しいのではないか」
アレクが疑問を呈する。
「しかし、姉様がどうなっているか判らないし」
ウィルが焦って言う。
「ウィル、気にしなくてもクリスは大丈夫だ」
ジャンヌが言い切る。
「姫様ならそう思うけどかよわい姉様は…」
「ウィルそれはどういう意味だ?」
幾分より目になりながらジャンヌが言う。
「まあまあ、ウィル、クリス嬢はそこにいらっしゃるアレクサンドル皇太子殿下が地上で唯一恐れる方ですぞ。問題はおそらくありますまい」
ジャルカの言い様にアレクは苦い顔をするが否定しない。
「それは姫様の間違いでは」
ウィルが信じられないという口調で言う。
「ジャンヌは怖くはないがクリス嬢は恐ろしい」
ボソリともらしたアレクの言葉にウィルは絶句した。
ウィルはクリスがシャラザールの化身だと知らない。
あのはかない姉がシャラザール山を破壊したのは見たが、それと見た目は全然別ものだった。
アレクやジャンヌ、ジャルカはクリスの本性と言うかシャラザールにが憑依しているのは知っているし、
もしなんかあってもボコられるのはボフミエ皇帝だとはっきり思っていた。
クリスが本性さえ現せば、王宮から脱出するのは簡単だし、別にジャンヌらの手を煩わせることも無いとは思っていたが。
それとマーマレード国の中で侯爵令嬢を誘拐されて何もしないというのは別物だし、何もしなかったとシャラザールが後で知れば何をされるか判らないと特に怯えているのがアレクだったが。
「では、ここは私目の案で参りましょう」
ジャルカはそう言うと残りの3人を引き連れてひょこひょこ歩き出した。
ボフミエの王宮魔法の塔ではいらいらしながら皇帝アーベル・ゲーリングは報告を聞いていた。
翌朝目覚めると各国から非難の書簡が大量に届きだしたのだ。
皇帝自らが人攫いなされるなど言語道断。
いつから帝国は人攫いの国家になられた。
国主ともあろうものが許されざる行為。
等々非難のオンパレードだった。
各国大使からはもとより国王よりも多くの書簡が届けられていた。
「皇帝自らがたかだか一侯爵令嬢を誘惑するという史上初の壮挙、
更にその様子の一部始終を全世界に配信するという史上初の快挙をなされたことを心よりお祝い申し上げる。
これは全世界にボフミエに逆らえばどうなるかを自ら手を染めて示された
世界を恐怖により支配をしようとする御意志だと感じいっております。
ノルディン帝国皇帝ヤロスロフ・ボロゾドフだと、どういう事だサロモン」
ピキピキこめかみを震えさせながらアーベルは説明を求めた。
「どうやら陛下がクリスに接触される様子が全て撮影されていて、それがリアルタイムで配信されたようです」
頭を下げてサロモンが言った。
「何だと、隠密の魔術をかけていたのにか」
魔力で姿を隠していたはずであった。
「おそらく人は誤魔化せても機械のカメラには隠密の魔術は効かなかったのではないかと。
こちらを」
手に入れた映像をサロモンは流す。
転移した皇帝がクリスに接近して気絶させて転移する様子がはっきりと映っていた。
顔も何もかもがはっきりと。
そしてその後ろにボフミエ皇帝 侯爵令嬢を誘拐の文字が。
「こ、これが全世界に流されたのか」
アーベルは呆然とした。
いつも冷え冷えして臣下を見下ろす瞳はうつろだった。
ノルディンの皇帝に馬鹿にされるまでもなく、とんだピエロだ。
何処の国に皇帝自らが誘拐に手を染める国主がいるのだ。
それも現場をはっきりとさらされるなど。
恐怖の皇帝としてアーベルは国内に恐れられていた。
しかし、現役の皇帝が誘拐をするなど、それも現場を撮影されて全世界に同時に配信されるなど失態以外の何物でもない。
ドラフォード東方第一師団が北上中、漁港キールにはマーマレードの魔導師団が攻撃中、クリスは行方不明と八方ふさがりの状況だった。
しかし、クリスさえ捕まえて魔王を復活させればまだ何とかなるはずだった。
と言うか魔王さえ復活させればこの世界を手に入れる事すら可能だった。
笑い者のボフミエ皇帝が世界を恐怖に支配するのだ。
笑ってくれたノルディン皇帝など恐怖にゆがめた顔を全世界に流しながら公開処刑してくける。
「サロモン。クリスのいる位置は大体は判るな」
「ある程度は絞れますが」
「全魔導部隊を出撃させる」
「城の守りが手薄になりますが」
サロモンは危惧して言う。
「クリスが魔王化さえすればこの城などすぐにでも取り戻せる。
最優先はクリスの確保だ」
「御意」
その日のうちに皇帝以下魔導部隊は魔人と共に南下した。
*********************
一方ジャンヌ達はボフミエの王宮の傍に来ていたが、中々王宮に入り込むのに難儀していた。
「さすが、魔導帝国の王宮、おいそれとは入らせてもらえませんな」
ジャルカが言う。
いろいろ化けて入ろうともしたのだが、なかなか誤魔化しても入れない。
「こうなったら正門ぶった切って正面突破で」
ジャンヌが言う。
「さすがにそれはそのあとの行動が厳しいのではないか」
アレクが疑問を呈する。
「しかし、姉様がどうなっているか判らないし」
ウィルが焦って言う。
「ウィル、気にしなくてもクリスは大丈夫だ」
ジャンヌが言い切る。
「姫様ならそう思うけどかよわい姉様は…」
「ウィルそれはどういう意味だ?」
幾分より目になりながらジャンヌが言う。
「まあまあ、ウィル、クリス嬢はそこにいらっしゃるアレクサンドル皇太子殿下が地上で唯一恐れる方ですぞ。問題はおそらくありますまい」
ジャルカの言い様にアレクは苦い顔をするが否定しない。
「それは姫様の間違いでは」
ウィルが信じられないという口調で言う。
「ジャンヌは怖くはないがクリス嬢は恐ろしい」
ボソリともらしたアレクの言葉にウィルは絶句した。
ウィルはクリスがシャラザールの化身だと知らない。
あのはかない姉がシャラザール山を破壊したのは見たが、それと見た目は全然別ものだった。
アレクやジャンヌ、ジャルカはクリスの本性と言うかシャラザールにが憑依しているのは知っているし、
もしなんかあってもボコられるのはボフミエ皇帝だとはっきり思っていた。
クリスが本性さえ現せば、王宮から脱出するのは簡単だし、別にジャンヌらの手を煩わせることも無いとは思っていたが。
それとマーマレード国の中で侯爵令嬢を誘拐されて何もしないというのは別物だし、何もしなかったとシャラザールが後で知れば何をされるか判らないと特に怯えているのがアレクだったが。
「では、ここは私目の案で参りましょう」
ジャルカはそう言うと残りの3人を引き連れてひょこひょこ歩き出した。
0
お気に入りに追加
2,450
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
【完結】今夜さよならをします
たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。
あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。
だったら婚約解消いたしましょう。
シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。
よくある婚約解消の話です。
そして新しい恋を見つける話。
なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!!
★すみません。
長編へと変更させていただきます。
書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。
いつも読んでいただきありがとうございます!
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる